気持ちが大爆発☆

 

 

「は……?」

 

さっきまで色々と考えていた頭の中が一瞬で真っ白になる。

 

「…………詳しく……説明しろ。」

 

呼吸を忘れてしまいそうな程のショックの中、私は声を絞り出す。

 

「は!勇者達の戦闘の場に居た下級魔族の報告によると、勇者達との激闘の末に敗北し、あのお方がその命を持って力を振り絞り勇者達に反撃し、消滅したと報告がありました。」

 

この兵士の言っている意味が分からない。

 

………彼が消滅した?

 

そんなことは有り得る筈がない。

 

彼は……私を救ってくれた希望であって私の救世主なんだからそんなこと有り得る筈がない。

 

私は目を瞑り、彼に預けた魂の一部と魔力を探す。

 

「ない……彼にある私の魂の一部が…ない……」

 

私はもう一度目を瞑り彼を探す。

 

「感じられない……彼の魂が………」

 

目に涙が浮かんでくる。呼吸するのも苦しくなってくる。

 

だけど、私は魔王。魔王という立場から今此処で泣くことも許されない。そして私は魔界の民を導く義務がある。

 

「…………人間との戦場はどうなっている?」

 

「は!勇者達が魔王城へと向かっているのに続いて、他国の人間の軍も此方へと向かっています!」

 

「………そうか。ならもういい去れ。私が処理する。」

 

「は!」

 

兵士は出て行ったのを確認すると、私はさっきまで我慢していた涙をソッと流した。

 

 

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

 

 

 

そこからの私は自分が自分じゃないようだった。私の心にポッカリと穴が空いた気もした。毎日が曖昧で、私自身が何なのかわからなくなる時もあった。それでも私は魔王である義務を果たす為に動いた。それでも私の中では何かが足りない。

 

私の側にもう彼が居ない。そう考えるだけで私の胸の中がキュッと苦しくなる。私の心が絶望の中、壊れていく。

 

もっと彼と居たかった。もっと彼と話したかった。もっと彼と触れ合いたかった。もっと彼との繋がりが欲しかった。

 

私の中に数々の後悔が湧き出てくる。だけどそんな私は悲しみに浸かっている暇はない。

 

 

そう現実はまったく甘くないのだから………

 

 

「───遂に辿り着いたぞ!魔王!!」

 

勇者達が門を魔法で突き破り私に剣を向ける。

 

「魔王軍の幹部である四天王は全員倒した!!残るは貴方だけだ魔王!!」

 

勇者達の力は凄まじく、勇者達を討ち取ってみせようとした上位魔族達は全員やられた。

 

「魔物や魔族に苦しめられている人たちの為に貴方を倒す!!」

 

私は彼と同じように勇者達に殺されるのだろう。私は魔界に住む民の為とはいえ、人間達にも酷い事をしてきた。きっとこれはそんな自分への罰なんだろう。

 

勇者達に殺されて私も彼の元に逝こう。もう私は疲れた、もう楽になってしまおう。魔王なんて肩書きは捨ててしまってしまおう。

 

……………いや、待てよ?

彼を殺したのは勇者達だ。………そう彼・を・殺・し・た・の・は・コ・イ・ツ・ら・だ・。

 

私がそう思った瞬間、とてつもない怒りが湧いてくる。私のポッカリと空いた心の穴が怒りで埋まる。

 

「……そうだった。お前が彼を殺したんだったな?」

 

私の身体から魔力が溢れ出る。そんな私の魔力に反応して周囲に稲妻が発生する。

 

「図に乗るなよ?人間……!!」

 

それに対抗するように勇者が聖剣の力を解放し、凄まじい光を解放する。

 

「皆んないくよ!!」

 

「「「「おう(はい)!!」」」」

 

 

そこからは死闘だった。

 

勇者の攻撃が放たれれば、それ以上の攻撃で跳ね返す。聖女が回復魔法で傷を癒すなら、直ぐにダメージを与えて負傷させる。盾使いが攻撃を防ぐようなら、防ぎ切らない程の魔法を放つ。魔法戦士が近づいてくるようなら、魔力の塊を解放して吹き飛ばす。賢者が魔法を放ってくるなら、それに負けずと同じように魔法を放つ。

 

そんな戦いが既に一時間も続いていた。

 

「「───はぁはぁ。」」

 

今や立って居られるのは、勇者と聖女だけになっていた。その他は直接魔法を叩き込んだりして気を失ったり、歳によって体がこの戦いに追いつけなくなって動けなくなったりと様々だ。

 

「はぁはぁ……残るはお前たち……二人だけだ。」

 

私が魔法による追撃をしようとする。

 

「!………」

 

だか突然、私の足元がフラつき地面に膝を付ける。

 

「はぁはぁ……ダメージを負って……シンドイのは…ソッチも…同じようだね?」

 

勇者がニヤリと笑いながら私に言う。

 

「……舐めるな!」

 

私はそれに負けずと魔法を放つ。

 

「させません!!」

 

だが、その攻撃は勇者の前に聖女が立ち塞がり、魔法壁を張られ防がれてしまう。

 

「………勇者様!私に提案があります!!」

 

「それは……何かな?」

 

「私の魔力を貴方に全て預けます。それで貴方が魔王を倒してください。」

 

「!!そんなことをしたら………」

 

「私は大丈夫です。それに既に私はもう立っているのが限界。直にこの魔法壁も解けてしまうでしょう。………ならばせめて貴方に希望だけは託したいのです!!」

 

「!!…………分かった。」

 

聖女の胸から光の玉が出てくる。それが勇者の胸に入り込むと勇者はソッと自分の胸を両手で押さえた。

 

「勝って…くだ……さい……」

 

「任せて……!!」

 

聖女は勇者の言葉を聞き取ると安心したように、ゆっくりと両目を閉じて倒れる。勇者はそれをソッと抱き止め、地面にゆっくりと置く。

 

「へぇー私達を待ってくれるなんて意外に優しいんだね。魔王も?」

 

そう言って勇者は聖剣を手に持ち、今までなんて比にならない程の光を解放する。

 

「何、お前達を殺す準備をしていただけだ。」

 

私はそれに勇者達が話している間に構築した、巨大な魔法陣を勇者に向ける。

 

「これで終わりだ。」

 

「いいや、終わりじゃない。」

 

私と勇者はニッと笑い、己の魔力を全て注ぎ込む。

 

「"ブラック・デストロクティブ・レイズ『黒い破壊光線』“」

 

「”グランド・クロス『裁きの聖十字』"」

 

その瞬間、巨大な光の一撃と巨大な闇の一撃が放たれた。

 

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

 

 

私の意識が沈んでいく。もう身体は動かせない。

 

私は多分勇者に負けたのだろう。

 

最初は怒りによる物だったが、戦いを通してその気持ちは変わった。全力を出して私は負けたんだ、悔いはない。

 

だけど、ここに居ると私は不思議な気持ちになる。

 

………身体が暖かい。これが死んだ時に体験することなのだろうか?

 

ああ、せめて最後に彼に会いたかったな………

 

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

 

 

暗い夜空に浮かぶ綺麗な星々の明かりの中、私は目が覚める。

 

……私は死んだんじゃないのか?

 

私は辺りを見渡し情報を探ろうとする。

 

「!!………」

 

私の目がある一人の男に止まる。そして、そこから私の目が離せなくなる。

 

「生きてる……彼が生きてる……!!」

 

角こそ魔法で隠しているが私は確信した。この穏やかにベッドで寝ているのは彼だと。

 

「夢じゃ……ないよね?」

 

私は自分の頬を引っ張ってみる。

 

「痛い………夢じゃない……!!」

 

その瞬間、私の今まで溜め込んでいた涙が溢れていく。それと同時に彼との後悔や一緒にやりたかった事なども溢れてくる。

 

「生きてて………本当に…本当に良かった……!!」

 

そうして、私は我慢しきれなくて彼に抱きついた。

 

 

 

 

 

〜そして現在に戻る〜

 

 

 

 

「……………」

 

「♡♡♡♡♡」

 

な・に・こ・の・状・況

 

「あの〜魔王様?くっつき過ぎなのでは?」

 

俺がそう言うと魔王はムッとした表情になる。

 

「私を魔王と呼ぶな。私の事はリリスと呼べ。」

 

「ですが魔王…「リリス!」えぇ……」

 

魔王ってこんなキャラだっけ?あの威厳は何処に行った?

 

「魔「………」……リリス……」

 

何この子?!俺が魔王様って言おうとした瞬間に、めっちゃ魔力を解放しやがったぞ!!

 

「それで良い♪」

 

魔……リリスの機嫌がよくなる。

 

何こいつエスパー?俺の心読まれたんだけど……

 

「あの〜リリス?」

 

「何だ?」

 

リリスが首をコクンと傾げる。

 

「これからどうするつもりなんですか?」

 

「うむ、魔王軍も今はないようだし、人間も流石に魔界には手を出していないみたいだから特にやる事はないな。……だけど今やる事ならあるぞ?」

 

そう言ってリリスが俺の腕を抱きしめる。………柔らかい。

 

「それはお前と一緒にいる事だ♡」

 

「あはははははは。」

 

胃が痛くなりそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補足1

 

魔王……リリスは今まで溜め込んでいた気持ちが爆発していて、主人公に対する気持ちがフルスロットしています。

 

 

補足2

 

主人公が柔らかいと言っていますが、リリスはFはあります。

 

大事な事なのでもう一度、何がとは言いませんがリリスFはあります。

 

念を込めてもう一度、何がとは言いませんがリリスはFはあります。

 

 

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