勇者も魔王も聖女も俺をほっといてくれ!!
スカルS
四天王
俺は最初はただの普通の生活を送っていた一般人だった。
だがトラックに轢かれて転生し、目が覚めるとそこは異世界だった。
美しい自然に囲まれた場所で俺は目が覚めた。
だが悲しきかな、自分は人間ではなかった。
身体の構造や顔は人間の頃とは変わらなかったが、額から悪魔の様な角が一本生えていた。そして目の色も黒だったものが水色に変わってしまっていた。
初めて自分の姿を見た時に、自分は人間ではないと悟った。なので自分は最初、この世界で生きていく為に色々と調べる事にした。
……この世界には様々な種族が存在していた。
《人間》《エルフ》《魔族》《ドワーフ》《妖精》《巨人》《ドラゴン》《亜人》
その他にも色々な種族が存在しているらしい。そして俺はいわゆる《魔族》と呼ばれる種族だ。
そしてその魔族の中でも最強……頂点に立っている者が魔王と呼ばれる存在だった。
そんな中、自分は魔族の中でも下位の存在でまともな生活が出来なかった。チートなんて持っている筈もなく、ただ単に不遇な扱いを受けていた。
自分がのんびりスローライフを送ろうとすれば、他国の侵略に駆り出され、魔王や上位の魔族が作った魔獣の世話をやらされ、時には時間稼ぎ要員として駆り出されたこともあった。(どれも死にかけた。)
なので自分は、少しでもまともな生活を送る為に力をつける事にした。血反吐を吐く辛いことを我慢しながら着々と力をつけていった。そして色々な事も試した。
自分に合った魔法の属性を見つけそれを極めようとしたり、少ない魔力を増やす為に毎日のように魔力をすっからかんにしたり、自分に合った魔法を上手く扱えるように修行したり、剣を扱えるように練習したり、体力をつける為に倒れるぐらいまで走り込みをしたり、それはもう色々な事をした。
そして気づけば自分は、魔王を除く魔族の中でも最も強い四人の中……《四天王》に入っていた。
だが結局は俺は無才。才能がある連中らは、少し練習をしただけで魔法が上達したり、俺が血反吐を吐く思いで手に入れた魔力量を一瞬で超えられたり、と一瞬で俺を超えていく。
だから俺は必死に喰らい付いていた。その時はなんで力をつけようとしているのかなんて考えていなかった。……俺は才能を持っている奴らを努力で超えてやりたいと思っていた。
そんな中、俺が力をつけてきた頃にわざわざ魔王がやって来た。……美少女だった。長く伸ばされた黒色の髪は美しく、身体も無駄がなく完璧だった。だがそんな美少女は自分とは年が変わらなさそうなのに圧倒的な力を持っていた。
なんで俺がやって来たのかと聞くと、幹部にならないかというお誘いだった。もちろん俺は幹部になったら命を狙われる危険性が増えると思い断った。
すると魔王はある提案をしてきた。
その提案とは、魔王と勝負して勝ったら、地位や名誉を好きなだけ貰えて、そして魔王の身体を好きにしてもいいという提案だった。(負けた場合は自分が幹部になる。)
ハッキリ言って地位や名誉は欲しくはなかったが、魔王の身体を好きに出来るという物に惹かれた。……自分は男なんだから仕方ない。(開き直り)
そして結果は、四天王という肩書きがある事から分かると思うが、ボコボコにされた。美少女といってもやはり魔王だった為、手も足も出なかった。
そうして自分は魔族の中の四天王となった。
▼▼
現在、四天王は緊急会議をしていた。
その理由とは……
「モーブがやられたか……」
四天王の内の一人がやられたからである。
「誰にやられたんだ?」
「……勇者一向達だ。」
勇者……それは魔王を倒す為に聖剣を引き抜いた……いわゆるチート野郎だ。女性の勇者で凄まじい光を身体に纏い相手を聖剣の力で消し炭にする。
前に一度だけ戦った事があるが仲間もチートだ。
まず一人目、聖女。
コイツは勇者が怪我や傷を負った瞬間に、一瞬で回復魔法を掛けて完全回復させるチート野郎だ。
次に二人目、盾使い。
男リア充以上!
次に三人目、魔法戦士。
女リア充以上!!
次に四人目、賢者。
コイツは馬鹿みたいに強力な魔法を連発する、魔力量が化物のジジイ。コイツもチート野郎だ。
「おいこれって不味いんじゃないか?」
勇者一向は魔王を倒す為にどんどん力をつけてきている。俺はそれが心配で二人の四天王、モウとデバンナーイに質問する。
「心配するな。奴は我ら四天王の中で最も最弱。我ら三人の四天王に掛かれば問題ない。」
「そうだよー気にしすぎだってー」
あ、ダメなやつだこれ……
そして幾つかの情報を話し合い、会議は終了した。
「それではこれにて会議を終了とする。」
会議が終了した瞬間、モウとデバンナーイが居なくなる。
「もうそろそろ終わりかな……」
俺は四天王の中では一番強い筈なんだがな………何故だろう勇者一向に勝てる気がしない。
「………まだ様子見といこうか。」
……まだ勇者一向が俺を倒しに来た訳でもないし落ち着こう。
▼▼
あれから数ヶ月が経った。
俺は今非常に泣きたい気分だ。
「これで四天王はお前だけだ!」
そう言って聖剣を俺に向ける勇者。
「貴方に苦しめられた多くの人達の為に今ココで貴方を倒します!」
そう言って回復魔法を展開する聖女。
「お前を倒せば……」
「後は魔王だけよ!」
そう言うリア……盾使いと魔法戦士。
「お主らによって苦しめられた色々な種族の為に倒して、この先の新たな道へと通らせてもらうぞ?」
そう言って馬鹿みたいな魔力を解放する賢者。
………はい。まだ大丈夫だろって思って様子見してたら、四天王最後の一人になってしまった大馬鹿者です。
………逃げようかな?
「その檻はどんな物でも閉じ込め、どんな物も逃さない、“大監獄”」
賢者が周りに結界を張り逃げ道がなくなる。
「これで助っ人も来ることが出来なくなったのぉ。さあ、ワシらとの真っ向勝負じゃ。」
このクソジジイィィィィーー!!
なんて余計な事をしてくれたのであろうか。
「く、なんて殺気なんだ……」
「相手もやる気のようです…!」
俺がジジイ……ゴホン!賢者に向けて怒りの目を向けると勇者一向は一瞬だけ怯む。
「……はぁ、やるしかないのか。」
そうして俺も戦闘体勢を取る。
「ではワシからいくぞ?“フェニックス"」
初手は賢者が炎を纏うフェニックスを放つ。
「…!”粉砕"」
フェニックスが細く散り散りになる。そんな隙を狙って魔法戦士が俺の懐に入り込む。
「吹き飛べ!!」
魔力の纏った拳が俺の懐に直撃し上に吹き飛ぶ。そしてそこを狙って賢者が魔法を放つ。
「”オメガウォーターボール"」
「“玉砕"!!」
水の大きな塊が辺りに一面に散る。
俺が地面に着地すると勇者が構えているのが見えた。
「輝け!」
勇者がそう言った瞬間、聖剣がそれに答えるように輝く。その輝きは凄まじく辺りに散った水が蒸発し出す。
「消し炭となれ!”ライトニングブラスター"!!」
聖剣から眩い光の光線が放たれる。
……あれを直にもらったら不味いな。
「“反射"」
俺の目の前に大きな鏡が現れて光の光線を反射する。
「任せろ!」
そこに盾使いが勇者の前に立つ。
「”バリアウォール"!」
そこに盾使いが魔力で出来た壁を造り出して反射した光線を防ぐ。
……勇者さん達、殺意高すぎないかねぇ?
流石にやられっぱなしは嫌なのでコチラもら反撃をすることにする。
「“暴発"」
辺り一面に大きな爆発が起きる。それによって勇者達を衝撃で吹き飛ばしダメージを与えることが出来だが……
「皆さん!……”パーフェクトヒール"!!」
聖女が傷ついた勇者達一向を完全に癒す。
「いや〜助かったよ。ありがとね!」
勇者が聖女に向かってニッコリと微笑みお礼をする。
そして俺へと向き直り……
「さあ行くよ。みんな!!」
「「「「おう(はい)!!」」」」
また戦闘が始まった。
〜数十分後〜
「───ハァハァ。」
「これで終わりだよ。」
もう動けないで座り込んでいる俺に勇者が剣を向ける。
……流石は勇者達一向と言った所か。
最初は俺が押していたが、聖女の回復などのアシスト、勇者の馬鹿にならない攻撃力、そして俺の攻撃を守り切る盾使い、勇者が攻撃を出来るように隙を作らせる魔法戦士、俺が距離を取っても遠距離の攻撃をしてくる賢者、まったくもって休む暇などもなく完璧な連携だった。
「……最後に聞かせて。」
「……なん…だ?」
「貴方は何故…沢山の人達を殺したの?」
俺は予想外の質問に目を見開く。
「……クソッタレ野郎共だったからだ。」
勇者の俺を睨む目が更に鋭くなる。
「その人達を殺してなんとも思わなかったの?」
「思う訳ないだろ……」
「!……貴方はその人達ことを考えた「なんで思う必要がある!!」
勇者達が突然の叫びに驚く。
「俺が殺したアイツらは!エルフの少女の親を殺して少女を奴隷として扱ったりしている奴、重い税を掛けて民が餓死をしている中、自分達はうまい思いをしていたブタ共、同じ人間を人間として扱わなかったアイツらをなんで思う必要がある!!」
………いかん感情的になりすぎた。
「…………」
勇者達は呆然として目を見開いている。
まあ、そりゃそうだろう。俺は基本……人を殺したりはしないからだ。
ただそれはクソッタレの野郎には当てはまらんがな……
俺は勇者が呆然としている今がチャンスだと思い、自分の全ての魔力をある魔法に注ぐ。
「……我が魔力を全て捧げその力を解き放て“大噴火"!!」
「不味い!勇者離れるのじゃ!!」
「!!……まさか自分ごと?!」
へっそんな訳ないだろ!俺はまだ死ぬ気はないよ!!
俺はもしもの時に持っていた魔力石を糧にある魔法を発動させる。
「’’虚無"。」
この魔法は俺の奥の手で、この世界から存在そのものを消してしまうという魔法だ。攻撃は通じないし、見える事ない。
デメリットがあるとすれば一年間存在が消える事だ。因みに自分の意識も消える。
俺の存在が消えていく、そんな俺に勇者は手を差し伸ばす。
「───待って!」
その日、暗い夜を照らす大爆発が起きた。
“虚無"について補足
世界から一時的に自分の存在が消えるだけで、主人公の事を知っている人達はしっかりと主人公の事を覚えています。
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