ヒュー、どーん
青豆
1
我が愛すべき主人公、アルバート・マックドアはその生涯で、合計七回も非業の死を遂げた。彼の口癖は、「死ぬのは嫌だね。痛いからな」だった。
マックドアは素晴らしい人間だった。
少なくとも、神が彼をわざわざ七回も死なせなくてはならない理由はなかった。
「どうしてあなたはそんなにもすぐ死ぬのですか?」
ある時、一人の青年がそう尋ねた。その青年はマックドアという人間の性質に疑問を抱いて、わざわざ彼の家にやってきたのだった。
「さあな」と、マックドアは答えた。「誰かがそう決めているんだろう」
青年はため息をついた。彼は手帳をめくり、次の質問を考え出した。
「あなたは言葉狩り師として生活しておられますね」
「ああ」
「それでは」と、青年はいった。「あなたの人生に意味はありましたか?」
「さあな」
マックドアは即答した。彼は迷わなかった。
青年は難しい顔をした。立ち上がり、カーテンを開けた。
窓の外を眺めていると、やがて人間が空から降ってきた。家の中からも聞こえるほどの大きな音を立てた。砂埃が舞った。地面が真っ赤に染まった。
「もう一度聞きます」と、青年はいった。「あなたの人生に意味はありましたか?」
マックドアは青年の目を見つめた。そして言った。
「今おれがお前の口に手を突っ込み、言葉を奪ってしまったとする」
「はあ」と、青年はいった。
「するとお前の中で何か一つ言葉が消える・・・・・・それに、意味があると思うかい?」
「ありませんね」
「しかし」と、マックドアはいった。「おれの口座にはいくらかの金が振り込まれるだろう。何故なら、おれの仕事は言葉狩り師だからな」
青年はわけがわからない、という顔をした。
「何が言いたいんです?」
「無意味でも金は入る」とマックドアはいった。
「それがあなたの哲学ですか?」
「ウム」
「じゃあ・・・・・・」と、青年はいった。「最後にもう一つ質問をしても?」
「構わん」
「あなたは死ぬのが辛いですか?」
マックドアはせせら笑った。そして言った。
「もう慣れたとも」
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