第6話 店の名前

「大事なことを忘れていた・・。」


お店の名前。

決めてない。

もうすぐ開店するというのに決めていなかった。

他の事に時間を取られていて、忘れていたのだ。


「何を悩んでいるの?」

ロココさんが首を傾げる。

あれから、ロココさんはよくここへ来るようになった。

ていうか、何処か近くに泊っているのかもしれない。

学校はいいのか?と聞いたことがあったが『夏休み』ということだった。


「う~ん。店の名前決めてなくて・・。」

俺は正直に言う。


バタン


勢いよくドアが開かれた。

「お客様まだ開店してませんけど・・。」


「ここに回復ポーションあるって本当か?すぐ買うからくれ!」

有無を言わさぬ迫力。

見ると全身血まみれの冒険者が抱きかかえられていた。


「高いですよ?」

「いいから!」

急かすように声を上げる。


俺は店の奥へ行き綺麗な小瓶を持ってきた。

「どうぞ。」

冒険者は受け取ると、負傷した人の傷口に振りかけた。

手慣れているな・・と見ていたらキラキラと光りだし傷が癒えていった。

「これは・・やばいな・・。」


冒険者は少し驚いているようだった。

「すまなかった。値段はいくらだ?」


「金貨1枚で。」


「思ったより安いな。」


冒険者はお金持ちなのだろうか。

金貨が安いとは・・。


しばらくして負傷していた冒険者が意識を取り戻した。


「世話になったな。また来たらよろしく。」


「次回は普段の買い物でお願いします。」


まったくだ。

と呟く冒険者たち、手を振って店を後にした。


「びっくりした~。」


「本当よね~。こっちまでドキドキしちゃったよ。」


あ、ロココさんいるの忘れてた。


しかし・・宣伝してないのにもう知れ渡ってるってちょっと怖い・・。


「あ、そうだ!店の名前『聖水のしずく』ってどうかな?」


「おお何かオシャレ!流石さすがロココさんだ!」

嬉しくて思わず手を握ってしまった。


「ご、ごめん・・。」

ぱっと手を離した。

距離感がいまいち掴めないんだよね。

女の人と話すのって慣れてないし。(姉は除く)



****



「聖水の雫かぁ。」

名前に負けないようなお店にしないとな。


聖水取り寄せようかな。

魔物除けの効果があるらしいし。

大きな町なら置いてるかな・・。

でも取り寄せだと・・値段を上げないと利益が出ない。

出来れば作った方がいいよな。


もしかしたら作れたりして・・そんな考えが頭をよぎる。

あの本は持ってきてるし、一応試してみるか?



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