第28話 クーデターの後に

 テイル王国軍部、某所。

 ブリーフィングルームに集められた面々は皆愉快そうな面持ちをしていた。

 そこにはかつての会議、クロードが激怒した会議に居合わせた将達の姿である。

 そんな面々をぐるりと見回し、一番愉快そうに口を開くのはコザだ。


「諸君。知っての通り軍部は、テイル王国は壊滅的な打撃を受けた」

「ごもっとも。わがテイル王国の礎を壊されたのですからな。してコザ総統閣下、今回の事件の首謀者、テロリストクロードの行方は特定されたのですか?」

「何?」


「クロードは何らかの策を講じて国家転覆をはかり逃亡、どこかに潜伏してさらなる混乱を引き起こそうと画策しているとか」

「いやいや、クロードは隣国アルバレスの間諜と共謀し、アルバレスに亡命しているという話もあるぞ」


「アルバレスといえば小物のくせに我が国に対抗心を燃やしている弱小国ではないか。そんな所に行って何をなそうというのか」

「所詮はモンスターの管理係、大した事は出来ぬのだろうなぁ。はっはっは!」

「だが奴が持ち出した我が国の宝は何としても奪い返さねば」


「まさか厳重に守っていた獣神の宝珠が偽物だったとはな」

「クロードめがどうにかして盗んでいたのでしょうな。全く恥知らずが」

 

 コザは言いたい放題の面々を見回して、口角を緩く持ち上げた。

 クーデターは成功し、我が物顔でのさばっていた目障りな奴らを牢にぶち込んだ。

 そしてここにはコザの言う事を聞き、媚びへつらう者達がそろっている。


 長年計画して来たものがようやく実を結んだのだ。

 笑わずにはいられないのだろう。

 しかしコザはかなり情報が錯そうしている事を知った。


 この者らの言っている事がどこまで、何が真実なのかは分からない。

 アルバレスに亡命? どうしてそうなる? アルバレスは魔界とは逆方向だ。

 ブルーリバー皇国ならいざ知らず、アルバレスなど問題外の話だ。


 それを彼らはなぜ自慢げに語れるのだろうか。

 答えは簡単だ。

 彼らはみな自分こそが正しいと信じ切っているからだ。


 それはコザも例外ではなく自分は何も悪い事はしていない。

 これは正しい行いであり、自分こそが国を導いていくのだと信じている。

 

「言いたい事はそれぞれあるとは思う。だが今はクロードの居場所を突き止め、奴が盗んだ本物の宝珠を奪還するのだ。そのための有意義な話をしよう」


 クロードを殺し、宝珠を取り戻してモンスターを増産し、手始めに小さな国から支配を始める。

 そしてゆくゆくは魔界すら制圧し、この世界の頂点に立つのだ。

 コザの頭の中の計画は完璧で、少しの隙も見えないのだった。



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