第26話 斥候
勤務三日目の戦場が終わり、満足気な兵士達がチヌークに乗り込んでいる時の事。
「クロード、次の出勤までチヌークをこちらに待機させておく事は可能か?」
「んー、それは難しいです。なんせ異世界のへ――モンスターですから」
「むう、そうか。ならば仕方ないな」
「すみません」
「構わん構わん。チヌークの働きがあまりにも良いのでな。聞いてみたただけよ」
「はい」
「じきに運搬用の馬車が到着するはすだからな。輸送は奴らに任せるとしよう」
「今度の出勤の時もチヌーク出しますので」
「うむ、頼んだぞ。ではお疲れ様だ」
「はい、お先失礼します」
クレイモアは名残惜しそうにチヌークの顔を撫で、軽くキスをして離れた。
そしてチヌークは軽く身震いをし、ローターをはためかせて魔王城へと帰投した。
〇
魔王城へと帰投した矢先、城内がやたらと慌ただしい事に気付いた俺は近くにいた女性兵士を呼び止めた。
「何かあったんですか?」
「あっ、貴方は確か……クロード、さん?」
「そうです」
「私はミリアリアよ、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「さっき入った情報によると、人間軍が北北東の魔界の国境を超えて魔王城目指して進軍中とのことよ」
「人間軍が? 随分急ですね」
「そうなのよ。だから今偵察部隊が急行中よ」
「情報ありがとうございました」
「どういたしまして、クロードさん明日は?」
「俺は明日は非番です」
「そうなのね、ごゆっくり」
「ありがとうございます、それでは」
手を振るミリアリアと別れた後、食堂で夜ご飯をいただいてから自室へともどる。
風呂にはいったりなんだりして、腰を落ち着ける。
人間軍か。
一体どこの国か気になった俺は窓を開け放ちスカイガーディアンを召喚した。
偵察部隊が向かっているのは聞いたけれど、スカイガーディアンから見た方がより明瞭に分かる。
「行け」
ミリアリアから貰った情報通り、スカイガーディアンの航路を北北東へ指定し発進させた。
高高度を飛翔するスカイガーディアンならば人間軍に発見される事もないだろう。
クレアに俺が偵察をやると進言すれば「やってみぃ」と言われるだろうけど、偵察部隊のお仕事を取ってしまう事になる。
それはそれで良くないと思うので自粛したというわけだ。
他の管轄のヤツにでしゃばられても不愉快だろうしな。
「見つけたか」
スカイガーディアンから飛んできた映像を脳内に展開する。
おびただしい数の歩兵と荷馬車、騎兵が隊列を組んで進行しているのが見える。
おそらくだが五万ほどの兵力はあるだろう。
「あれは……ブルーリバー皇国の旗か」
隊列の中になびいている旗印は王冠の上に剣が交差しているもの。
テイル王国にほど近い国で魔界境界に隣接する国だ。
皇国の軍人も何度かテイル王国で見たことがある。
俺が知ってるだけで、向こうは俺の事なんて認識してしていなかっただろうけど。
「ん? 進行方向に村が……」
村の名前までは分からないけど、このままだと確実に人間軍に飲まれてしまう。
見た感じ農村なので戦える人材がいないのではないだろうか……。
心配だ。
「気付いてるみたいだな」
村民達が慌ただしく荷造りをしているのが見える。
距離的に、ギリギリ脱出が間に合うくらい。
逃げ出すところを見ると、やはり農村には戦える魔族はいないようだ。
どうする?
今目視出来ている状態ならあそこにモンスターを召喚する事はできる。
でも村人達もモンスターがいきなり出てきたらびっくりするよな……。
そんな事を考えていると、村人達の脱出準備が整ったらしい。
我先に逃げ出す村人を見て、被害が出ない事にホッと胸を撫で下ろした。
そして人間軍が村に到着。
進軍の最中に敵の村を見つけた場合、やる事は一つ、略奪だ。
今回は村人達に被害が及ばなかったが、これが村人も残っていた場合、人間軍は虐殺を開始する。
戦える魔族の場合であれば村に近付く前に戦闘となるので、村に接近できた事は戦える魔族がいないのと同義になる。
ブルーリバー皇国軍は村人がいない事に驚いているようだが、略奪はしっかりと行っていた。
略奪行為は戦争のテンプレートだが、魔族はあまりそういった行為はしないらしい。
殲滅戦などの特殊な指令がない場合、村や町に侵攻したとしても無駄な虐殺や略奪はしない。
虐殺をしないのは弱い者や、歯向かわない者と戦う理由が無いからで。
略奪をしないのは食糧や金品に興味がないからだ。
人界では魔界の物品は高く取引されたり、戦利品や武勲の証拠として扱われる事が多い。
逆に魔界では人界の物品などは全く売れない。
買うとしたら珍しい物好きなコレクターくらいらしい。
今ブルーリバー皇国軍がいる村から魔王城近郊までは……おそらく約十二日ほどかかるだろう。
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