美装女 ヴァルガニカ VvF
ふぇりか
第1話 日常乙女
もうすぐ冬だ。
冬はお肌が乾燥するから大嫌い。
あと寒くて家から出たくなくなるからってのもある。
「届いた……グヘヘ、可愛い、可愛いよ。俺の目に狂いは無かった」
だけどいい所もある。
可愛いコートやもふもふな服が大量に出回るって所だ。
いや一年中ネットで買えるけど、それでもこの季節じゃないといけない理由がある。
買ってすぐに着たいから? ま、それもあるけど、そうじゃない。
それは……。
「さっき届いた可愛いコート、それにしずくねぇから借りてきたシャツにゆいのスカート……よし、完璧」
ここからが大事なんだ。
スマホスタンドの角度を変えて一番俺が可愛く写る場所を見つける。
「もうちょい右か? ……違うか、左?」
写真の加工にもまあまあ時間を使うけど、やっぱり角度とかポーツとかが一番時間を……。
「おい変態」
「ゔげっ!? しずくねぇ……あ、き、今日は隣町まで買い物に行ってるんじゃ」
「朝から行っててさっき帰ってきたんだ。んで、私とゆいちゃんの洗濯物から服を漁って女装する変態の言い訳を聞こうか、あぁ?」
この仁王立ちしている女性は高橋しずくさん。
訳あって一緒に住んでいる幼なじみのお姉さんだ。
奇麗な長い黒髪、大きな胸、女性としての魅力に溢れているが彼女の最大の特徴はそこじゃない。
カッコいいんだ。
髪を結んで男装をした時のしずくねぇはめちゃくちゃカッコいい。
低めの声もマッチしていてもう完璧。
俺なんかよりも男らしい女性。
男装したこの人に壁ドンされた事があったが……あれは反則だ、胸キュンするし、何言われてもyesと解答してしまうだろう。
「おいエロ猿、女はそういう胸ガン見とかは気づくんだから止めろ」
「み、見てねぇよバカ!」
「ったく……んで、言い訳は?」
洗濯物から漁るとかそんな卑怯な真似はしない、俺を舐め過ぎだ。
「俺はしっかりと、しずくねぇとゆいの部屋から借りてきたんだ。そんな洗濯物からなんて」
「女子の部屋に勝手に入るなクソバカ!」
「ちょ、顔は止めて! 顔だけは!」
ボコボコにされたが、最終的には撮影を手伝ってくれた。
ツンデレ? なのか?
今日の投稿も終わった。
俺はこの女装界隈じゃかなりの上位者だ。
勘違いしないで欲しいんだが男が好きって訳じゃない、可愛い服には可愛い人が似合うだろ?
そして俺はそんじょそこらの女より可愛い、だから女装してる。
決して俺は男の娘とかそんなのじゃない。
……ま、この間みたまとめサイトじゃ。
『ガチで可愛い! 男の娘まとめ!』
とかに纏められてたけどね。
つーか俺が二位なのが許せねぇ!
絶対俺が一番可愛いって事を世の中に証明してやるからな!
「はぁ……とにかく晩御飯作るから手伝え、今日は春巻作るから」
「春巻かぁ、しずくねぇって本当料理上手いよな、すぐにお嫁に行けそう」
「おだてても手伝い免除とか無いからな。後、お前が私を貰ってくれるんだろ? それとも何だ、他の奴の所に嫁に行ってもいいのか?」
「それは……ヤダ」
「だったらそんな言い方はすんな。私はどこにも行かないけど、お前がそんなんだと……もしかしたらな?」
「ヤダ! しずくねぇが他の人の所に行くのヤダ!」
「だったら、手伝え」
この人は俺がしずくねぇを好きだと知っている。
だから時々こうやって好意を利用してくるんだ。
ま、こうやって振り回されるの嫌じゃないけど……。
「振り回されるの好きだろ、女装癖持ちのドM君」
「……ッ! み、い、いきなり耳元で囁くのやめろ!」
ゾクゾクしたのを悟られないようにキッチンのある一階に降りる。
もうすぐ友達の家に遊びに行った妹が帰ってくるし、作ってやるか!
「お姉ちゃん、これ何?」
「お前のお兄ちゃんが作った癌の元だ。ゆいちゃんの分はこっちにあるから食べてね」
張り切って作った俺の春巻は、見るも無惨な姿になってしまった。
素人はやる気だけで作ろうとするのを止めて、レシピやしずくねぇの指示通りに作ろう。
「とほほ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます