普通の人生を送りたいッ!
盗電一剛
第1話 神様の幸せ度パラメータ配分どうかしてると思います
どうしてこうなった?
もう一度言おう。
どうして、こうなった?
三度、繰り返そう。
どうして、こうなった??
そしてもう一回。
どぉして、こうなったぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?
ここまでの文章で答えを導き出せた人は今すぐ俺に教えてくれ。
その答えと、化け物みたいな推察力の所以を。
分からない人(全員だよな)のために説明しよう。これまでの不幸の連鎖を。
まず現時刻は4月8日月曜日の午後4時25分だ。
日付でわかる通り、本日は始業式である。俺は今年から中3だ。
毎度恒例の校長の長ったらしい話を半分寝ながら聞き流して始業式が終わった。
新担任の多分大事だったであろう話は、完全に寝ている間にいつの間にか終わっており。
午前中で下校することができ、昼飯にカップ麺を食って3時ごろまで昼寝。
ここまでは良かった。そう、ここまでは。
退屈しのぎに久しぶりに本屋にでも行くかと家を出たのが3時10分。
トラックがいきなり突っ込んできたのが3時15分。
平誤りしてくるドライバーを宥めながらその場を去ろうとして、隣の公園から飛んできた野球ボールが頭に直撃するのが3時20分。
さっきのトラックが突っ込んだ電柱に計7台もの自動車が突っ込んだために電柱がぶっ倒れたのが3時25分。
先ほどの大学生がぶん投げたボールで気絶していた俺がようやく目を覚まして、道路を塞ぐように倒れる電柱を見てフリーズ&刮目したのが3時27分。…いや、誰か俺のために救急車呼んでくれよ。
ビクビク怯えながら本屋までの道程を行く俺の目の前に、ビルの屋上から植木鉢が落ちてくるのが3時37分。
驚きすぎて数秒(か数十秒)気絶した俺を、直撃したと勘違いした通行人の、病院に行けコールをやめさせようと尽力したのが3時40分。
少し人通りの多い交差点で、スリに遭ったのが3時45分。
スリの現行犯を走って追いかけ、財布を奪い返したところをパトロール中の警察官に見られたのが3時46分。
俺がヤベェ奴だと勘違いされ、署まで連行されたのが3時49分。
頭の固い奴しかいない警察にようやく誤解だと分かってもらえ、解放されたのが4時10分。
そして現在、俺は本屋にいるわけだが。
「なあ、お前。何してんの…?」
「?なにって…腕に抱き着いてるんですけど?」
「さも当然のように言わないでくれるか公然わいせつ野郎」
「あら辛辣。そんなんじゃモテませんわよ?」
「逆にこの状況でどういう行動をとればモテるか教えてくれるか?」
なぜか、本屋の目の前で美少女に抱き着かれた。もちろん知らない人である。
…いや、俺が覚えてないだけで、ほんとは会ったことあるんかもしれんが。出会い頭にいきなり抱きつくのは変だよな?外国ではそれが挨拶だとか聞いたことあるが、ここ日本だもんな?じゃあこいつなんなんだろうか。
…え?嬉しいかって?カワイイ子にギュってされて嬉しいかって?腕に色々当たって嬉しいかって?夢のような体験をできて嬉しいかって!?
嬉しいに決まってんだろひゃっほう!!なんかよく分からんが、俺はお前らよりも先に大人の階段一歩上らせてもらうぜ!男子ども、ハンカチくわえてキーッてやっとけ!!ふははははは!!!
いや~それにしても、ホントにやわらけぇなぁこれ…(ドヤァ)
母性に溺れてしまいそうやぁ…
「…ねぇアンタ、今失礼なこと考えてない?」
「何をおっしゃる。紳士でジェントルマンな俺は、不敬なことなど一切考えない」
「カッコつけてるとこ失礼するけど、それどっちも同じよ」
「知ってる。ほかに思いつかなかっただけだよ悪かったなチクショウ」
「語彙の少なさがいかにモテないかを表しているわね。どんまい」
「お前に慰められても嬉しくねぇよ。逆にどんな言葉を言えば良かったよ?」
「そりゃあ…寛容だとか寛大だとか…」
「…それ、ほとんど同じじゃね?お前も非モテかよ人のこと言えねぇじゃねえか」
「そ、そんなことないもん!これまでに100回くらい告白されたことあるもん!」
「あーあーうるせぇうるせぇ。周りの迷惑になるから強がりはそんくらいにしとけ」
「べ、別に強がりじゃ…え?」
俺に言われてようやく気づいたのか、周りを見渡す少女。
脳が冷静になったのか、一瞬フリーズしたあと、目を見開くと——
「————っ!?」
「って、ちょ——ほうぅわあぁぁぁぁっっっつ!?!?!?」
おっと。驚きすぎて、紳士でありジェントルマンな僕には似つかわしくない声が出てしまった。ここは冷静に、状況を解説するとしようか。
なんと、いきなり俺の背中にくっついたのである。まるで周囲の目に怯えているように。
顔を青くしながら、震えるその姿は、何かから逃げてるようにも見え、俺は思わず息を呑んだ。
数秒か数十秒経って、俺はようやく声を絞り出した。
「お、おい。いきなりどうしたんだよ?さっきの威勢はどした?」
「ひ、人見知りなんだもぉん…あと、反応が遅いわよ」
言ってる場合か。そう言おうとしたものの、あまりの驚きに声がうまく出せなかった。
なんて声をかけたらいいのか分からず、少々気恥ずかしくなって、落ち着くまで前を向いていようと思って視線をあげ…目の前のものを見て、少し冷静になった。
「なあ、1つ訊いていいか?」
「な、なによ。別にいいわよ?」
「…あそこの人、さっきから殺気立った目で睨みつけてきてんだが、お前のファンか?それか、ストーカー?」
「シャレ?おもんないわよ?」
「ふざけんな。ここまでセンスねぇシャレは言わんわ」
「あっそ。で、それって…ああ、あれね。…一応、ファンとも、ストーカーとも言えるわね」
「え、お前の知り合いかよ。じゃあどうにかしろよ。居心地すげぇ悪いんだから」
「はいはい」
なんとかカッコつけようとしてるらしいが、言ってる時も体震えまくってんのよねぇ…
大丈夫か、これ?あの人の前に立つだけでチビっちまうんじゃねぇか?
少女は、目が超怖い男の人のもとへため息をつきながら(真っ青な顔で)向かいかけて…ふと立ち止まり、いいアイデアが浮かびましたと言わんばかりの表情を浮かべ、下衆の笑みで、小走りで駆け寄った。
少女が何かをささやいた瞬間、男の目がさらに吊り上がった。
しかもさっきよりも殺気が増している。
「ちょっ!?お前、何を吹き込んだ!?」
「別に~?何でもないわよ~?」
嘘だ。絶対なんかある。そう顔に書いてある。
「で、その人誰なんだよ!?」
「え~っと…私の父親?」
「なんで疑問形なんだよ!自信を持てよ!というかお前、ファンでもストーカーでもねえじゃねぇか!」
「だって、外出するたびについてきて、ウザいんだも~ん。ホントにストーカーみたいなんだもん」
「おいもうやめてやれよ。お父さんが泣きそうになってるよ。」
と、次の瞬間。
「貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!!」
「いやそういう意味じゃないから。勝手に勘違いしないでくれる?気持ち悪いから。ていうかついてくんなって言ったよね?人の話聞いてなかったの?ホントにキモイんですけど。」
「おいもうホントにやめてやれよ。涙出てんぞ。あとキャラ変わりすぎじゃね?」
さっきまでとすげぇ性格変わってんじゃん。
「そ、そんなことより貴様、どういうことだ!?」
「何がですか?」
「何が、だと?とぼけおって!我が娘と交際しているそうじゃないか!」
「…はい?」
「この子と交際しているのは、我が家の家訓を知った上でのことなんだろうなぁ、ああ!?」
「いや、ちょっと待ってください、ちょっ…」
「あ!?なんか違うか、あぁ!?」
「全部違うよちくしょう!」
この野郎、なんてことを吹き込みやがった!
しかもこの人、見たところによると、親バカ、頑固者といったところ。
こいつを説得するとか、無茶言うなって感じだぞ、オイ!?
「おい、お前!勝手に虚偽の報告してんじゃねぇよ!」
「あら、どこか違ったかしら?」
「まるっきしちげぇじゃねぇか!誰がおめぇと交際してるんだぁ⁉」
「あなたですわよ?」
「貴様だろうが!!」
「だから違うって言ってんだろうがぁぁぁ!!!!」
あーもう!どうしてこうなった!俺は本屋に来ただけなのに!
思えば今日1日、変なこと起こりすぎじゃね?
いつもこんな感じではあるが、今日は特段酷いぞ。
あーヤベェ。あのセリフ叫びたくなってきた。俺と同じような体験を毎日しているアニメキャラの、有名なあのセリフを言ってみたくなってきた。
もういっか。俺はもう、頑張った。吐き出してもいいよな。公衆の面前だけど、周り結構家があるけど、もういいよな。
変質者としてもしかしたら通報行くかも…いや、もう行ってるか。こいつのせいで。
「あら、どうしまして?急に黙って」
あーもういいや。なるようになれだ。
「そうだぞ!貴様、なんとか言ったら——」
俺は思いっきり息を吸い込むと、
「ふこおぉぉぉぉうだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「五月蠅いぞ変質者!場を弁えんか!」
「あらどうしまして?頭大丈夫?近所迷惑よ?」
「テメェらには言われたくねぇわ!」
こいつは、骨が折れそうだ。
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