なぜ筆力があっても、小説は売れないのか
朔之玖溟(さくの きゅうめい)
第1話 一生涯不遇な小説家(1)
小説家H.P.ラヴクラフトは本の虫というよりは、本の鬼という言葉がふさわしいほど、読書家だった。特に、怪奇小説や幻想小説をこよなく愛する者――いわゆる、オタクであった。
彼はまた、幼少より天文学に興味を示し、いかに宇宙が好きか、その熱量は自作品にあらわれている。
突然だが、あなたは、小説を書くことに興味があるだろうか? また、実際に執筆されている方で、なんとなく――またははっきりと――作品があまり読まれていないな、だとか、評価があまりされていないな、と感じた人はどのくらいいるだろうか?
もしくは、小説を読むのが好きな人で、「この作家、もっと評価されるべきだ」と感じたことはあるだろうか?
ラヴクラフトは小説家だが、けして自作品が生前に売れたことはない。亡くなる直前には、無一文に等しい状態で、部屋の家具もほとんど売ってしまったために、部屋はすっかり空っぽになっていたと思う。それほど貧乏だったというのに、彼は小説を書き続けた。
――というより、そうするしかなかった。
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