六大多国籍企業//ヒント
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──六大多国籍企業//ヒント
アーサーはあの後、浅間非線形技術研究所からリー教授を
「ほう。ちゃんと
ジェーン・ドウは技術者を連れて、彼女自身が指定したTMCセクター10/2ビジネスホテルで待っていた。引き連れている技術者は引き抜き防止のためのバイオウェアなどを撤去するのが目的だ。
この手の技術者の
「報酬の件を話したい。オリジンについて大井は何を掴んでいる?」
「おいおい。誰が俺様が大井の所属だなんて言った?」
アーサーがそう要求するのにジェーン・ドウが肩をすくめる。
「じゃあ、お前が持っている情報で渡せるものを渡してくれ」
「そうだな。いくつか教えてやろう。まずメティスがどこでオリジンについて知ったかだ。どうせこいつにオリジンについて尋問したんだろうが、それについては聞きだせなかっただろう……」
「ああ。どこでメティスはオリジンについて知った?」
ジェーン・ドウが不気味な笑みを浮かべて尋ねるのにアーサーが淡々と尋ねる。
「メティスは昔からオカルトが好きな連中だった。幽霊やら吸血鬼やら雪男やらをせっせと調べてたらしい。連中はカルト集団だって連中もいるぐらいにイカれてる」
「前置きはいい。どこでオリジンを奴らが見つけたかを教えてくれ」
「会話を楽しめよ。美人の俺様が相手をしてやってるんだぞ。まあいい。先を急ぐなら話を進めてやる。マトリクスについてのオカルト話を聞いたことはあるか?」
「ない。関係があるのか?」
「ある。マトリクスはあの世に繋がってるって話はメジャーだぞ。肉体がくたばってもマトリクスに繋いでいた脳みその情報だけがマトリクスを彷徨ってるってな」
「まさか」
「そうだ。マトリクスでメティスはオリジンと接触した。お前の娘だって同じ経緯だろう。マトリクス上の情報がシジウィック発火現象という形を得て、そしてデーモンとなった。つまりデーモンはマトリクスで生きれる存在だ」
アーサーが眉を歪めるのにジェーン・ドウが軽くそう言った。
「考えてもみろ。コンピューターってものができてから人間はずっとそいつで
「マトリクスが視覚化されてからその傾向はより強まった。プロジェクト“タナトス”は人間を、プロジェクト“パラダイス”は地球の生態系を、それぞれシミュレーションしようとした。だが、宇宙は演算できない」
「ラプラスの悪魔の矛盾って奴か? それともカオス理論か? ここまであらゆるものがマトリクスでシミュレーションされお前自身が娘を演算することに成功しても、まだ宇宙には計算式で表せないものがあるっていうのか?」
「全てが演算できるなら未来は宇宙が誕生した瞬間から決まっていることになる」
「そうかもしれないぞ? お前の娘が先天性ナノマシンアレルギーでくたばるのも宇宙が誕生した瞬間から決まっていた。絶対に違うと否定できるか?」
「……デーモンはマトリクスでシミュレーションされた情報生命体だとしよう。それはマトリクスに適応した存在であって、
「ああ。そうだな。そうかもな。まあ、そういうことだ。マトリクスを漁ればオリジンの足跡が見つけられるかもしれないぞ。探してみることだ」
ジェーン・ドウがそう言っている間に技術手たちがリー教授のバイオウェアを除去し、生物医学的処置を解除した。
「もう問題はありません。移送しても大丈夫です」
「じゃあな。これが教えられる情報だ。上手くやることだ」
部下の報告に頷くとジェーン・ドウはそう言って手を振り去っていった。
「マトリクスか」
ジェーン・ドウが去ったホテルでアーサーがひとり呟く。
「お父さん。オリジンは私と同じような存在なの?」
「ああ。だから、俺はオリジンを追っているんだ」
「私は人間として生きていた時の記憶とは別にマトリクスで生きていた時の記憶もある。私はまたマトリクスに戻れるのかな……」
「戻りたいのか……」
アーサーが心配そうにアルマを見つめた。
「お父さんばかり戦っていて辛そうだから私も手伝いたい。ハッカーみたいなことができるかは分からないけど、できることをやりたい。お父さんを苦しめるだけじゃなくて力になりたいの」
「そうか。だが、俺はお前に苦しめられているとは思っていない。だが、それでも力になってくれるのならば嬉しい」
「じゃあ、いいの……」
「準備しておく。待っていてくれ」
アルマが尋ねるのにアーサーはそう言ってビジネスホテルを出た。
「マトリクス。人類史上最大の経済地域にして、肉体なき魂が彷徨い、死者と悪魔が歌う場所。そこにオリジンがいる」
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