第53話 双子メイド

 とある街に、外資系及び輸入関係で栄えた『廻間はざま』と呼ばれる大企業のお屋敷があった。

 白く大きなそのお屋敷ではそのお屋敷に仕える多くのメイドが居り、お屋敷に仕えるメイド達は自分を雇ってくださっている廻間家の人々のために奉仕活動を行っていた。

 そんなお屋敷の一室で、一人の赤ん坊が笑いながらたんたんと、手を叩いていた。


「あぅ! あぅあぅ!」


「いかがですか、お嬢様?」「ご機嫌になられましたか?」


 と、そうやって赤ん坊のご機嫌を取る、背格好や顔立ちと髪型以外全てが同じ2人のメイドが居た。

 彼女達の名前はポニーテールの長い髪の姫木立ひめきだちななみと、ツインテールの短い髪の姫木立みみなと言う、双子のメイドであった。

 ななみはガラガラを、みみなはでんでん太鼓を振りながら、赤ん坊のご機嫌取りに努めていた。


「なーな! みーみ! あぅ!」


「お嬢様、なーなではなくてななみですよ」「お嬢様、同じくみーみではなくてみみなです」


 赤ん坊は笑いながら地面をあぃあぃと言いながら叩いて、『もっと! もっと!』と双子のメイドを急かしていた。


「みみな、もっとお嬢様を楽しませましょう」「もっとお嬢様を喜ばせましょう、ななみ」


 2人の双子のメイドはそう言いながらテレビ番組で見た事のあるネタを赤ん坊へと披露しようとして、まずはみみなが床に寝転がり、そのみみなの上にななみが寝転がる。


「みみな、大丈夫ですか?」「ななみが軽いので、大丈夫です」


 みみなが寝転がったまま、ななみがそのまま上体だけ起こしてお嬢様の方を見る。


「「ゆうたいりだつ~、ななみみみな~」」


「あぅあぅあ!」


 そう言いつつ、赤ん坊はななみとみみなの方へと近付いて来る。

 ななみとみみなは顔が真っ青になったかと思うと急いで、ネタを止めて赤ん坊の方へ向く。


「お、お嬢様! 今そちらに向かいますので!」「そう! こっちは大丈夫ですよ!」


「あぅあぅあ! だー!」


「お、お嬢様! 大丈夫ですので!」「そう、安心して……安心してくださいね」


「だぶだぶだー!」


「お嬢様!」「大丈夫ですから!」


 ななみとみみなの2人は「大丈夫です」を連発し、赤ん坊はなんとか止まってくれた。


「良かったです、お嬢様」「えぇ、本当に良かったですね」


 ななみとみみなの2人は、お嬢様が自分達が散らかしてしまったまきびしを踏まずに済んでホッとするのであった。

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