「第三十五話」カウンセラー

「交渉ができないと判断するまでの共闘」という条件の下、『四公』の『剣聖』四人はその背中を預け合うことになった。彼らは屋根に穴を開け、その中から堂々と屋敷の中に入った。




「……」




 ソラは、変わり果てた屋敷の中を悲しげに見ていた。清潔ではない環境、明かりが少なく見栄えも悪い……ここが、本当にあの屋敷なのだろうかと疑うほどであった。目の前の変わりように思わず、もうあの頃には戻れないのではないかと不安になった。




 だが、アイアスはそんなことお構いなしである。




「へぇ、このナマクラはちったぁマシだな。おいスルト、お前にやるよ」


「元々俺の家の物なんだが……」




 壁に立てかけてある武器やら鎧やらを一切の遠慮なしに、彼女は物色しまくる。スルトはため息をつくが、セタンタは鼻で笑っていた。なんだか和んでしまっているこの空気感はどうしたものか、ソラは引き締めるべきかほぐすべきか迷った。




「そんなに気張らなくてもいいんじゃねぇか?」


「え?」




 兜を被ったアイアスが言う。




「ここ、お前の家だろ?」


「──そうだね」




 そうだ、引き締めるもクソもない。ソラは深呼吸をして、先陣を切った。




(私は、お義父さんと話をしにきたんだ)




 意気揚々と遠ざかっていく背中を、スルトは追いかける。アイアスがそれを満足気に見ていると、セタンタは急に鼻で笑った。




「お前、カウンセラーとか向いてるんじゃねぇの?」


「ああん? こちとら前世から刀鍛冶だ! とっとと行くぞ、時間がねぇんだろ?」




 段々と暗くなっていく屋敷の中を、四人は進んだ。

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