わらしべ

 あるところにとても貧乏な男がいました。家族もおらず一人ぼっちで暮らしていましたが、ある日お堂に行き観音様に祈りました。


「観音様、お願いします。どうか福を授けてください」


 そうすると、どこからともなく声がします。


「わかりました。ではお堂を出なさい。お堂を出て最初に手に触れたものを持ち歩けば幸福が訪れるでしょう」


 男は声に従って、お堂の外に出ました。それからすぐに石につまずいて、転んでしまいました。


「痛てて! あれ? 何だこれは」


 男の手に何かが触れました。それは一本の藁です。男はお堂で言われた通りに藁を手に持ち、歩きはじめました。その内、虻が飛んできたので、藁にくくりつけました。近くにいた子どもがそれを見て駄々をこねました。


「わあ、それおもしろい! ねぇ、それちょうだい! ねぇ! ねぇ!」


 男は困りましたが、結局藁をあげてしまいました。それを見ていた子どもの母が男にお礼を言いました。


「どうもすみません。よかったら、これ食べてください」


 そう言って男にみかんを3つ渡してきました。男は大喜びで家に帰りました。


「いやーなんてついているんだろう。たった一本の藁がみかん3つになるなんて。これも観音様のおかげだ。世の中まだ捨てたもんじゃないな。うん、うまい。このみかん甘くてすごくうまいな。なんだか食べたらすごく元気が出てきたぞ。よし、明日から頑張ろう!」


 みかんを食べた男は、そのままぐっすりと寝てしまいました。


 その後、男は特にお金持ちにはなれませんでしたが、それなりに楽しく暮らしたそうな。


 

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