ちんちんが家出した
その男は童貞だった。彼が童貞である理由は色々ある。ブサイクで稼ぎが少なく頭が悪い、と色々あるが要するに男性としての魅力がないから童貞なのだった。
「はぁ、なんで俺はこんなにモテないんだろう。このまま一生童貞なんだろうか。うんざりするな」
男はそう言ってため息をついた。しかし、うんざりしていたのは彼だけでなく、彼のちんちんもそうだった。ちんちんは股間から外れ、男に言った。
「もううんざりだ! 僕はここから出ていくことにするよ!」
男は驚いた。自分のちんちんが突然外れて話し始めたのも驚きだが、何より家出を宣言されたのに驚いた。
「出ていくだって? いったいなぜだ?」
「お前のちんちんをやっていたら、いつまでたっても性行為ができないじゃないか! ちんちんとして僕は情けないよ!」
男は腹を立てて言う。
「何だと!? 俺だって好きで童貞してるわけじゃねーよ! 出ていきたいなら出て行け! もっとも行く当てもないだろうがな!」
「行く当てならあるさ。誰か別のイケメン男性の二本目のちんちんになろうと思っている。彼らの周りにはいっぱい女性がいるから、ちんちんが一本だけ足りないはずだ。そこを狙うことにするよ」
「く……勝手にしろ!」
こうしてちんちんは家出した。ちんちんを失った俺の股間には小さな穴がひとつ空いている。そこから何とか小便をすることができるが、不便で仕方ない。小便をしながらちんちんの有難みを噛みしめていた。
「ちんちんがいないだけでこれだけ不便になるとは……いや、ちんちんのことだけに限らず、俺は普段当たり前にあるものに対する感謝の心が足りないんじゃないのか? 自分にないものを欲しがるばかりで、今あるものを大切にしない。俺がモテないのはブサイクなのもそうだけど、そういうのも関係あるのではないだろうか。もしちんちんが戻ってきたら必ず謝ろう。そしてお礼を言おう」
男がそんなことを考えながら暮らして一か月ほどたった時。彼の家の玄関で物音がした。男が玄関を見てみると、そこには家出をしたちんちんがいた。
「ち、ちんちん! よく戻ってきてくれた! さあ、早く家に入りなよ」
「ごめんなさい。勝手に出ていったくせに戻ってくるなんて。ボク、なんとかイケメン男性の二本目のちんちんにしてもらえたんだけど、ダメだったよ。先輩のちんちんにひどいいじめにあったんだ。『竿が小さい』とか『耐久力がない』とか嫌味を言われてさ……本当に情けないよ、ボクはダメなちんちんさ」
「そんなことないよ! お前は世界一のちんちんだ!」
自嘲するちんちんを男が否定する。
「今まですまなかった。お前がいなくなってお前がどれだけ大切な存在か嫌というほどわかったよ。こんな男だからモテないし童貞なんだよ。さあ、俺の股間に帰っておいで」
こうしてちんちんは男の股間に戻り、二度と外れることはなかった。こうしては今まで以上に強い絆で結ばれ、男とちんちんは幸せに暮らした。
まあそれはそれとして、男は終生童貞のままだったのだが。
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