あなたの子どもです

 朝、会社に出勤すると俺の机に人だかりができている。どうしたのかと近づいてみると俺の机の上に大きなバスケットが置いてあり、中に赤ちゃんがいた。


「一体どうしたんですか?」


 俺は近くにいた部長に尋ねる。


「ああ、今朝出勤したら君の机の上に既に居たんだよ。一体誰が連れてきたんだか……」


 どうしたものかとみんな困っていると、ある1人の社員がバスケットの中に手紙が入っているのを見つけた。


「えーっと……『タケダさんへ タロウはあなたの子どもです。後はお願いします』だって!」


 何だって。タケダとは俺の名前だ。しかし、こんな赤ちゃんに心当たりはない。


「タケダくん。この赤ちゃんは君の子なんじゃないのかね?」


「違います! 何の心当たりもありません!」


「でもタケダさんの机にあったし手紙にも書いてあるし」


「違います! 顔だって似てない!」


「でも赤ちゃんの頃の顔なんてみんな同じようなものでしょ。やっぱりタケダさんの……」


「違います! 俺の肌の色はこんなに白くないし、髪もこんな金髪じゃない!」


「でも相手が金髪の白人かもしれないし……」


「違います! だって頭に獣の耳が生えてたり、尻から尻尾が生えてるなんておかしいでしょ! 俺の子どもじゃない!」


「でも相手が金髪の白人で獣人なのかもしれないし……」


「そ、そんなわけ……うぅ……」


 何も言えなくなった俺にみんなが畳み掛ける。


「おい! さっさと認めろよ! 自分が親だって!」


「そーだそーだ! 責任取れ!」


「赤ちゃんが可哀想だろ!」


 みんなにそう責め立てられる内に、全く心当たりは無いはずのに、なんだか自分が本当に赤ちゃんの父親のような気がしてきた。


 改めて赤ちゃんを見てみる。


 色白で金髪。更に狐のような耳をして尻から尻尾が生えた、身の丈2メートルはある赤ちゃんがバスケットの中で生肉を喰らっていた。それを見ているうちになんだか父性が湧いてくる。


「……わかりました! 認めます! この子は俺の子どもです!」


 そう宣言した俺をみんなは祝福する。


「よく言った!」


「さすがタケダさん!」


「おめでとう!」


 俺が赤ちゃんを抱き上げて叫ぶ。


「今日から俺がお前の父ちゃんだ! よろしくな! タロウ!」

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