第13話 ひまり 3
初夏になり、パパと私の誕生日が近くなった頃。
段々と諦めモードになった私の目の前に、とても綺麗なオーラを纏った人が現れた。
それが一樹お兄ちゃんだ。
(うっわ、久しぶりに見た!綺麗なオーロラ色!この辺にあんな子いたんだ~、気づかなかったなあ。ん?でも所々が少し濁ってきてる?勿体ないぞ!)
ちょっと姑息だけど、近付いて様子を見る。
彼はぶつぶつと一人言を言っていた。
(高校を辞める?なにかあったのね。それで少しオーラが……)
そして、ふと携帯の画面に気付く。
「お兄ちゃん、その仕事受けるの?」
聞こえないのが分かっているのに、彼のオーラに似つかわしくない行動に思わず声が出た。
「えっ、ひとみ?」
「ひとみちゃん?」
「お兄ちゃん、私が分かるの?」
奇跡が起きた。
その後、やっぱりキラキラしたオーラの優兄ちゃん翔兄ちゃんも登場して。ひとみちゃんにも会いに行った。病気で弱くはなっているけれど、彼女もとても綺麗だった。ここへ来て、こんなに綺麗な人たちに会えるなんて。そして皆が私を見てくれるなんて。きっと最後のチャンスだ。
お兄ちゃんたちの境遇を聞くと、正直、こんな私だけの我が儘に付き合わせるのも躊躇われたけれど。ダメ元でお願いしたら、付き合ってくれることになった。
私はせめてものお礼に、ひとみちゃんにそっとオーラの補充をしていた。自然治癒の力を高められるように。
まだまだ未熟者の私だけれど、ひとみちゃんとは波長があったみたいで、症状緩和のお役に立てたようで嬉しかった。
そしてパパの誕生日の前日。つまり私の誕生日に、お兄ちゃん達はサプライズパーティーを開いてくれた。
今までも、お祝いはしてもらっていた。
でもどこかに影があって。仕方ないと思っていたけれど、やっぱり心から何の憂いもなく、生まれてきてくれてありがとうの気持ちの「おめでとう」は、とても、とても嬉しい。
お兄ちゃんたちなんて、すごくすごく大変なのに。パパもママもいなくなって、大切な妹も病気になって。
他人になんか、ましてこんな子どもになんか、構う余裕が無くなっても仕方がないくらいなのに。
なんて、なんて優しすぎる人達。
そしてそれを当然だと思っている、お人好し。
だからお兄ちゃん達の周りの空気は、いつも綺麗。温かな空気で、自然と悪いものを寄せ付けないんだ。
どうか、明日。
全てがうまくいきますように。
◇
家が近付くにつれて、緊張感が高まる。
お兄ちゃんたちがいてくれたら入れるかも、というのも、あくまで私の想像な訳で。
途中であまりにも真顔な私に、一樹お兄ちゃんに違う心配をさせてしまった。
慌てたけれど、心配してもらえるのはくすぐったい。この前、一人で外出したと言った時も、心配して叱ってくれたっけ。
この数日間は、温かな記憶でいっぱいだ。そのせいかも知れない、こっちの世界でも使える力が増えた気がする。
うん、頑張れる。頑張ろう。きっとこれで最後だから。
そして、家の門前に立つ。いつもは閉まっている門扉が開いていた。ふっとママの気配がした。お兄ちゃんたちの影響で、少しだけ干渉できたのかもしれない。
そう、思っていた通り、お兄ちゃんたちの周りは黒い霧が晴れていっている。
私はそっと邸内に足を運ぶ。入れた!
残念なことに、最初は関じいには私が見えなかったみたいだけれど。羽交い締めにしてちょっと金縛りにしたから、その波長で私に気付いてくれたみたいだ。
泣いてくれているのに、放っておいてごめんね。パパの所に行かなくちゃ。
真面目で優しい一樹お兄ちゃん。
いつも前向きな言葉をかけてくれる、優兄ちゃん。
ちょっとぶっきらぼうだけど、実は気遣い屋さんの翔兄ちゃん。
そんな皆に妹扱いしてもらえて、幸せだったな。
パパ、今いくからね。
三人が作ってくれた、光の道を辿って。
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