俺だけ開ける聖域《ワークショップ》!~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信をしてしまい、ダンジョンの英雄としてバズっただけではなく、追放されたパーティにざまあして人生大逆転!~
第7話『全然理解できてないけどやるしかない』
第7話『全然理解できてないけどやるしかない』
「はぁ……こんなもんか」
ソロ活動での初戦を無事に終え、ちょっと壁際へ寄って腰を下ろす。
ため息を吐かせたのは2つの要因から。
1つ目は、このガクガクに震えが止まない足。
まるで自分で自分を笑っているかのような膝は、あのまま次の戦いをしようとすれば間違いなくどこかで崩れていたと思う。
誰も助けてくれないこの状況下で、そんなことになってしまったら目も当てられない。
2つ目は、呆気なく思ってしまったから。
だってそうじゃないか? 今の今まで俺は誰かのおこぼれでしかモンスターをまともに倒せていなかった。
なら、実力は底辺というわけだし、自分の力だけでまともに戦えるはずがないと思っていたんだ。
そう思っていたはずなのに、たった1撃で倒せてしまったんだぞ。
笑うしかできないだろ。
「でも、このスキルがなければ……」
もしかしたら、正面からの戦闘を避けて逃げ出していたかもしれない。
「はぁ……」
自分は惨めで情けない、そんな思い込みが払拭された気がする。
だけどまだまだ自信がついたわけじゃない。
呼吸も体の震えも収まってきた。
まだまだこれから。
「あ、そうだ」
空中に浮かび上がるアプリ一覧というには物寂しい、配信アプリしかない画面に若干気落ちしながら起動する。
すると【自動ログイン中】の文字が。
なるほど、バンドには各探索者の個人情報が登録されているから、それを活かしているのだろう。
文字入力が要らない、生体認証的なものなんだろうが、これはこれで随分と便利なものだ。
「ふむ……」
取扱説明書を横に展開し、2窓をしながら作業をしてみる。
購入時にも確認したが、やはり使える機能はそこまで多くないようだ。
これは良さそう、と思った機能を開こうとしたら【このバージョンではご利用できません】の文字が出てくる。
オプションなどでも同じく。
こんなに制限を設けられていたら、確かに値段が2倍も違うというのも理解できる。
だがしかし、ちゃんとアカウント表示名は編集できるとわかって一安心。
別に困るわけではないけど、本名で活動するのだけは少しだけ抵抗があったからな。
「――これでよし、と」
チャンネル名を【鍛冶師の探索者】。
アカウント名を【シン】。
まあ後からでも変更できるみたいだし、とりあえずこのままいこう。
配信するサイトも決めて登録した。
後は配信開始のボタンを押すだけでいいらしい。
随分と便利なことだ。
「だけどこのままじゃダメだよな」
敏腕受付嬢である美和からの提案あってのことだが、モンスター1体を倒しただけでこんな感じになってるようじゃ、配信を始めたとしても笑いものにされる未来しか見えない。
そうならないためにも、少しでも数と戦わないとな。
「やるか――」
「――ぷはっ」
あれから、かれこれ2時間ぐらいは経っただろうか。
ひたすらにラッターだけと戦っていたが、討伐できたのは計10体ぐらい。
戦闘した後に休憩をして……を繰り返していたら、こんなに時間がかかってしまった。
「……みんなと一緒だった時は、数分もかからなかったな……」
再び壁に体重を預けて休憩しながら、そんなことを思い出す。
理不尽にパーティを追放されたというのに、俺はみんなとの楽しかった記憶が鮮明に蘇ってきてしまう。
こんなこと、美和に聞かれたら「未練たらたらじゃん」なんてツッコミを入れられそうだな。
付け加えて「そんな人達のことなんかさっさと忘れちゃいなよ」とも言われそうだが……わかっているさ。
ほとんど役に立っていなかったというのに、幻想を抱きすぎだって。
でも、みんなと過ごした日々が楽しかったというのは事実だ。
結果だけ見れば、今俺が抱いている気持ちは楽観的すぎだ、ということぐらいわかっている。
だけど、記憶の中で笑うみんなの姿ぐらい、楽しかった記憶として憶えていたっていいじゃないか……。
「なんてことを思っていたって、進むわけじゃないからな」
立ち上がり、もう慣れた手つきでお尻についた土をパッパッと払い落とす。
そういえば、配信の流行ってなんだろうな。
普通の動画配信者やゲーム配信者とかいろいろなジャンルがあるのは知っている。
しかし、実際にちゃんと観たことはない。
今の時代的に、探索者がダンジョンで配信をするなんてそこまで珍しいものでもないだろうから、どうやったら視聴者が増えるのだろうか。
無い知識で考えても仕方はないがゲーム配信者だったら、その上手さやトーク力だと思うし、動画配信者だったらテンションの高さや編集の上手さ……だと思う。
探索者で配信者とだったら優れた容姿や強さ、秀でた才能はあまり必要がなさそうで安堵できても、やはりガチャスキルの希少性というのは注目を浴びるだろな。
ユニークなスキルといえば、派手さや強さなんだろうが、俺のスキルにそれら要素が含まれているとはあまり思えない。
他人のガチャスキルを直で目の当たりにしたことがないからなんとも言えないが、実際のところはどうなんだろうな? 防御系なのに攻撃に応用できる点は珍しいのかも?
どちらにしてもやってみないとわからないし、それに、なによりこんな腑抜けた戦闘をしていたら、スキルで観られても視聴者が離れてしまう。
「よし、もう少しだけ頑張るぞ」
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