アレキサンドライトの物語

 ここで成功すれば丸くおさまるんだから、頑張れ私!

 一世一代の大勝負である。やり手の女を演じてここまで乗り込んできたのだ。演じ切るしかない。

 ギャンブルの才能はないけれど、ここで逃げたらなにも変わらないことだけはわかっている。運よ、どうか味方をして。

 コロコロと玉がまわる。そして、結果が出る。

 息を呑んだ。私の勝ちだ。

 彼はふっと笑った。


「ふふ。君の行動力には驚いたよ。今日のところは君の勝ちでいいよ」

「やったぁ」


 素直に喜んだ私の顔に彼の指先が向けられる。

 ゾクリ。

 彼はすっと目を細めた。


「借金の件はこれで流してあげるけれど、賭けに負けて帳消しにしたとあってはメンツがよろしくなくてね」


 なにか条件があるらしい。私は気を引き締めて彼の唇を見つめる。


「僕の気が済むまで、恋人役をやってよ」


 裏社会に顔がきくような人間の、恋人役⁉︎

 聞き間違いじゃなかろうか。困惑したまま黙っていると、わざわざ彼が近づいてきて顔を覗き込んできた。すごく美麗な顔だが、鋭利な刃物のような気配を纏っている。


「ここに乗り込んできたその度胸があれば簡単でしょ?」


 彼の冷たい瞳と視線が絡んだかと思えば唇が重なる。ねっとりとした口づけは、逃がさないという暗示のようだった。



《終わり》


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アレキサンドライトの宝石言葉

【成功】【勝負】【才能】【行動力】

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