第4話 告白
運命の放課後がやってきた。
教室の掃除が終わった後、僕は帰宅の準備を済ませて、そのまま図書室に向かう。
図書室の扉は開いていた。
受付には司書さんが座っており、僕はそこを通り過ぎて、図書室の奥の方へと入って行く。
ラノベコーナーの近くにある椅子に、重叶さんは座っていた。
彼女は僕の姿を認めると、ニコニコしながら手を振ってくる。
僕は彼女に近づいていき、声をかける。
「ごめん。待った?」
「待ってないよ。ちゃんと来てくれてありがとう」
「そりゃ来るよ。約束したんだから」
「うん。でも、今日は私がグイグイと行き過ぎたから、そのせいで嫌われちゃってもおかしくないと思っていたの。だから、来てくれてありがとう」
「嫌いだなんて、そんなことあるわけないよ。だって……」
「だって?」
彼女が訊き返してきて、僕はゴクリと唾を飲んだ。
いきなり言うのか? 雰囲気も何もないこの状況で? いや、こういうのは勢いが大切だ。むしろ、言うなら今しかないだろう。
「僕は、重叶さんのことが好きだから」
と、勢いに任せたまま、僕は彼女に告白した。
幸い、図書室には司書さんと僕たち以外誰もいない。司書さんには、僕たちの声は聞こえていないはずだ。聞こえていたとしても、もう後の祭りだ。
僕の言葉を聞いた重叶さんは、優しく微笑んだ。
「ありがとう。すごく、嬉しい」
「えっと、だから、その……」
そうだ。よく考えたら、好きって伝えるだけじゃダメじゃないか。僕が重叶さんとどうなりたいかについても、しっかり伝えるべきだ。
「だから僕と、付き合ってください」
「もちろん。喜んで」
間髪入れずに彼女はそう答え、立ち上がって僕の右手を両手で包んだ。
「私もあなたのことが大好きです。いつも、相生くんのことを目で追っていました。気づいてた?」
「実は、ずっと視線は感じてた……」
「やっぱり気づかれてたよね……。恥ずかしい……」
「最初は僕のことばっかり見てきて変な人だなって思っていたけど、僕のことが好きだから、目で追っていたんだね」
「そうだよ。って、冷静に解説しないでよっ。後、変な人ってひどくない!?」
「そりゃ、他人をずっと目で追ってるなんて変な人でしょ。人によっては、通報されても文句は言えないよ?」
「うぅ……。相生くんが通報しないような優しい人で良かったです……」
「優しい、のかなぁ?」
むしろ、誰かにじろじろ見られていることがわかっているなら、警察に相談する方が正常な気がする。
まあ、そんなことは今となっては、どうでもいいことだ。
「あの、相生くん。もし良かったらなんだけど……」
「うん。どうしたの?」
「今日は私たちが付き合った記念すべき日ということで、当初の予定通り、この図書室でラノベについて語り合いませんか?」
「実は、僕もそうしたいと思っていたんだ」
僕は頬をかいて照れながら、そう答える。すると、重叶さんは嬉しそうに手を合わせた。
「そうなんだ! やっぱり私たち、息ピッタリだね!」
「そうかもね」
「ふふ。嬉しいなっ。恋が実るって、こんなにも嬉しいことなんだね!」
重叶さんが嬉しそうにしていると、僕も嬉しくなった。
僕たちは教室と同じように、隣同士で腰かけて、ラノベについて語り合う。
「相生くんがラノベにハマったきっかけはなんだったの?」
「ああ、僕が初めて読んだラノベは――」
その後、僕と重叶さんは、初めての図書室デートを存分に楽しんだのだった。
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