料理だけが上手いニートが異世界に転移して組んだ初パーティーで冤罪を擦り付けられ追放された後に気付いた事があるのでチート級勇者となりざまぁとお礼をしに行きます

オモ四郎

第1話 始まりとピンチ

「はい!作ってやったから早く食えよ。」


「いつもありがとうねぇ。」


「...」


 俺は佐藤俊彦。30歳で仕事なし、世間で俗に言う「ニート」だ。ただ他のニートとは違う!と断言できる所がある。それは料理の腕である。他のやつは家族に用意させているらしいが俺は違う。俺は料理の専門学校にひたすら通っていたから料理の事を分かっている。だから料理は自分で作っている。でも今日はうちのじーさんとばーさんがどうしても食べたいと言うから仕方なく作ってやった。


「まあ、俺は他のニートとは違って優しさがあるからな。」


 なんやかんやで親は俺の事を認めてくれていた。私達が居なくなっても就職くらい出来るでしょうと。俺は今日も親の金で買い物に行った。でもこの時の俺は気づかなかった。親より早く死ぬなんて。


「じゃあ行ってくるからな。」


 帰り道で交通量の多い道を渡ろうとしたときだった、前方から大きなトラックが結構なスピードでこっちへ来た。


「まあ歩行者が青信号だし止まるだろ。」


 でもそうとはならなかった。トラックはそのままこちらへ突っ込んできた。驚くほどのスピードで。信号無視をするつもりだったんだろう。大きいトラックだったからこちらが見えていなかったのか。


「うわぁ!」


 鈍い音と同時に俺の意識が地球(ここ)から無くなった。どうやら死んだらしい。まあそうだろうな。あんなスピードで飛んでくるようでは避けられもしなかっただろう。



 次に目を開けた瞬間に、俺は西洋に似たような知らない街に居た。轢かれたときのように横たわっていた。そしてしばらくすると誰かが来た。ちょうど僕が世界観を理解しようとした時に。


「おい!そこに居ると『邪魔』だぞ!」


「は...はい。」


 僕は無意識にそう答え、道の端の階段に静かに腰掛けた。どうやら「異世界」ってやつに行ってしまったらしい。


「はえー...これが異世界ってやつか。いつか見た近世の西洋に色々な要素を足したような感じだた。」


 俺は自分の様子を確認しようとしてガラスに姿を移したら、見事に洋服だけが変わっていた。顔とかはそのまんま。でも変だとは思わなかった。


「流石俺だな。ていうか異世界ってことは、ギルドみたいなのもあるってことか?そして俺は料理以外の能力を見つけていい仲間と冒険する最高ルートかな?」


 俺は剣と洞窟のロゴが書いてある建物を見つけた。多分これだろうと思い入ってみた。ビンゴだ。ここが「冒険者ギルド」らしい。やっぱり俺はなにか持っているんじゃないか?


「ようこそ!冒険者ギルドへ!」


「登録をしたいんだけど。」


「では、どうぞこちらへ!」


 俺は席に座り、自分の情報を書く所に書いていた。名前は「サトウ」で良いか、年は少しサバ読みして28と行ったところかな。


「なるほど、分かりました!どうやら年齢的にもギリギリですが大丈夫そうですね!ではこちらの板に手をかざしてください!」


 サバ読みしてよかった。でなければ適正外と言われてしまう所だっただろう。やっぱり俺は神スキルを持っているのかな?俺は自信満々に手をかざした。


「あなたの能力: 料理スキルV 以上。」


「え?」


 ウソやろと思ったけどすぐに理由が分かった。俺は料理しか得意ではないのだ。対して運動も出来ないし運も普通だった。だから、さっきの小さな幸運はすべてまぐれだったということだ。転生したから多少補正がかかっていると思ったのに...アニメと違う...まあ当然か。


「これではパーティ内の『旨い物を作るただの炊事係』くらいにしかなれませんねー。どうします?一応募集かけてみますか?」


「お願いします。」


 この受付意外とバッサリ言ってくるな。俺じゃなかったら一発で病んでるだろ。まあ俺はオンラインゲームと掲示板で鍛えられた鋼のハートがあるからな。


 転生後だから補正とか最強スキルとか手に入らないのかよとぐちぐち思いながらギルドの建物内部で横になっていた。もし今日中に来なかったら諦めてスローライフでもするか。


「いや後3日!いや、あと1週間だ!あと1週間我慢してやる!」



「今日は...!」


「居ませんよー。」


 もうこれは挨拶と化していた。あれから1ヶ月経ったが諦めきれずまだ毎日通っている。しょうがないからギルド内部に併設の飲食店でバイトしながら日銭でギリギリ飯を食っていた。


「もう限界だよぉ。誰かあ...」


 細くなった声でそう言って祈っていたら、ある3人組のパーティーがこっちに来た。もうそろそろいじめ対象にされるのか?でも俺は鋼のハートと掲示板サイトで鍛えた論破力があるからな。何かあっても大丈夫だろ。


「私は『ルース』だ。お前を炊事係としてパーティーに入れたいのだ。冒険するには4人でないといけないからな。」


「よろしくおねがいします!」


 俺は即答した。これが1ヶ月待った結果だ。この1ヶ月に色々あっても結果が結果だから良いのだ。


「じゃあ、来い。」


「は、はい。」


 僕はまるで犬のように真面目について行った。そして数十分後に彼女らの家に着いた。彼女らの家はボロボロで、中はとても汚かった。数年前の俺の「最悪なニート時代」を思い出す。今の俺の部屋よりも10倍汚かったんだ。その時は。この家はそれに準ずる。いや超える汚さがある。そして俺は料理場に連れて行かれた。


 はい。これがお前の持ち場。勝手に色々しとけ。まあでも最初は掃除しておいて。じゃ。


「え、ちょっと...」


 料理場は臭くて洗ってない食器や鍋ばっかりで汚かった。何年前のものだと思うほど古い缶詰まである。ちょっと荒っぽいなと思った。けれども俺を拾ってくれたからな。これくらい頑張って掃除するか。まあ俺はやれば出来るやつなんで。意外と。


「掃除道具はどこに...?」


「あそこだよ。ほら、あの腐ったパンの隣!」



 2時間経った。劣悪な環境が少しはましになった。匂い以外すべてきれいになったのだ。やっと終わったという気持ちで彼女に報告しに行こうとした。


「もう冒険に行くけど。早く準備して。」


 多少ムッとしたが、まあ冒険が真の目的なんだからと納得した。どうやら魔法使い、剣士、弓使いの3人で構成されているらしい。そこに俺が入ったという事だ。少しでも役に立てれば良いなと思っている。



 洞窟の中へ入っていってしばらく経った。洞窟の真ん中あたりだろうか。休憩と言われて僕は張り切って自分のお金で買っておいた食材を取り出そうとしたとき、彼女から一言言われた。


「お前、そういえばさっき私の肩触っただろ。」


「え...確かに触りましたが、あの時はあたりが特に暗かったのでみんなで肩を触り合いながら進もうとあなたが...」


「うわーお前そういう事言ってごまかそうとするんだな。そういうの良くないよ!」


「いやだから...」


「姉貴ー!風の魔法でふっとばしてやれよ。こんな『ゴミ』は空に処分しないとなぁ。」


 ゴミだって?ここが掲示板なら即反撃できるのに、俺は速攻で反論できなかった。


「良いのか...?どうせ人数補填のために連れてきたんだろ?なら俺が居ないと何かを成し遂げてもギルドに報告できないぜ...」


「黙れやゴミ。代わりなんか『いくらでも居る』んだよ!」


「お前なんか『前世もどうせゴミだろ』。人間根っこの部分は変わらないんだよなぁ。」


「どうせ『お前の力なんかじゃ何も出来ないから』。ゴミはゴミらしく散れよ。」


「...!」


 今の俺にはすべての言葉が刺さる。鋼のハートじゃないのかよ。せっかく異世界で初めての仲間が出来たと思ったのに。なんなんだこの展開は...そして俺は風魔法で一瞬にして外に飛ばされた。


 だんだん地面に近づいてきた。俺はまたあっけなく地面に叩きつけられて死ぬのだろうか...せめて、せめてあいつらに...


「『お礼』と『ざまぁ』してやるのにな。」


 初めての涙を流しながら、僕は目を閉じた。

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