第十八話 見つけた
思わず顔を顰めてしまった。
同時に、ぞっと背筋が凍った。
同時に、ほっと安堵もした。
あなたを一目見た時に。
理由は単純明快。
『砂の国』のすべてに縁を張り巡らせているからだ。
その縁はとても。とても強い糸。いいやもう蔓だ。
巻きつき、吸いつき、引っかけては、絶対に離さない蔓。
尋常ではない、想いの強さ。想いの深さ。
この縁を断ち切るのは、容易ではないな。
ますます顰める顔とは裏腹に、俄かに生成した温もりが、どんどんどんどん胸の内から全身に広がる。
見つけた。
そう思ったのだ。
思ってしまったのだ。
だから、だろうか。
だから、言ってしまったのだろうか。
捜してみるか、と。
探し出してほしい、私を見つけてほしい、と。
見つけてほしくなどない。
見つけてほしい。
相反して拮抗していた気持ちがこの時ばかりは、傾いてしまったのだ。
余りにも、あなたが静かだったから。
逆に私の気持ちが騒めいてしまったのだろうか。
(2023.8.16)
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