第八話 ゆるり
動かぬ身体から力が、抜ける。
ゆるりゆるりと。
手首の一点に開けられた傷から、か細く流れて行くようだ。
これは幻覚だろうそうとしか考えられない光景が襲いかかった。
視界に映る湧き立つ海の渦が数知れぬ木の根に喰われて行く、おぞましい光景。
もしかしたら。
いや確実に。
海はすべて、木の根に喰われてしまった。
総攻撃が開始されたのだろうか。
ならば、次は。
『砂の国』がすべて。
喰われてしまう、のか。
動け。
動け動け動け。
喰われて堪るか。
まだ何も私は。
私はまだ何も。
うるさいうるさいうるさい!
邪魔だなんて言われなくても!
「致し方ない。新たな縁を結び、断ち切ってみせるか」
(2023.8.7)
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