短編

雪乃 空丸 

きらいだった交換日記

きらいだった交換日記



「燃えろ、想い出毎」


燃えてしまえ


口にしながら彼女は虚な表情で、紙を破っては薪の上で燃え上がる炎の中へと落とす


「辛くはないの」

ピタリ、と彼女の動きが一度止んで、最後のノートの切れ端を摘んだ


「辛いよ、恋人だったんだもの」

ぱち、火が瞬いて交換日記は消えていった


「ねぇ、どうして、出会いはあるのかな」

彼女の声音は酷く震えていた


「知らないよ、別れがあるからじゃないの」

炎の上から水をかけるように、ピシャリと返事をすれば彼女は『そっか』とポソリ、小さく呟いた


何となく気まずくなってガシガシと頭を掻きながら『まぁ、次の出会いでも探せば』と言えば『そんな簡単に見つかったら苦労しないよ』と返ってきた


炎は未だ緩い風に燻られ、輝いていた

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