第6話 魔女、冒険者になる
冒険者ギルドの中は、あの廃墟のギルドと間取りは同じに見えた。ギースさんが言ったように、中には少数の冒険者に見える人がいて壁に張ってある張り紙を見ている。それ以外だと受付のカウンターに女性が2人いるのが見えた。それから併設されている酒場には誰もいないようだ。私は受付の前までギースさんについていく。
「ミランダさん、こいつの冒険者登録と魔石の換金をお願いします」
「あらあら、ギースの彼女?」
「違います。魔石だけ持って開拓村から来たみたいで、入場税の回収も兼ねて連れてきました」
ミランダと呼ばれた女性は30代にはまだ行っていない感じの女性だった。少し目元がキツめだけど、私を少し気遣わしげにみてくる。
「あー、そうなのね。えっと字は書ける?」
「はい、それは大丈夫です」
「それじゃあこれに分かる部分だけでいいから書いてね。あとは換金していい魔石を出してもらっていいかな? 今のうちに査定を済ませるから」
「はい、お願いします」
ローブのポケットから魔石をひとつかみして、用意されている箱にいれる。そして出された用紙に目をやる。用紙には出身地、名前、年齢、特技の記入欄があるだけだった。出身地は無記入でいいかな? 名前はエリーで年齢は……十七にしておこう、うん私は永遠の十七歳だ。あと特技の欄にはなんて書くべきか。まあこれも無記名でいいかな?
「これでいいですか?」
ミランダさんが用紙を受け取り軽く目を通して「まあ開拓村なら字をかけるだけでもマシよね」と呟いた後にOKを貰う。
「それじゃあ、この魔石に手をおいてちょうだい」
先程書いた用紙の上に手のひらサイズの木製のカードのようなものが置かれ、その上に拳大のまん丸い魔石が置かれている。ふむふむ、見た感じ転写の魔石ってところかな?魔石に手を置くと少量の魔力が吸われる感触があった。一瞬だけ鈍く光ると、木製のカードに情報が転写されたようだ。
「はい、もう良いわよ。これが冒険者カードね。身分証にもなるからなくさないように。再発行はできるけどペナルティーがあるから気をつけて」
冒険者カードを見てみると表には剣と盾の紋章が描かれている。裏返すとそこには名前の欄にエリーと書かれていて、年齢の欄に十七と書かれている。出身地は書いた覚えのないダーナ領都となっていて、特技の欄は空白となっている。
「ありがとうございます」
「それとこれがさっきの魔石を換金したお金になるわ。ここからギルドの登録料として銀貨一枚貰うわね。それと銅貨5枚は入場税ね。残りの銀貨10枚と銅貨8枚を渡しておくわ」
「はい、ありがとうございます」
私は並べられたお金を無造作にローブのポケットに放り込む。
「ギースはもう良いわよ。後は私が受け持つから」
「それでは後は頼みます。エリーだっけか無茶だけはするなよ」
「あらあらなんだかギースらしくないわね」
「いつもと変わりませんよ」
ミランダさんから銅貨を受け取ると、ギースは片手を上げてギルドから出ていった。
「それでは改めまして冒険者ギルドの説明をするわね」
「お願いします」
ミランダさんが話してくれたことを要約するとこんな感じだった。冒険者にはランクがあってウッド、ブロンズ、アイアン、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリルと七段階あり、なりたては基本ウッドからみたいだ。つまり私が持つ冒険者証が木製ということでランクはウッドランクになる。ランクに関してはシルバーまでは各街のギルドの裁量で上げることができるようだ。
次に依頼は掲示板に毎朝貼られ、基本は早いもの勝ちになっているようだ。ただそれはローカルルールということで別の街だと違う場合もあるのだとか。依頼については別にランクで受けられる受けられないはないが、失敗した場合はペナルティーがあり冒険者ランクを下げられることもあるのだとか。他にも冒険者資格を剥奪されたり、違約金が払えなければ国やその街を収める貴族に差し出されるのだとか。貴族に差し出された場合は、投獄の後に審査を受けて労役を課されるようだ。
現在この国では奴隷制度というのはなくなっていて、犯罪をしても軽犯罪なら労役さえ済ませれば開放される。ただしよっぽどの重犯罪は、普通に死刑になるようだ。昔はそれこそ軽犯罪も重犯罪も関係なく奴隷落ちしたら開放されるなんてことはなかったようだ。奴隷落ちをすると、その殆どが鉱山送りにされて鉱毒などで体を壊すか落盤で死ぬ感じだったとか。
依頼をランクなど関係なく好き勝手に受けられるならランクになんの意味があるのと思うけど、一応依頼書には推奨ランクなど各街のギルドで独自に書かれているので目安にするためだとか。護衛依頼などはちゃんと募集要項に最低何ランクというふうに書かれているのでいくらランク外の依頼も受けられるといっても弾かれるわけだ。
他には常設依頼というものもあり、それは早いもの勝ちとか関係なく魔物なら討伐証明部位を持ってくればいい。他にも薬草などは常時買い取りをしているのでいつでも持ってきても良いとの事だった。
「あまり一度に説明してもわからないでしょうから今日はこれくらいにしておきましょうか。何かわからないことがあったら気軽に声をかけてくれていいわよ。朝の忙しい時間と夜以外は比較的私達も暇だからね」
「ありがとうございますミランダさん」
「ちなみに、この横にいるのがサーララね」
「サーララよ、みんなはサーラと呼ぶからエリーちゃんもそう呼んで良いからね」
サーラは見た目は二十歳くらいの薄茶色の髪をショートにしている女性だ。
「サーラさんですね、よろしくお願いします」
挨拶をすませた所でお昼を食べ逃している事に気がついた。この後宿を探しながらどこかで軽くお昼を買って街の散策でもしようかな? と考えた所でサーラさんから声をかけられた。
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