小5の幼馴染に告られたので振ったけど諦めてくれなかった話

四谷

第1話「私、諦めてないから」

「コウちゃん、好きです。つきあってください!」


俺、一幡コウいちはたこうは今、人生初の告白を受けている。


黒い髪に、整った顔立ち。


パーカーを着て、赤いランドセルを背負った女の子、如月エマきさらぎえまに。


俺は告られている。


「…エマ、本気?」


「本気!好きなの!」


嘘や冗談で言った訳じゃ無いのは分かる。ただ、そうあってほしいと思ってしまった。


本気で告られた時、どうやって振るのが正解なんだろうか?


冗談であれば「このこの〜笑」くらいの感覚で片付けることが出来たのだろう。まぁ相手小5だけど。


だが、本気で告られた時にどう返せば傷付けることなく振る事ができるのか。そんなの初めてだから分からないのだ。


「…エマ、まだ小学生だし、流石に速すぎると思う」


相手が小学生だからこそ使える言葉。


「じゃあ、中学生になったらかんがえてくれる?」


…なるほど。エマは物凄く頭が良い。恐らく2年後中学生になってもこの事を覚えているだろう。でも…


「あぁ。中学生になったら考えるよ」


その頃には俺のことなんか忘れてるだろうけどな。とエマに聞こえないように小さい声で呟く。


「ん?」


「エマ、そろそろ帰りな。送るから」


「うん!!」


遠回しに振られているというのに割と上機嫌なエマを家に送る。エマと別れる際、「コウちゃん、送り狼」と言いながら俺を引っ張ってきた。どこで覚えたんだその言葉…


まぁ、エマは耳も良いから、どっかのバカ中学生か高校生が使っていた言葉を拾って自分で調べたんだろう。


結局無理矢理引き剥がし、俺はクタクタになって自分の家に帰った。


飯食って、風呂入って、ベットで横になる。その時、俺はエマの事を考えていた。エマの告白は本気だった筈なのに、俺は全く本気にしていなかった。今でも後悔している。傷付けることを覚悟してエマの告白を本気で拒んでいたら、未来は変わっていたのかもしれない____






「コウ、中学生になったよ。忘れてないから」


「…俺は高校生になったぞ」


「考えて、私のこと。まだ好きだよ」


厄介だ。すぐに断らなきゃ。これを拒まなきゃ。でも、俺にはエマを傷付ける覚悟が無いのだ。


「私、あれから沢山勉強してさ、可愛くなった…と思うんだけど。どう?」


「可愛いと、思う」


「じゃあ、付き合ってくれる?」


「…考えるから、待ってて」


俺はエマを拒めない。拒む側の痛みを、俺は知ってしまったから。


人を、傷付ける痛みを知ってしまったから。


だから、やめてくれ。


そんな目で俺を見るな…

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