第20話 やってみたのよ
メアリー達をお風呂に招待する約束をしたところで、教室の扉が開かれ教師が入ってくる。
「「「おはようございます!」」」
「おはようございます。アビー、ちょっといい?」
挨拶を済ませたアビー達が席に着くと、教師はアビーを呼ぶ。
「僕?」
「ええ、あのね。アビーが話してくれたのを他の先生達と話し合ったの。そしたらね、一度やってみようかって話になったのよ」
「え?」
「だからね、アビーが話してくれた色んなことを試してみましょう。じゃあ、皆外に行きましょう」
「「「はい!」」」
教室から出て、校庭へと皆と一緒に出る。
「じゃあ、まずは徒競走ね。でも、五十メートルは長いわね。あなた達の様な小さい子達は十メートルくらいかな」
「僕、走れるよ?」
「アビー、確かにあなたは走れると思うわ。でもね、他の子はね……」
「そうだよ。アビー、私達には無理よ」
「え~そうなの?」
「「「そうよ」」」
教師が指示して、距離を測り十メートルのコースを用意する。
「じゃあ、ちょっと走ってみましょうか。じゃあ、メアリーとユーリ」
「「はい!」」
教師がスタートラインにメアリーとユーリを並べるとゴール位置ではサンディとニーナでロープを張ってもらう。
「じゃあ、先にロープを通った方が勝ちだからね。用意はいい?」
「「はい!」」
「うん、いいわ。じゃあ、行くわよ。よ~い、ドン!」
教師が合図として掛け声と共に手を叩くとメアリーとユーリが走り出し、二十メートル先のゴールを目指す。
「やったぁ~!」
「あ~負けたぁ~」
先にゴールしたのはユーリで、体一つ分の差でメアリーがゴールする。
メアリー達の元に教師がやって来る。
「走ってみてどうかな?」
「「楽しかった!」」
「そう、普段の駆けっことは違う?」
「うん、なんかね楽しかったよ」
「楽しかったのね。じゃあ、これは採用ね。じゃあ、次は……」
教師はアビーを一瞥する。
「ねえ、アビー。このリレーってのは、駆けっこのことじゃないの?」
教師はアビーが話した競技種目の中の『リレー』と書かれた箇所を指す。
「あのね、これはね四人くらいで順番に走るの」
「順番? もうちょっと教えてくれる?」
「えっと……」
アビーはその場にしゃがんで地面に楕円形のトラックを書くと各コーナーの位置に線を引くと、教師に説明する。
「なるほど。じゃあ、例えば、この木の棒をバトンとして、数人で交代しながら走るのね」
「うん、そう」
「じゃあ、先ずはコースを用意しないとね」
そんな風にアビーの提案した内容を教師に説明しながら、皆で体験していく。中には借り物競走や大玉転がしなどの道具を必要とする競技は出来なかったが、概ね好評だった。
中でも騎馬戦はかなり盛り上がり、もう少しで怪我人が出るところだったので、教師は要再検討とメモする。
「全部ではないけど、皆楽しそうね」
「「「うん、楽しかったよ!」」」
「分かったわ。じゃあ、後は組み体操と大玉転がしに障害物競走に借り物競走ね。その辺についてはまた、アビーに確認することになるかも知れないけどいいかな?」
「うん、分かった」
「じゃあ、今日はこれまでね。またね」
「「「は~い!」」」
教師は今日はこれで終わりと宣言し、アビー達は自由になる。
アビーも帰ろうとするが、メアリー達が何かを期待している目で自分を見ていることに気付く。
「えっと、何かな?」
「あのね、新しい遊びとかないかな? と思って……ない?」
「「ないかな?」」
「え~もう飽きたの?」
「飽きた訳じゃないのよ。でも、アビーなら何か新しい遊びを知っているんじゃないかな~と思ってね」
メアリーにそう言われたアビーは何かあったかなと考えるが、すぐには思い浮かばないので、メアリー達に質問してみることにした。
「ねえ、メアリー達はどんな遊びがしたいの?」
「どんなって?」
「えっとね、例えばね。たくさんの人達で遊びたいのか二,三人で遊びたいのかなんだけど」
「う~ん、じゃあたくさんで!」
「たくさんでなら、ボールがいるけど……」
そう言ってアビーは自分の物だったボールの行方を探すが、既にボールは複数あり、どれが自分のボールなのかは分からない。
「あ~お爺ちゃん達に謝らないと……」
「ごめんね。もう、どれがアビーのボールなのか分からないよね。でも、ここにもボールはあるわよ。はい」
メアリーがボールを用意しているので、ならばとアビーはメアリー達に遊び方を説明する。
「じゃあ、遊び方を教えるね」
「「「うん!」」」
「いい? まずはボールを転がすから、それを思いっ切り蹴ってね」
「「「蹴るの?」」」
「そう、蹴るの。それでね、蹴ったら、ここへ走るの」
アビーが地面に書いて説明しているのはいわゆるキックベースだった。
「へ~守るのと攻めるのに別れてするのね」
「そう。九対九でね」
「でも、そんなに広くは遊ぶ場所は取れないよ」
「それは多分、大丈夫。メアリー達が始めれば、他の人も興味を持って見るはずだから」
「あ、そうか。じゃあ、やってみるね。ありがとう、アビー」
「うん。また、新しい遊びも考えとくね」
「分かった。楽しみにしているわ。じゃあね、バイバイ!」
「「バイバイ!」」
アビーはメアリー達と別れ、家へと向かう。
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