第16話 精霊魔法はイメージなのよ

「ねえ、思ったんだけどね。僕に会いたいのなら、ディーネが家に来ればいいんじゃない?」

『……』

「ん? どうしたの?」

『行けるのなら、行ってるわよ! もう、長老! ちゃんと教えてないでしょ!』

『す、すみません』

「え? どういうこと?」

 アビーは会えなくて寂しいというディーネに対し、そんなに寂しいのなら長老達と一緒に家に来ればいいのにと、至極真っ当なことを言う。でも、そんなアビーの言葉に対し、ウンディーネは悲しそうに言う。

 そして、長老は大精霊達のことを話してなかったことに気付きウンディーネに謝罪する。


「ねえ、長老。どういうことなの?」

『ああ、アビーには伝え忘れていたのじゃが、一言で言えばウンディーネ様のような大精霊様はアビーの住む里に降りることは出来ないんじゃ』

「え、そうなの? でも、長老達は来ているでしょ?」

『ああ、そうだな。まずはそこからの説明になるのだが、そもそも大精霊様は我々と違い過ぎるのだ』

 アビーは長老にそう言われ、大精霊であるディーネと長老を見比べる。

 ポポ達や長老は大体十センチメートルくらい。それに対し、大精霊は成人と同じくらいの背丈だ。中にはノム爺の様に少し大きな子供くらい背丈のもいるらしい。

 そして、唯一の問題と言えるのが、精霊力……いわゆる精霊のオーラとも言える力が大精霊ともなると、普段は精霊の気配とか感じない人でも、分かるらしい。

「でも、池の側には来てるでしょ?」

『ああ、それはね。ちょっとした結界を作っているのよ』

 シルフィードがアビーの質問に答える。


「じゃあ、こっちに来るときもその結界を張ってれば?」

『『『……』』』

「あれ? 僕、何か変なこと言った?」

『ふふふ。アビー。結界を張るのは大変なのよ』

「フィーネ。でも、そっちは結界があるんでしょ?」

『そうね。あるにはあるんだけど、これは大昔に作られた結界なのよ』

「ん? それはどういうこと?」

『ディーネ、言ってもいいわよね?』

『私に聞かないで! でも、アビーに知られるのは確かに恥ずかしいかも』

『じゃあ、言うわね。あのね、この結界魔法は百年以上も前に私達の前の大精霊が作った結界なの』

「そうなんだ。なら、シルフィー達にも出来るんじゃないの?」

『『『……』』』

「どうしたの?」

『アビー、私達にも出来ないことがあるのよ』

 シルフィードがアビーに対し、申し訳なさそうに答える。


「そうなんだ。でも、結界なら空間魔法の延長だから、なんとなく出来そうだけど……あ!」

『アビー? どうしたの?』

『アビー、何したの?』

「ううん、なんでもないの」

 アビーが慌てているが、ウンディーネやシルフィード達からは首から上だけのアビーしか見えてないから、そのアビーの手元では何がされているのかは分からない。


『ねえ、アビー。怒らないから、言って。何をしたの?』

『そうよ、アビー。どうしたの?』

「なんでもないよ。本当になんでもないから! あ、お母さんが呼んでいる。じゃあね、ディーネ、シルフィ」

 アビーは慌てて転移ゲートを閉じる。


「ふぅ……危なかった」

『そうね、アビー』

『だって、アビーがやっちゃうからじゃない』

『ホント、アビーに出来ないことないんじゃないの』


 ポポ達が言うようにアビーはやらかしていた。そして、その場で目撃していたポポ達三人の精霊は呆れてしまっている。

「だって、出来ると思わなかったんだもん」


 そういうアビーの手元には結界魔法で閉じられた空間が作られていた。




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