第59話 流星光底、第二のダンジョン最奥へ

 「グオォォォォォォ!」


 薄暗いダンジョンの一画にて漆黒とも表現できそうな巨大な龍が長くそして太い尾を力強く振り回していた。

 それに対峙するのは龍の尾に負けないぐらいの太く長い体に多数の足を持つ、巨大な虫……通称ギガントワーム。 

 このダンジョンに訪れてきた冒険者を襲い、動けなくなった者をその大きな口で飲み込んできた。

 

 「ギシャアアアアアア!!!」


 だが、立場は逆転することになる。

 龍の尾に吹き飛ばされたギガンとワームは硬い壁に打ち付けられ、体中から紫色の液体が流れ出していた。

 動きも悪くなっているため、虫の息といったところだろう。


 黒い龍はギガントワームの前に立ちはだかり、大きな口を開ける。

 そして、あたりにはグシャリを潰したような音が響き渡っていく。


 「ようやく、調子がでてきたようだね」

 「そうね」


 黒い龍に近づく2つの男女の影。

 人の姿に見えるが、背中から生える禍々しい翼がそうでないことを物語る。


 「ここにいれば、奴らは来るだろうね」

 

 男は含み笑いをしながら黒い龍の姿を見上げている。


 「えぇ、じゃないと私の怒りが収まらないわよ」


 女は自身の肩を抑えながら答えていた。


 「それじゃのんびり待つとしようか! 時間なんて有り余っているからね!」


 男の狂ったような笑いが部屋中にこだましていった。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 ——下北沢ダンジョンが封鎖になってみたいだな

 ——ま? 何があったんだ?

 ——そうなん? 昨日もよく見る配信者が探索してたけどな

 ——そういやさっき下北沢行った時に人がたくさんいたけど、そのせいだったのかな?


 

 「うわぁ……すごい人ですね」


 小田急線の改札を出て、商店街通りに出ようとするも大勢の人でごった返していた。

 

 「あの男エルフ、何でこういう時にワープさせてくれないのかしら? しかもバレないようにダンジョンに入れだなんて」


 エンジュさんは大きくため息をつきながら、自身のきている服を眺めていた。

 私、シオン、エンジュさんの3人は色は違うけど、どうみてもオーバーサーズのフード付きパーカーを着せられていた。

 理由は先ほどエンジュさんがぼやいていた通り、封鎖されている下北沢ダンジョンに入るためだ。

 アイリスの話ではこのダンジョンに以前話していたノワールドラゴンが出現したと話していた。

 倒す手段であるドラゴンスレイヤーの魔法を使えるようになったので、討伐することになった。

 

 「それにしても何でこんな暑い日に冬用のパーカー何か着なきゃいけないんですか!」


 シオンが隣で大量の汗をかきながら大声をあげていた。


 「……暑いと思わなければ大丈夫」


 昔、暑さを我慢するために祖母に言われた言葉だけど、この状況下では無理だと悟った。


  「下北沢ダンジョンは封鎖しております! すみやかにお引き取りを!!!」


 混雑の中、更に言うのであれば暑さに我慢しながらダンジョンの前へとやってきたが、ここも人がごった返している。

 ダンジョンの入り口ではおそらくダンジョン管理局の職員だろうか、5人ほどで入り口付近に立って、中に入れさせないようにしていた。

 職員の前には大勢の探索者が怒りの声をあげている。


 「いきなり封鎖ってどういうことだよ!」

 「封鎖するのはいいけど事前に連絡しろよ! ここまでの電車賃どうしてくれんだよ! こちとら埼玉から来てんだぞ!」

 

 探索者たちはやり場のない怒りを職員たちにぶつけている。

 

 『さっきから怒号が聞こえてきたけど、現地に着いたみたいだね』


 目の前の様子を見ていると、耳元からアイリスの声が聞こえてきた。


 「……そうだけど、これどうやって入ればいいの?」


 混雑しているのもあるが、入り口に職員たちが壁のように立っている。

 入り口が広ければどうにでもなりそうだが、3人で一斉に行くのは無理がある。


 『……エンジュさん』

 「何よ?」

 『私、何も見てないから魔法使うなら今のうちだよ?』

 

 アイリスの言葉にエンジュさんは口元を曲げる。


 ダンジョン以外では武器を扱うことや魔法を使うことは禁止されている。

 私の使っている刀もダンジョン外で使えば銃刀法違反とかで逮捕されてしまう。


 「……今の言葉録音させて貰ったわよ、後で撤回すると言ってもさせないから」

 「いつの間に録音なんかしてたんですか?」


 不思議そうな顔でシオンがエンジュさんに問いかけると、エンジュさんは人差し指を口元に当てていた。

 黙ってなさいと言いたげな感じがした。


 「今から目眩しの魔法使うから、2人ともダッシュでダンジョンの中に入りなさいね」


 そう言ってエンジュさんは目を瞑り、小声で呟きだしていく。


 「光よ、フラーッシュ!!」


 エンジュさんが魔法名を唱えると同時に、私はシオンの手を取って駆け出した。

 職員や他の探索者はエンジュさんの声に反応して、彼女の方へを向きを変えてしまう。

 そして、辺りは眩い光に包まれていった。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 『無事成功したみたいね』


 ダンジョンの中に潜り込んだ私たちはすぐにポータルを使って最下層まで移動して、フードを後ろへ下げた。

 パーカーも脱ごうと思ったが、ダンジョン内が思っていた以上に冷えていたので、そのまま着ることにした。

 そして、周囲を確認しているとインカムからアイリスの声が聞こえてきた。


 「何か呑気に言ってくれるじゃない、大事な魔力を使ったんだから労いの言葉ぐらいかけてほしいものね」

 『シオちゃんならともかく、エンジュさんの魔力だったらフラッシュは使ったうちに入らないでしょ』


 アイリスは大きくため息をついていた。


 『とりあえず……ってあれ?』

 「どうしたんですか?」

 『この先に反応がある……この感じだとモンスターじゃないかも』

 「ってことは探索者かもね……ってオルハさん!?」


 探索者と聞いた私は駆け出していた。



 「だから言ったじゃないか! 今日はやめようって!」

 「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ! 早く走れ!」


 先で声が聞こえてきた、男の人が2人で言い争ってる感じの声とズルズルと何かを引きずるような音……。

 彼らの後ろに口を大きく開けた蛇のようなモンスターの姿。


 「……2人とも伏せて!」


 私は叫ぶと同時に月華を抜いて2人の後ろにいるモンスターを横薙ぐ。

 体を両断されたモンスターは大きな音を立てて倒れていったのだった。


 「……大丈夫?」


 月華を鞘に収めながら2人に問いかけると、驚いた顔でこちらを見ていた。


 「女剣客さんだ……」


 2人とも私を指さしてそう呟いていた。


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