身分の低い奴は邪魔だと祖国から追放された英雄は、北の大陸で傭兵として無双する〜祖国で内乱が起こってるから戻ってくれと言われたけどもう知らん〜

Recent(れむれむ)

プロローグ

ーーー征服歴1502年 エウロペ大陸北東部 傭兵都市ザルベルクーーー


 戦乱の絶えないエウロペ大陸。その中でも、東の大陸と陸橋で繋がる大陸北東部は、直近の数百年間を通して戦争が起こらなかった年が無いと言われるほどの激戦地だった。

 大陸北東部へ通じる街道沿いに存在するザルベルクは、そんな激戦地へ一攫千金を求めてやってくる腕自慢な傭兵達の拠点として発展した都市だった。


 そして今日もまた、戦場で大金を手に入れた傭兵達が、その儲けた金で酒を飲み、女を買う。それがこの都市の日常であり、この地に富をもたらす源泉である。


 ザルツベルクの歓楽街の一角、傭兵達の集まる酒場の1つ“金の羊亭”では今日も今日とて、戦場で大儲けをした傭兵達が盛大な酒宴を開いていた。


「「「カンパーイ!!!」」」


 強面の傭兵達が笑顔で互いの酒杯を打ち合わせ、注がれた麦酒を飲み干し、テーブルに盛られた料理を手掴みで貪り、ゲラゲラと下品に、そして楽しそうに笑い合う。


「いやぁ~やっぱり勝利の後の酒は美味えなぁ!!」

「まったくだぜ!! ま、今回ベルの活躍のお陰だな!!」

「オメェは端っこで震えてただけだからな!!」

「なんだとコノヤロー!」


 酒の入った傭兵アウトロー達が時に笑い合い、時に殴り合う。これはこの都市の酒場で毎日のように繰り広げられてきた日常だった。


「ガハハハ、おうおう飲んでるかぁ!!」

「お前ほどじゃないさガーランド団長」

「いーじゃねぇか、オメェのお陰で半年は戦場に稼ぎに行かなくても飲み食い出来るくれぇ儲けたからよぉ!! パーっと行こうぜパーっとよぉ!!」

「半年どころか一ヶ月も保たなそうだぞ?」


 団長に注がれた麦酒を飲み干しながら、と呼ばれた男は苦笑する。


「ガッハッハ、だったらまた儲けりゃ良いだけよ!!」

「作戦を考えたのも、あっちの騎士を三人生け捕りにしたのも俺だからな? 少しは感謝して節制しろ」

「そう言うんなら俺の前にデカいジョッキおいてんじゃねぇよ!?」


 ベルはニヤリとその傷だらけの顔を歪め、ガーランドを挑発するように手を叩きながら彼を煽る。


「団長の〜、ちょっといいとこ見てみたい〜♪」

「「「見てみたい〜〜♪」」」

「て、テメェ等いつの間に!? ち、チクショー!!!」


 アレクに合わせて、傭兵団の仲間たちも合いの手を入れる。

 そして小物臭い台詞を吐きながらも、強面の割に周りの空気に流されやすい、この傭兵団”赤銅の牙“団長ガーランドが、明らかに3人分はありそうな巨大なジョッキの麦酒を一気に飲み干す。


「オラッシャア!! どうじゃーー!!」

「「「ウォォォォオ!!」」」


 ジョッキを飲み干した団長に、傭兵酔っぱらい共が歓声を上げる。

 仲間達を煽ったベルも、腹を抱えて笑いながら、彼を傭兵団に誘った恩人であり、友人でもある上司を称賛する。


「流石は我らが“鬼の団長”、いい飲みっぷりだ」

「笑いながら言ってんじゃねぇ!! 次はテメェだ!!」

「良いだろう、任せておけ」


 ”ドン“と置かれた、なみなみと麦酒の注がれたジョッキを手に持ったベルは、斬傷と火傷で元の顔の面影を失った無惨な顔をニヤリと歪め、ジョッキを傾ける。

 喉を鳴らし、一口で麦酒を飲み干したベルがジョッキを逆さまにして中身が空であることを証明すると、再び歓声が上がる。


「「「ウォォォォオ!!」」」


 そして団長と、傭兵団のエースであり最強の男がやったのだからと、次々に他の傭兵達や、他の客も巻き込んだ飲み比べが始まった。


「ゥアァァ…もう飲めねぇ…」

「情けない奴だな」

「俺ぁオメェみたいにザルじゃねぇんだよ…」


 流石に飲みすぎたガーランドが机に突っ伏し、顔色一つ変えていないベルは口直しにワインを傾ける。


「とろこで団長、次の仕事はどうするんだ。確かに纏まった金は手に入ったが、こうして飲み食いしてたらあっという間に素寒貧だぞ?」

「それな〜、実はよぉ…ちょっとばかし河岸を変えようかと思ってんだよ」

「…? 傭兵都市ここを離れるのか?」

「おうよ、纏まった金も手に入ったし、行きたいやつだけになるが海を渡ろうと思ってよ」

「海を、となると南のリフニア大陸か…いや、東のユーシア大陸か?」

「おう、何でもユーシア大陸のヴィーテ=ガスク連合王国が大分きな臭くなってきたみたいでよ。あの国に攻め込むために、北の神聖ミトラリア帝国が傭兵を集めてるんだとよ!」

「…ほぉ」


 現在確認されている人類の生存圏で最大の大陸であるユーシア大陸。この大陸の中央部に存在する大国ヴィーテ=ガスク連合王国は、つい1年前まで、周辺国と血みどろの大戦を行い、昨年ようやく停戦が成立したばかりだったはずだ…と、のベルはワインを舐めながら、ガーランドの言葉を吟味する。


「神聖帝国は連合王国と同盟を結んでいたはずだが?」

「あー、なんでも連合王国で王太子と第2王女が後継者争いを始めたみたいでな。神聖帝国の皇帝は、従兄弟を助けるって名目で介入しようとしてるらしいぞ」

「…王位継承権1位が他国の助けを必要とするほど追い詰められているのか?」


 傭兵団の団長として、意外と顔が広く情報通なガーランドは、知恵も知識も人一倍あるのに人付き合いが嫌いで、その手の情報収集に疎いアレクに連合王国の現状を説明する。


「なんでもあー、ナントカの騎士だったか? ともかく連合王国のが王女様を全力で支持してるそうでな。ま、一般庶民もそれにつられて第3王女の支持にまわったんだとさ」

「平民に支持された王女と、貴族等の既得権益層から指示された王太子の対立…ということか」

「俺は教養がねえから良くわからんが、少なくとも連合王国だと第3王女とその恋人の英雄は熱烈に指示されてるみたいだぞ」

「……なるほど」


 ベルは表情を消し、グラスに残っていたワインを飲み干す。

 雰囲気の変化したベルに気づいているのかいないのか、ガーランドはベルに問いかける。


「で、どうするんだ?」

「どうするとは?」

「いや、お前は来るのかって話だよ。神聖帝国での仕事によ」

「……辞めておこう。この辺りの酒は気に入ってるんだ。もうしばらくここで適当に稼ぐとするさ」

「そーかい。お前さんがいてくれると頼りになったんだが…ま、土産は買ってきてやるよ」

「蒸留酒を頼む。あの国の名産だ」

「ヘイヘイ、せいぜいそれまで生き残れよ」


 新たに注いだ麦酒のジョッキを打ち鳴らし、ベルとガーランドは気楽な別れの挨拶を済ませる。


「稼ぐって言ってもお前、また一人でか?」

「そうだな…それなりに名前も売れたし適当な傭兵団にでも…ん、どうしたお前ら?」


 そうして話題が、ベルの次の仕事先へと移った時、騒がしかった店内が静まり返る。

 何事かと、ベルとガーランドは腰元の剣を確認しつつ、傭兵団の面子や他の客たちが注視している店の入口に目を向ける。


「へぇ…随分別嬪さんだな」

「それよりも…後ろにいる護衛二人、相当強いぞ」


 入口には、軍服に鎧を纏った金髪碧眼の美少女、そしてその護衛であろう騎士が二人、店内の全ての人間の視線を受けながら堂々と佇んでいる。

 先頭の美少女、恐らく20歳にも満たない幼気な美顔と腰まである長い髪、そしてサファイアのような青い瞳の彼女は、誰かを探すように店内を見渡し、そして目当ての人間を見つけたのか、迷わずまっすぐにその人物へ向けて歩き始める。

 普段なら不躾な態度で絡みに行くであろう柄の悪い傭兵達も、少女の神秘的な美貌と彼女の後ろに控える護衛達の威圧で、何も言えず彼女へ道を開ける。


 そして彼女は目的の人物の目の前に、すなわちの正面に仁王立し、堂々と彼へ宣言した。


「傭兵団”赤銅の牙“参謀ベル…いいえ、=、私に雇われなさい。報酬は言い値で払うわ!」

「断る」

「な…!?」


 まさかノータイムで断られるとは思わなかったのか、少女は驚愕でその美貌を歪める。


「話は終わりだ。店の迷惑だからお引き取りください」

「ま…待ちなさい。ちょっとは話を…というか私は貴方のを知っているのよ!? そのことについて聞きたくないの!?」

「聞きたくない」

「少しは考えて答えなさいよ!!」

 

 完全に少女をスルーする方向に行こうとするベルを、少女は涙目になりながら引き留めようとする。


「あーおいベル、可哀想だから話くらい聞いてやれよ…」

「いや絶対厄ネタだろこれ、嫌だぜお貴族様の道楽に巻き込まれるのは」

「ど、道楽ではない!! 真剣な話なんだ!!」

「ほらこう言ってるぞ?」

「だったらお前が聞いてやれよ」

「やだよめんどくさ…ゴホン、俺はほら、教養とかねぇからお貴族様の話にゃついていけないからよ!」

「今めんどくさいと言ったか貴様!!」

「うぇ聞こえてた!?」


 剣に手をかけて威嚇する少女から、ガーランドが逃げるように席を立ち、きちんと酒は抱えて他の団員達のいる席へ避難する。


「逃げやがった…」

「と、兎に角、私の話を聞いてく「嫌だ」」

「最後まで話させろ!!」


 取り付く島もないベルに、少女はテーブルを叩きながら抗議する。

 ベルは鬱陶しそうに温くなった麦酒を飲みながら、少女の後ろで自身を睨みつけている若い護衛と、その護衛を手で制している老齢の護衛に目を向ける。


「だったらせめて後ろの奴の殺気をどうにかしろ。酒が不味くなる」

「ム…済まない。カイル、控えろ」

「し、しかしお嬢様、こいつの態度は!」

「…礼を失しているのはこちらだ、強く咎めることはできん」

「それがわかってるのなら帰って欲しいんだが?」

「それは出来ない。私にはお前が、が必要なんだ!」

「他を探せ」

「少しは考えてこーたーえーろー!!」


 にべもなく断るアレクに、少女ははしたなく地団駄を踏み叫ぶ。


「お、お嬢様お気を確かに!!」

「お嬢様…淑女として流石にそれはいけませんぞ?」

「うぅ爺やぁ…本当にコイツじゃないとだめなの、他にもっとまともな態度の人いないの…?」


 少女はとうとう威厳のある口調すら無くし、護衛の老騎士に涙目で縋り付く。


「お気持ちなお察しいたします。ですがこれもお嬢様の、そしてお姉様であるリリア様の為です」

「姉様の…うん、わたしが頑張らないと!」

「その意気ですお嬢様!」

「お、お二人共…あの…奴が既に席を立って帰ろうとしてるんですが…?」


 机の上に”小芝居なら他所でやれ“と書き置きを残したベルが立ち去ろうとするのを、ギリギリのところで少女と護衛がインターセプトする。


「…流石にしつこくないか?」

「ゔっ…自覚はある。だが本当に大事な話なんだ。頼む、せめて話だけでも聞いて欲しい」

「な、お嬢様、こんな奴に頭など!!」


 ベルに頭を下げる少女の姿に、護衛の若い騎士が叫び声を上げる。


「…ハァ、頭を上げてくれ。高貴な身分の方に頭を下げさせたと知られたら、下手するとお偉方に殺される」

「そんなことは私がさせない」

「なら言い換える。子供がそんな悲壮な顔で頭を下げるな。まるで俺が悪人みたいに見られる」

「いやお前結構悪人…」

「こらカイル」 

「…すいません」


 主従の漫才に呆れたベルは、再び椅子に腰を下ろし、横柄な態度で少女に問いかける。


「そもそも、話を聞いてほしいのならまず名を名乗れ。氏素性すら知らん相手からの依頼等、いくら大金を積まれても承諾しかねる」

「そうか…確かにこれは失礼した」


 アレクの態度に護衛達は眉を顰めるが、少女だけはそれに納得し頷く。

 そして少女は慎ましい胸を張り、堂々と名のりを上げる。


「我が名はエリザベート・エルスディンガー、エルディンガー侯爵家の次女よ」

「そうか、俺は傭兵ベルだ。ご要件は?」

「「「態度軽すぎない!?」」」


 椅子から立ち上がることもせず、横柄に答えるベルに流石に周囲もツッコミを入れる。


「黙れ」

「「「ハイ…」」」


 ベルに睨みつけられた店内の傭兵達は震え上がり、ベルから目をそらし酒を飲み直す。


「えーっと…話してもいいの?」

「…正直これだけ失礼な態度取られてまだ話が出来るのなら、お前は大物だよ」

「そ、そうかしら!?」

「「「褒めてない褒めてない」」」


 ベルの言葉を聞いて嬉しそうにするエリザベートに、再び店内の傭兵(と護衛達)もツッコミを入れるが、再びアレクに睨まれて目をそらす。


「コホン、傭兵ベル…で今はいいのね」

「ああ、アレクサンダーとかいう名前は捨てた。そんなやつはもういない」

「…分かったわ。傭兵ベル、ある決闘に代理で出て欲しいの。報酬は言い値で。金貨だろうと土地だろうと、それこそ爵位でも、我が侯爵家の力の及ぶ範囲で全ての望みを叶えるわ」

「随分太っ腹だな」

「それだけ大事な決闘なの」


 この傭兵都市ザルツベルクを含む一帯を統治する大貴族エルスティンガー侯爵家。王権の弱いこの大陸の常で、王家ですら容易に手を出せないほどの権力と財力を誇る大貴族が、破格の条件で1傭兵を雇うなど只事ではない。

 エリザベートは真剣な目で、ベルの傷だらけの顔を見つめる。


「傭兵ベル…たった2年足らずでこの傭兵都市最強の称号を手に入れた疵貌鬼スカーフェイス。そして連合王国の戦場で無貌鬼フェイスレスと恐れられた最強の騎士。どうか私達を、いえ、私の姉を救って下さい」


 エリザベートが再び頭を下げる。大貴族の令嬢が、プライドを捨てて、単なる強いだけの傭兵に。

 ベルはそんな少女の真っ直ぐな、眩しいほどの真剣さに僅かに顔を顰める。


「…、ここで断ったら完全に悪人だな」

「いやお前今までの態度も結構…」

「カイル…」


 若い護衛は、上司である老騎士に窘められ口をつぐむ。 

 ベルは溜息をつき、椅子から立ち上がると、床に片膝をつき頭を下げる。


「謹んで、貴方の依頼に応えましょう、エリザベート嬢。ですからどうか、顔をお上げ下さい」

「ええ。ありがとう、傭兵ベル」


 エリザベートの差し出した手を、ベルは傷だらけの手で握る。

 

 こうして契約が交わされた後、ベルは改めて尋ねる。


「ところで、決闘に代理で出ることがお前の姉を救うことになるということだが…何故だ?」

「あー確かに。囚われのお嬢様を救出してくれ、とかじゃねえんだな」

 

 嵐が去ったと確認してから席に戻ってきたガーランドと共に、同じく席についたエリザベートに、ベルへの奇妙な依頼の元凶を確かめようとしたのだ。


「うーん…話せば長くなるんだけど」

「手短に」

「容赦なくない!?」


 ベルの言葉に一刀両断にされたエリザベートは再び涙目になりながら、簡潔に事情を説明する。


「私には2歳年上の姉がいるの。リリア・エルディンガー、侯爵家の長女であり、この国の王太子の婚約者…」

「「?」」

「そう…つい一週間前、王太子の誕生パーティーに出席した姉はそのパーティーの場で王太子にされたの」

「「はい?」」

よ。王太子は真実の愛に目覚めたとかで平民出の女と改めて婚約したいそうなの」

「うわぁ…そういう話本当にあるのか」

「…連合王国にいた時に向こうの娯楽小説にそういう話がいくつもあったが、たいてい碌でもない最後を迎えるぞ」

「どっちが?」

「婚約破棄された方が」

「うへぇ」


 ベルとガーランドは顔を顰めながらエリザベートの話を批評し合う。

 エリザベートも疲れたように、続きを話し出す。


「その小説とやらはともかく、姉様は当然キレた。なんの落ち度も無いのに悪女だの悪役令嬢だのと罵られ、公衆の面前で恥をかかされたのだもの」

「道理だな」

「やるなあ」

「私の姉様だもの! …ただ、王子に手袋を叩きつけ決闘を挑んだまでは良かったわ。姉様は剣も一流だし、恋愛脳に湯だった馬鹿王子なんてコテンパンに」

「お嬢様…お言葉が乱れております」

「ゴホン…ともかく、王太子程度なら姉様が処断できたのよ。でも、厄介な事に王太子と、我がエルディンガー侯爵家を良く思わない派閥が手を組んでいたようでね、王太子の決闘に代理を立てた」

「そういう事もあるだろうな」

「お貴族様だからなぁ」


 なかなか美味しい酒の肴を聞いて酒が進んだ傭兵バカ二人がしきりに頷く。


「決闘代理はこの国最強の騎士ヴァルテンブルガー卿よ」

「おい待て、なんで“月桂冠”が出てくる」

「王家から剣と月桂樹の冠を下賜された本物の最強じゃねーか!」

「だから困ってるんの!! ね、姉様が決闘の対価にわが侯爵家の全財産を出してしまって…だからこっちも何振りかまってらんないのよぉ!!」


 エリザベートが頭を抱えて泣き出す。どうやら大分ストレスが溜まっていたらしい。


「お父様は自分が出ると言い出してぎっくり腰に、嫡男の弟はまだ小さいし、お姉様は決闘に向けて山籠りを始めるし…」

「大変だったんだな…」

「なんか申し訳なくなってきたぜ…」


 ベルとガーランドは顔を見合わせ頷く。


「ま、お前なら大丈夫だろ。達者でな!」

「お前こそ、土産は忘れるなよ」


 そしてベルが、泣きながら自棄酒を飲み始めたエリザベートに手を差し出す。


「エリザベート嬢、任せてくれ。微力ながらこの傭兵ベル、此度の決闘の勝利を貴方に、そして不名誉を被った貴方の姉君に捧げましょう」

「い、いいの? だってさっきはあんなに」

「…正直同情が8割だが、貴方は家族の為に恥を捨てて俺に頭を下げた。ならば俺も、その誠意には応えさせて頂く」


 そう言ってベルは改めてエリザベートの手を握る。


「そう…じゃあ宜しくね、ベル!」

「お任せ下さい、お嬢様」


 ベルは恭しく頭を垂れる。



 ここに、かつて祖国を追放された最強の“英雄”と、後にエウロペ大陸を席巻する軍事国家エルディンガー帝国の女帝エリザベートの邂逅は果たされた。



━━━━━━━━━━━━


〜後書きのようなもの〜


本作の主人公が祖国から追放されるまでの戦いや、祖国でのヒロインとの出会いを描いた作品を現在連載中です。


『カナンの騎士列伝〜無謀鬼と白銀の戦姫〜』


R-18版はハーメルンに掲載しています。

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