第7話
ミーティアと一緒に学校に登校する賢太に、
生徒たちの視線が注がれた。
いまや、学校中の話題の中心に賢太はいた。
「あ、おはよう黒上くん!」
「おっす、黒上」
「よう! この前の勝負、ほんとすごかったな」
これまでほとんど話しかけられることなかったクラスメイトたちが、
賢太に話しかけてくる。
その態度の変えっぷりには少々面食らったものの、
決して悪い気はしなかった。
「はいはいはーい! みんなごめんね、賢太のことが
気になるのはわかるけど、わたしだって賢太と話したいんだから」
ミーティアが好奇心で集まるクラスメイトたちから
やんわりと賢太をかばう。
そのとき、遅れて教室に入ってきたひとりの女子生徒と
偶然目があった。
「あっ……」
その女子生徒――水瀬麻衣は、賢太の幼なじみだった。
だが賢太を見ると、ばつが悪そうに目をそらして自分の席についた。
「……ふーん。あの子かぁ」
ミーティアが、麻衣の背中に意味ありげな視線を送っていた。
+++
休み時間。
賢太が相変わらず四六時中くっついてこようとする
ミーティアに困りながら歩いていると、麻衣の姿が目に入った。
その隣にいるのは、高身長の男子生徒だった。
顔立ちは綺麗で、眼鏡をかけているせいか、一見すると知的な印象がある。
柿原秀夜。
真田と同じく、賢太をイジメていたグループのひとりだ。
そして――麻衣の彼氏でもある。
向こうが賢太たちに気づくと、顔を強張らせた。
「……やぁ、黒上くんじゃないか。
天星さんも、初めまして、かな」
「だれ?」
「……柿原秀夜くん、だよ。ミーティア」
「ふーん。じゃ行こっか」
ミーティアは興味なさそうに相槌を打った。
その態度に、柿原は頬をぴくりと震わせた。
「ま、待ちなよ。
黒上くん、こないだの配信は僕も見てたよ。
あんなに強かったなんて……知らなかったよ。尊敬しちゃうなぁ」
柿原はにやついた表情で、賢太に近づいてきた。
口調こそ穏やかだが、その本性の屑っぷりは、真田以上だ。
「何か、用?」
賢太が振り返ると、柿原はこびへつらうように言った。
「いやー、俺たちと黒上くんの間には、
ちょっとした誤解があるんじゃないかって思ってさ。
ほらなんていうか、これまでときどき遊びが行き過ぎちゃったりしたこともあっただろ? でもさ、べつに悪気があったわけじゃないんだ」
早口気味に弁明する柿原の後ろで、
麻衣は隠れるようにして視線をそらしている。
「遊び……っていうのは、トイレに入っているときにバケツの水をかけたこと?
それとも、僕の自転車を川に捨てたこと?
それとも……」
「い、いやいやそういうことも……あったかもしれないけど
なんていうか……身内のノリじゃないか? なぁ、麻衣」
「わ、私に振らないでよ……」
「おまえだって共犯だろーが!
……と、とにかくさ、これまでのことは水に流して、
これからは改めて仲良くなっていければって――」
そのとき、ミーティアが賢太に近づこうとする柿原を手で制した。
「おおっと、それ以上わたしの賢太に近づいちゃだめだぞ☆
なんだかイラッっとして、
うっかり痛い目に遭わせたくなっちゃうからねぇ」
「……!」
柿原は青ざめた顔の柿原を残し、賢太とミーティアは歩き出した。
ミーティアは、賢太の横を歩きながら、
覗き込むように聞いた。
「ねぇねぇ賢太、次にやっちゃうのは、
あのふたりの、どっち?」
賢太は歩きながら、口元をわずかに緩める。
「そうだね。
たぶん――どっちもかな」
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