第18話 お披露目とレッスン
お父様の執務室を出たあとは、まっすぐレッスン室へと向かった。どうしても、2日後の約束を守るためにきちんとレッスンをしなければならないからだ。
(お父様との約束はきちんと守らないと…。)
「失礼します。」
「あら、イレーヌ…お父様とのお話はもうよくて?」
「はい、お母様。」
「そう、それではバイオリンの練習を初めましょう。」
それからは、またダメ出しの嵐だった。
(ここはこうだとか言われても覚えきれないよ。)
私は言われたことを頭の中で何度も繰り返し呪文のように唱えた。そして、バイオリンの練習を終えたあとは疲れていたので、お母様にお願いして自室で夕食をとった。
「ハァー」
「疲れたおっさんのような声を出すな…。」
「だって疲れたんだもん。」
(お母様のダメ出しも私がお披露目で恥をかかないためっていうわかっちゃいるけど…。)
「今日は、いつもと違って一日レッスンだったもんな。よく頑張ったよ。」とタルカは微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれた。
「タルカもありがとう。」
「?…なんのこと?」
「お父様に言ってくれたんでしょ!」
(お父様は執務で忙しいから、私とお母様の約束は知らないはずだからね!)
「ああ、その事。報告したのは俺だけど…領主様は朝からお前の様子が変だって気づいてたぞ!」
「お父様が?」
「ああ、お前は以外と顔に出やすいから!俺だってわかるさ。」
(そんな…顔に出てる?なんかショック…)
「まぁ、でも話し合いはうまく言ったんだろ?」
「うん、でもその分レッスンを頑張らないと。」
「お披露目もあるしな!」
「そう言えば、タルカのときは何をしたの?」
(お披露目の内容は家ごとに違うって聞いたことあるし…。)
「俺のときは…剣舞だったな。」
「あの剣を持って踊るやつ?」
「ああ、兄が領内の騎士団にいるから兄に教えてもらったんだ。」
「どんな内容だったの?」
「こんな感じだ。」と言ってタルカは少し踊ってくれた。
(うわー、軽くやっているように見えてるけど難しそう…真面目なタルカのことだから何度も練習したんだろうな…。)
「他の子は?自分のやつ以外にも見るんでしょう?」
「他の子かぁ…歌のやつとか、あと楽器の演奏なんてのもいたなぁ。」
「そっか…」
「ああ、みんなしっかり練習してからお披露目に挑むからある程度のできだったぞ!中にはナタレーンの名手もいってな。」
(ナタレーンって確かピアノに似た楽器だったけ…鍵盤の色が白黒逆なんだよね。音も少し機械ぽいし…)
「そっか。どのような身分も頑張らないといけないんだね。」
「ああ、特にこのユーフティーナ領は平民でも教養として楽器とか学んでいる者もいるし、他の領地に比べ領民の教育に力をいれているから…次期領主候補のお前もしっかりと練習しないと…。」
「ええ、平民ができて領主の娘ができないなんて言われたくないしね。明日からも頑張るよ!」
「お披露目…うまくいくように応援してるよ。」
タルカは私がベットに入ったのを確認してから、部屋の明かりを消して、静かに扉をあけて部屋を出ていった。
(私は…まだ領主候補だから次期領主って言われるようにならないといけないんだ…。)
私は毛布にくるまったまま右手をぎゅっと握りしめた。
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