第8話 絶海の孤島

 獣人達の避難場所となっている国境近くのキャンプ地に戻ってきた想太達に気付いたロロ達が駆け寄って来る。

「「おかえり~」」

「「ただいま~」」

「何も変わったことはない?」

「なかったぞ」

「あ、パパさん」

 リリ達に変わったことがなかったかを確認していたら、子供達の父親であるパパから声を掛けられる。

「そう。じゃあ、これ返しとくね」

 そういって、亜空間ルームからライオを取り出すとパパに預ける。

「国王!」

「じゃ、よろしくね」

「待て! 『返す』ってのはどういうことだ? 国王は王として戻るんじゃなかったのか?」

「う~ん、言いにくいんだけど、その人『愚王』だったみたいで、返品不可って言われたんだ。だから、パパ達の方で好きに使ってやって」

「いや、でも……」

「だって、返す先がないんだもの。しょうがないでしょ。じゃ、よろしくね」

 そう言って、想太は朝香と一緒に家の中へと入っていく。


「いや、好きに使えって言われてもなぁ……」

 チラリとライオの方を見ると、体格は王としての風格は十分だが、なんというか今は単にしょげているおじさんにしか見えない。

 まあ、このままにもして置けないのでとりあえず声を掛けてみる。

「あの……国王陛下?」

「ん? ああ、ワシのことなら、もう国王ではないからな。ライオでいいぞ」

「……そうですか。では、ライオ様「様はいらん!」……ですが」

「アイツも言ってただろ。ワシは愚王で国民のことなど何も考えていなかった。それに殴り合いが強いだけの国王などいらんと言われたしな。だから、普通に『ライオ』と呼んでくれ」

「いきなりは、無理です。では、ライオさんと呼ばせてもらいます」

「ああ、好きにしたらいい」

「分かりました。では、ここにいる仲間達の元へ案内しますので。こちらへ」

「ああ、頼む」


 家の中に入ると想太と朝香はソファに身を投げ出す。

「あ~疲れたぁ~」

「お疲れ様……って、言いたいところだけど、はやいとこ候補地を決めないとダメなんじゃないの?」

「あ、そうだった。アツシ!」

『はい。こちらに……』

「うわぁ……」

 アツシが探してくれた候補地が想太の目の前に広がっている。

「あ! でもさ、大体何人なの?」

「それもそうよね。広い場所を用意しても数人だと持て余すし。逆に数千人だと足りないわよね」

『では、対象者をピックアップしてみましょう。……こちらが今現在奴隷として登録されている者達です』

「結構いるね」

『そうですね。この惑星ほし全てを対象としたので、大体数千人。億には届きませんが、五千は超えているかと』

「そうなんだ。じゃあさ、犯罪奴隷と、元クラスメイトの連中を除外して」

『そうなると、こうなりますね』

「それでも三千人はいるね。じゃあ、借金奴隷も除外で」

『……はい。これでどうでしょう』

「意外と減らなかったね。じゃあ、この人数が暮らしていける土地か島はある?」

『そうですね、極寒とか酷暑の地域を除いて……ある程度の耕作も出来て、資源や動植物も必要となると……この島でしょうか』

「あるんだ……」

 今、想太の目の前には活火山を中心にした島が表示されている。大きな湖もあり、川も流れているのも見える。


「いいじゃん! でも、なんでここは手つかずなの? こんないいところなら誰かが見付けても良さそうなのに」

「そうよね」

 アツシとアツコを介して想太と同じ物が見えている朝香も同感らしい。


『それは単純なことですよ。少し上空からの様子をお見せしましょう』

 アツシが言うと、俯瞰で見ていた島の様子が、グッと小さくなり島の周りが見えるようになる。

「あ~そういうこと」

「なるほどね。これじゃ、誰も近付こうとは思わないわね」

 想太達の視界には島の周りを囲むように大きな渦潮が七つ存在していた。


「ねえ、アツシ。今からいけそう?」

『そうですね。大丈夫ですが、あのスーツを着ていくことをお勧めします』

「あ~人はいないけど、何かはいるってこと?」

『はい。ですので、人を入れる前に多少の間引きをお願いします』

「分かりましたよ。じゃあ、朝香行こうか」

「いいわよ」


 二人は脱いだばかりの特撮ヒーロースーツに着替えるとアツシの手引きで転移する。

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