短編集003

グミ好き

プロローグ

 あなたは刹那晶せつなしょう蒐集家しゅうしゅうかだ。

 これまでに様々なものを集めて来た。


 一時はこの存在を広めるために、露店を開いたこともあるし、各街の露店商人に声を掛け、買取りの依頼をしたこともある。


 だが、まだまだ足りない。もっと、もっと欲しいと思っている。



 あなたは物語が好きだ。


 ただ、完結した作品は好まない。

 何故なら発想の余地がない場合がほとんどだからだ。


 たしかに、芸術としての完成度は高いのだろう。


 観劇にしても、小説にしても、詩吟にしても、表現の幅が広く、観客に、読者に、聴き手に多くを魅せ、想起させるものは、素晴らしいと賞賛されるだろう。


 娯楽としての完成度も高いのだろう。


 何より、どうせ時間を使うのであれば楽しいものに使いたい、と、そう思うのが常であるだろう。



 だが、あなたは自ら発想することも好きだった。


 形にはならずとも、それに追随するように、あるいは反するように。

 はたまた、その世界を広げるが如く。


 それはところ変われば二次創作や、パロディ、リスペクトと呼ばれるものであったろうが、生憎と、この世界の文化にそういったものはまだ存在しない。


 だからこそ、あなたはそれを新鮮だと感じたし、続けてみたいとも思ったのだ。



 しかし、そのためにはその種とも呼べる存在が必要だ。

 

 そのために、刹那晶が必要なのだ。


 完結しない物語が。

 あるいは物語の断片が。


 その先を作るために、あるいは、その前を想うために。

 はたまた、結晶同士を交差させるとも。



 そのために、あなたは刹那晶を求める。

 新たな、あなただけの未来や過去を紡ぎ出すためにも。



(……エピローグに続く)

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