すべては悪役メイドの思うがまま

百日紅

第1話:私はどうやら……

 どうやら私は、転生者


 どうしてこうも他人事なのか。それは、私がそう教えてもらって思い出したことだから。前世のことを。


 あー、そういえば、そんなこともあったな、的な?


 誰からそんなことを教えて貰ったのかと言われれば、それは説明に困る。

 よくあるパターンだと、女神?

 違う

 答えは、今私の目の前に広がるこのウィンドウ画面。これを説明する前に、まずは私と君たちとで住む世界が異なるとだけ伝えておく。


 この世界は、まさしくファンタジー。

 剣と魔法の世界。

 人種以外にも、エルフやドワーフなんかも存在して、魔族や魔王、勇者なんかも存在する世界。

 そんな世界には、選ばれし者だけが持つことを許されるものがある。


 スキルだ。


 この世界では5歳になる子供たちは必ずスキルの有無を確認する儀式が行われる。

 それは貴族・平民・奴隷と言った身分を問わない。

 かつて奴隷の少年が【勇者の卵】というスキルを持っていることが判明した時、その少年はその日から貴族、その中でも侯爵位を貰ったと言われている。


 基本的にスキルを持って生まれる確率は1000人中1人と聞く。

 だから、貴族の生まれでも持ってない人は持ってないし、先程の例のように奴隷の子が持ってることだってあるのだ。

 だからこそ、そんな低確率だからこそ私は、自分の可能性に何も期待などしていなかった。


 私の身分は平民。

 名前はアイリス、ただのアイリス。

 小柄だけど無限大の愛情をもって私を包み込んでくれる優しい母親と、

 大柄で村で一番たくましく、その大きな背中で私たちを守ってくれる父親。

 そんなこれ以上に無いほど恵まれた両親の一人娘が、この私である。


 そんな私は両親と共に、私たちの村を管理するここら一帯の領家、ミラーティア伯爵家が運営するミラーティア修道院に赴いた。

 そう、今日は今年で5歳になる子供たちがこの修道院でスキルの有無を調べてもらう儀式の日である。

 もちろん、私も今年で5歳だから来たのだ。


 修道院に着くと、そこには既に数十人の子供たちと、その親が並んでいた。

 大人しそうな子も当然いるけれど、大半の子供たちが行列に並ぶのに飽きて駄々をこねている。

 親たちの苦労が目に見える。


 私はと言えば、どこか周りの同年代よりも聡い自覚があった。物覚えもかなり良い方らしく、昨年から魔導書入門編を読み始めた私を見て両親は、「うちの子は天才かもしれない」と村の人たちに自慢していたほどだ。

 魔法には基本の6属性なるものがあるらしく、火・水・風・土・光・闇の全部で6種類。そこから派生して、氷、などもあるらしいけれど入門編には詳しいことは書かれていなかった。

 なのでまずは基本6属性について基本の基礎を学ぼうと昨年から頑張っている訳だけれども、どうやら適正の無い属性は全く使うことが出来ないみたい。


 まぁ、この魔法の話はまた後にするとして。


 兎に角、私と両親はそのミラーティア修道院前にできた行列の最後尾に並んだ。

 もちろん、先程自分で聡い自覚があると言ったとおり私は行列に並ぶくらいで駄々をこねたりはしない。

 大人しく、前に並ぶ同じ背丈くらいの男の子のつむじでも眺めて気長に待つことにした。


 しばらく待ち、あと五人ほどで私の番が来るという時に、周りの人たちの様子が騒がしくなる。主に大人たちの反応は目覚ましかった。

 私の両親も含めて、修道院の前に集まっていた大人たちが一斉に揃って跪く。

 当然、私も含めて子供たちは急に親がそんな動作をするものだから驚いて固まった。

 私は、とりあえず両親の真似をしようと遅れながらに跪く。

 すると、、

 一人の若い男性の兵士が声をあげた。


「ミラーティア伯爵家当主がお越しになられた!」


 その声はよくこの修道院前の広場に響いた。

 そして、私は跪いていて良かったと、自分の判断は正しかったと内心ほっとした。

 今年で5歳になる私はまだ世の中では幼い部類に入るけれど、それでも伯爵家当主は知ってるし。彼がどんな影響力を持っているかも知ってる。


 基本的に今、ここに集まっているのは平民か奴隷の子たちとその親だ。貴族は別日と決まっていて、それはもう終わっている。

 どうやら、ミラーティア伯爵家の長女も今年で5歳になるらしく先日スキル判定の儀式を受けたところ、その子は【聖道】というスキルを持っていたらしい。

 いや、そんなことは余談で、今私が何を言いたいのかと言えば、ここに集まる平民や奴隷のことなんて、ミラーティア伯爵家当主がその気になれば大人子供女男関係なく、処断されてしまうということだ。


 ただ、私も現当主の見た目は知ってても性格までは分からない。

 彼が短気ならば、今、跪いていない子どもたちの多くに明日は無い。内心でハラハラしていると、そんな私の心配をよそに現当主は低い声で言った。


「みな、楽にしていい。他の貴族にはダメだが私に対してはみな気楽にいていい。なんなら、今日はただ我が家名を使って運営している修道院の様子を見に来ただけだ。いないものとして扱ってくれていい」


 なんだろう。

 声も低くて、顔もどちらかと言えば冷めきっていて怖い印象なのに、どこか言葉の内容は優しく気さくな感じがする。

 まぁ、それでもいくら本人がそうは言ってもすぐに態度を改める人なんているはずが………


 すっくと立ったものがいた。


 その人物はあろうことか、普通に伸びまでする。なんてことだろう。その人物は私の真隣にいた。

 大柄な体から伸びをした際にバキバキと背骨が音を鳴らしている。

 そう、その人物とは、私の父親である。


 内心でアワアワしていると、そんな父の様子を見た周りの人たちもゾロゾロと立ち上がり、気楽な態度をとっていた。

 私は信じられないものを見るような目で父を見ると、何やら父が現当主に向かってサムズアップしている。

 ………知り合い?


 聞きたいことはあるけれど、スキル判定の儀式も再開したため、後で絶対に父に現当主との関係を問い詰めようと思う。


 そして、私の番が来た。


「服を脱いで背中を私に見せてください」


 修道院の中でシスターと呼ばれる女性と二人きりになった私は、一応、周囲を気にしてから上着を脱いで背中をシスターに見せる。

 シスターが私の背中に手をおいてきて、すると、たちまち、私の背が発光した。


 私は突然の出来事に再びアタフタしたけど、シスターが、


「おめでとうございます!!あなたはスキル所持者です!」


 そう言って、シスターは私に拍手した後、扉の前で待っていた私の両親を呼びに行った。

 その間に、私の目の前に突如、序盤で切り出したこのウィンドウ画面が出現した訳。


 そしてそのウィンドウ画面には、私が転生者であることと、前世の私の記憶みたいなものがショート化されてムービー映像として流れ始めた。


 それを見終わると、ウィンドウ画面には今私が思っている疑問が表示された。

 私が今一番疑問に思ってること。それは、いったいこのウィンドウ画面はなんなのか。

 そしてそれは、非常に分かりやすい形でウィンドウ画面に表示されていた。



 -----------------------------

 スキル

『ナビゲーター』

 :ランダムでスキル保持者の知りたいことを教えてくれる。スキル所持者の知的好奇心をナビでサポートする。

 -----------------------------



━━━━━━━━━━━━━━━

はじめましての方ははじめまして。

えむけー(旧みさきです!)です。

まずは初めて10万字を目標にする作品ですので、応援よろしくお願いします。

そして、異世界ファンタジーを書くのも初めてなので温かい目で見守ってくださると尚嬉しいです。

それと、本作品は百合要素も含まれますので苦手な方はご容赦を。


最後に、頑張って更新しますが無理をしないが私のポリシーなので毎日更新は保証できません。悪しからず。


本日は午後16時あたりにもう1話更新します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る