最強の兆し

 吸収。


 異空間の中で殺した場合とそれ以外の場所で殺した場合の違いを冷静に分析した結果、真っ先にその言葉が浮かんだ。


 ただ単に異空間の外で殺した場合はレベルアップの恩恵だけでステータスが上昇し、異空間内で殺した場合はレベルアップの恩恵+スキンヘッドBのステータスが上乗せされた。


 異空間に収納して殺したら敵のステータスを吸収できる?


 もしそれが可能なら、俺だけレベルアップする以外にステータスを上昇させられることになる…たとえレベルがカンストしたとしても無限に。


 俺の成長限界がなくなる…


 そんな馬鹿なとも思うが、そう考えると全ての辻褄が合う。


 レベル1からレベル3までの体力と魔力の上がり方は次の通りだ。


 体力

 80→96→262


 魔力

 200→240→310


 レベル2になった時の上昇率はどちらも、初期値+20%。


 レベル3になった時の上昇率は、途端に不規則だ。


 だが俺の推測が正しければ、この急激な上昇は以下のように説明できる。


 体力

 80→96(初期値80初期値20%16)→262(96+初期値20%16スキンヘッドBの体力値150)


 魔力

 200→240(初期値200初期値20%40)→310(240+初期値20%40スキンヘッドBの魔力値30)


 スキンヘッドBは体力が高く、魔力が少ないタイプだったのだろう。


 レベルもE級冒険者らしいくらいにしか上がっていないようで、そこまでステータスが高くない。


 ただそれでも、人一人分のステータスが自分のものになるのはえぐい上昇率だ。


 俺が仮にレベルをカンストまで上げたとしたも、そのステータスの上限は間違いなくチート陣内達より劣るだろう。


 どうやら、レベルアップの恩恵は初期値の何%増加で決まるっぽいし、初期値化け物のアイツらには普通にやっていたらステータスで勝てる見込みはなかった。


 もちろん、ステータスの高さだけで戦いの勝敗が負けるわけではないが、需要なファクターであるのは間違いない。


 まぁ、俺の場合初見殺しがあるから、今のままでも勝てる見込みはあったんだけどね。


 だがこの吸収という新たな可能性。


 この能力が真実ならば、俺は間違いなくこの世界で最強の存在に至れる。


 この能力が本物かどうかで俺の生き方が決まると言っても過言ではない。


 それなりに強くなって本物の強者には下手に出る中途半端人生か、誰彼構わず気に入らない事には突っかかる我儘人生か。


 俺の目標はもちろん後者だ。


 今のままでもそれなりの所まで強くなれるのは確定しているが、無敵か?と問われれば即答はできない。


 たとえ、相手が油断している時ならタイマン最強でも、現時点で遠距離から攻められたり、大勢で囲まれて攻撃され続けたら勝つのは厳しいだろう。


 黒廛で最初は善戦できたとしても、後半になるにつれ魔力が尽きたらおしまいだ。


 だが吸収があれば話は変わってくる。


 この能力があればレベルアップが無くても、体力・魔力の上限値を伸ばし放題で、いずれ黒廛も使い放題だ。


 そうなれば怖いものなしで、海賊王もびっくりの自由人になれる。


 だから、重要なのだ、この能力の有無が…


 やばい、期待感と不安感が織り混ざり身体がフルフルと震える。


 俺は今後の異世界生活を左右する重大な岐路に立たされ、高校受験の合格発表の百倍はドキドキしていた。


 だが確かめずにはいられない。


 残るバーコードを異空間内で抹消して、ステータスが大幅に上昇すれば、この能力はほぼ間違いないだろう。


 俺は高鳴る鼓動を何とか抑えて、静かにイメージを始める。


 バーコードの全身が消えて行くように…


[レベルアップしました]


「レベルアップしました」


 一応D級冒険者なだけあって、一気にレベルが2も上がった。


 これは、ステータスもさらに期待できるのでは?と、ステータスが出るよう念じる。


 集中して閉じていた目をゆっくりと開いて確認していく。


【 名 前 】回夜柊かいやしゅう

【 称 号 】異世界人 疎まれる者

       不撓不屈 解放者

【 種 族 】人

【 年 齢 】16

【 レベル 】3→5

【 体 力 】262/262→574/574

【 魔 力 】310/310→460/460

【 精 神 】30

【 スキル 】火耐性Lv.3 精神耐性Lv.Max

       危険察知Lv.2 気配隠蔽Lv.1

       雷耐性Lv.4 痛覚耐性Lv.Max

       孤独耐性Lv.2打撃耐性Lv.6

       恐慌耐性Lv.3演技Lv.3

【固有スキル】ボックス▼

       万物を異空間に収納する

       『黒廛』



「うぉぉぉおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「うるせぇよっ!何時だと思ってんだ、この野郎!!」


「あっ、すみません。ごめんなさい!!」


 ステータスのあまりの上がりように思わず大声を上げて、隣の部屋の人に怒鳴られてしまった。


 ごめんなさい、本当に、でもマジですごいんすよ。


 体力

 262/262→574/574


 魔力

 310/310→460/460


 体力はまたしても2倍以上で魔力も役1,5倍増し。


 おそらく内訳はこんな感じだ。


 体力

 574/574(262+初期値×232バーコードの体力値280)


 魔力

 460/460(310+初期値×280パーコードの魔力値70)


 まだ、異空間の外でレベルアップしたサンプルがスキンヘッドAしかいないから、確実とは言えないがほぼほぼ間違いないだろう。


 俺は、ボックススキルの特性でステータスの吸収ができる。


 イメージとしては外付けハードディスクみたいなものだろうか。


 俺がパソコンで、俺の能力であるボックスの中で容量を拡張できる。


 自身の器を強制的に広げるような、そんな感じ。


 初めはパッとしない能力かと思ったけど、まさかここまで化けるとはな。


 吸収のおかげで、ずっとどうしようか考えていた母さん召喚時の膨大な魔力問題も解決しそうだし、これからたくさん吸収して魔力値を拡張していけば、いずれ最強にもなれるだろ。


 俺が好き放題生きるのも時間の問題だ。


 冒険者生活初日は、なかなか疲れたけど、レベルもステータスも上がったし、新チートも発見できた。


 中々いいスタートダッシュを切れたんじゃないか?


 我ながら、今後の成長が楽しみだ。














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