第5話 “診断”
「病の祝福——“診断”。“診断”——
右目を隠した右手の甲は新たな目と言わんばかりの光を放つ。光り終わると優しく手を放す。ここで鬼気迫るような声で叫ぶ彼の右目に映ったのは五芒星の星3つであった。
この時に残りの5人は先程の説明を思い出していた。
——僕の名前は観多透。階級は准尉で病の祝福は“診断”。紋章はこのように五芒星です。持っている
「“診断”——
——もう一つの恵技は「
「病の祝福持ちは3人。一人はあの一番前にいるダイヤモンドの装飾が帽子に施されている男で、名前がマーク・アルフ。病の祝福は平たく言えばダイヤモンドの5倍の硬度を誇るバリアを作り出す能力。もう一人も一番前にいるちょび髭を生やした男。名前はクラスト・トール。こいつの病の祝福は出現させたカメラで撮影した人間の視力を問答無用で奪い去るというもの。そして最後の一人ですがそれは一番後ろ……、ん?!いない!」
言葉を詰まらせる観多が言った直後であった。急に6人のもとに津波が襲う。
「おいおい!まじかよ!?」
「ちょっとあそこを見てください」
琴奈が指さす方向には三階建てのアパート。それはいとも簡単に飲み込まれている。それが表すのは少なくとも津波は10mあるということだ。
「おい!よく見てみてください!これ水ではなく全部コーヒー豆です!」
『はぁ?』
——数秒前
2000もの兵を先導する男二人のもとに20代後半と思われる女性が一人。
「マーク中佐、クラスト中佐。ここは任せる。私はあの鼠どもを始末してくる。進軍し、さっさと任務遂行のための助力をしろ!」
『はっ!武運を!』
猛々しさはそのまま兵の鼓舞へと変化する。
「病の祝福——“
口元に沿えるように持ってこられた手の甲は豆を模したと思われる紋章から光を放っている。
「“
ぎゅっと握った掌の中には溢れに溢れるコーヒー豆。まるでマジックのように出現したそれは限度を知らない
「さぁ行こう。Let‘s teatime!」——
6人が目にしたのは大量のコーヒー豆による津波。何を言っているかわからないだろうが俺もイマイチ理解できていない。この病の祝福を理解しているのはこの小隊の中では透くらいだろう。
「皆さん気を付けてください。この病の祝福はコーヒー豆を操るというものです。操っているのはケイロ・ウラグです。先に話した二人の男はアメリカ軍の中佐に対してこちらは女少将です!」
6人全員が飛び退きながらも視線は決してコーヒー豆から離さない。崩れかけている建物は信用できるはずもなく、一足一足が命取り。本当なら悠長に話している余裕など誰にもない。
「まじか、少将かよ。それは仕方ないとしても病の祝福のもっと細かい情報をくれ、透!豆を操っているのは見ていれば何となくわかるがこの大量の豆は何だ!?」
月岡が声を荒げるのは無理もない。明らかにおかしい量だ。見える範囲だけでもこの旧市街地が一面豆に沈んでいる。
「これこそが彼女の能力の最も恐ろしいところ。コーヒー豆を無限に生み出してそれを一粒残らず自在に操る能力!それが本質です!」
「ふざけた力だな。よしわかった、俺がこいつの相手をする」
「月岡さん嬉しそうですね」
「透よ、なんか文句ある?そんなことを言うくらいならもっと足場に注意しろよ」
「いいえ」
こんな状況なのにこの二人だけは笑っている。愛しい恋人に久々に会ったような笑顔は自然と他四人を鼓舞する。
「
『はっ!』
5人のそろえた声は夜空に響き、三人の将校だけでなく2000人全兵の耳にまで届く。たった5人の声が届くことでどこまで相手の戦意が削がれるかは未知数だが先程よりかはましになること間違いない。
『 “かぐや姫”
“
病の祝福——“
“
“
こちらも同様にそろえた声は天高くまで響いていく。
「では、各々死なないように。安心しろ、俺がいる!」
よく冷える冬の2月。乾燥した雲一つない空。照らしているのはいくつもの星と堂々と輝き鎮座する月。
そんな夜、凍える世界に色気にじむ射手によって5本の矢は放たれた。
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