第5話建築確認否決理由
「しかし、基礎まで打設してあるんだから認可されたんでしょ?」
東西エステート、社長の東西男墨(とうざい なんぼく)が、両掌を結んで畏まり静かな語り口調で語り始めた。
さすが元プロ野球選手なだけあって、図体は大きい。が、声量は静かにスーパーウーハーなアンダースローだ。打者の手前で急に延びてくる生きた玉を投げていた現役を彷彿とさせていた。
「建築を請け負った工務店は建築確認が否決されたというのに基礎の建築中に倒産したんですよ。しかも不認可のログハウスを建てようとして高基礎を打設したところで力尽きたらしいですね。」経営危機により、ヤケクソで施主から建築資材の料金を貰ったうえでの計画倒産だったから地方自治体も事情を汲み取り建築中の計画変更と言う事で既申請の建築確認を受理した形にして高基礎の上に軸組みを建てたらしいですよ?」
溜息交じりの東西は言い難そうに前方で組んでいた掌の指をモジモジしながら一里山犬太(いちりやま けんた)の方を見ながら薄ら笑いを浮かべていた。
施主の年老いた母親は山小屋ではなく普通の家に住めるとあって、非常に喜んでいたそうだが施主の恐妻が買い取ったログハウス資材が勿体無いというので 三田市の大型分譲地に土地を買いさっさとログハウスを建ててしまい、年老いた母親を残してウッディータウンに移転してしまった。
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