第3話

02.

ああいう人は、きっと俺のお客様になってくれないだろうな──と、思っていたのに。


「い……いらっしゃいませ」

「………」

翌日。無事に店をオープンし、菓子の売れ行きも上々だった。

そして、そろそろ店を閉める時間──というところに例の、あの男が来たのである。


「あっ!鉄仮面の人!!」

「鉄仮面……?」

「こらっ、翼!ああっ、すみません!!うちのパティシエールが失礼を……」

翼は、少し正直すぎるところがある。

俺は慌てて、彼女の失言を詫びたのだが……。

「いや、いい……慣れている」

という返答。

慣れている……何に?


「それと、それ……あと、その菓子まで」

「っ──!は、はい!ありがとうございます!!」

すぐに選んでくれた菓子を箱に入れ、会計を済ませる。

まさか初日最後のお客様が、この男になるとは……思ってもいない展開だ。


「ん……?菓子が一つ、多いが?」

「うちのパティシエールが失礼をした、お詫びです。まだ試作品ですけど、よかったら」

「そうか……そういう事なら、頂こう」

では、また。

そう言って彼は、菓子の入った箱を片手に、店を出て行った。


──また?

また来てくれるって事なのか?


「やりましたね、佐藤さん!あの鉄仮面の人、実は佐藤さんのお菓子、気に入ってたって事ですよ!!」

「いや、まだ分からないよ……家族や恋人への、お土産で買って行ったのかもしれないし」

「でも、あの鉄仮面の人、また来てくれそうですよね!」

「うーん……あっ、あと翼。その呼び方は失礼だから、今後禁止な」

「えっ!?」

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