剣聖の贖罪<平穏を望む剣聖は異世界に転生し再び剣を学ぶことに。かつて殺した弟子が再戦を望むので決着をつけます>
ピクルス寿司
プロローグ
天正六年――その日私は一人の弟子を手にかけようとしている。
「あーくそが…ジジイになってもこんなつえーのかよ」
目の前に横たわるのは片目の少年…全身黒の甲冑に身を包み
脇腹…鎧の隙間に血が溢れている。
この少年の名は
だが致命傷ではない。応急処置を施せばまだ助かる。
皇族の人間には私から掛け合おう。
刃流は人々を束ね日ノ本の権力の象徴”皇族”を攻め滅ぼそうとした。
私はその責任を取る形となり刃流率いる反逆派の討伐を命じられた。
「おい…ジジイてめぇふざけんなよ?これでも俺を生かそうってか?」
「刃流…頼むから剣を置いてくれ、私はお前を殺したくないんだ。今ならまだ間に合う…皇族の人間は私から掛け合う」
刃流の口角から血が垂れると笑みを見せる。
「んなもん誰が頼んだ?俺が求めてるのは本気になったてめぇと心ゆくまで殺し合うことだ!」
血まみれの愛刀を杖代わりに、刃流は立ち上がる。
脇腹から滴る血が、地面を紅く染めていく。
「長年あんたと剣を交えてわかったぜ…あんたは所詮剣術だけが取り柄の人間だ。剣士の志なんざこれっぽちも持ち合わせちゃいねぇ…」
その言葉に私は言葉を失った。
確かに私は…手を抜いてしまったのは事実だ。それは紛れもない事実だ。
私は80年間、剣と共に生きてきた。
私はこれまで数多の人間と立ち会い斬り捨ててきた。
もはや敵を斬り殺すのは私にとって呼吸のようになってしまい、手にこびりついた鉄の匂いは拭うことができなかった。
もはやそこに何の感情も抱くことはなかった。
しかしここで初めて情という物が湧いてしまったのだ。何せ刃流は私の虚無の何もないひと時に一つの色をくわえてくれたのだ。
私は剣士としての心構えを無視し己の私情を優先したのだ。
「これが最後の一撃だ、しっかりと受けろよ?」
刃流は着ていた鎧を全て脱ぎ軽装になり二本の刀を携え姿勢を低く構える。
刃流の戦い方は私の真逆を行く。私の流派は防御に徹底し反撃を伺うというものだが、刃流の剣は攻撃に特化したもので天性の身体能力を生かし速く野性的な剣術が特徴だ。
刃流の刃が唸りを上げる。
相変わらず、剣筋も雑で只速いだけの一撃だ。
だがそれでも兜を容易く割ることができる。
私は一歩踏み込み、剣を閃かす。
瞬間刃流の刀が宙を舞い刃流の身体が崩れ落ちる。
「あーくそ…やっぱ勝てねぇや…全盛期はもっとバケモンだろうな」
倒れながら少年は苦笑を浮かべる。
「最初からできるならそうやっとけよ」
彼はそう言葉を紡ぎ瞳からやがて光が無くなった。
風が吹き抜け、静寂が訪れる。
刀を握る手が徐々に弱くなり刀が地面に零れ落ちる。
天正六年…その日私は一人の弟子を手にかけた。
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