第11話「無双」

敵は2人……。

片方の能力は割れてる……でも、真田景由とか言ったか、そいつの能力が厄介だな。

水無と同じ複数持ち……ワープと分身は確定してる……回復もあるか。


となれば……まずは真田の方から殺す。


そう結論づけ、5年ぶりに能力を発動させた。


「はっ……お前の能力はいらねぇなぁ……そんな炎の能力」


「……お前、本当に俺のこと何も知らないのな」


「は?お前の動きは研究したぞ」


「……なら、なぜ俺の能力が炎だと思ったんだ」


「何故って……炎しか使ってねぇからだろ」


……なぜだ?

まぁ確かに、炎をメインに使っていたが……。

……あ……炎以外使ってないか、もしや。

寧楽の時に他のを使ったが……あの時はビデオを撮ってる暇もなかったもんな。


それでかぁ……。


「まぁ、なんでもいい」


そして俺は、四肢に力を込め、地を蹴る。


刹那にも満たない速度で、真田との距離を0にし、そのまま腹部に3発、拳を入れた。


「がっ……!?」


「油断しすぎじゃねーか?」


「くそが……!」


真田は分身を5体作り出し、少し後方に下がる。


「ちっ……また分身かよ」


その間にも、能力で回復されてしまうかもしれない……ま、こういう時に炎を使うのがいいんだよ。


能力の出力を高める。

すると、バチバチと音を鳴らし、俺の周りを火の粉が舞っていた。


そして、次の瞬間……その5体の分身は全て、炎で包まれていた。


「回復の隙は与えねぇぞ」


再び地面を蹴って、接近。


「馬鹿め……」


「誰が馬鹿だって?」


正面には何か細工されていたことは容易に読めたので、背後に回り込み、今度は打撃に加えて炎を乗せる。


「……はぁ……はぁ……」


「……あぁ……クソ、堕ちたな……俺も」


「は?」


「能力の精度はガタガタ……出力もブレる。炎だって火力が足りないし、何から何までダメダメだ」


「これで堕ちたって……化け物が……」


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……圧倒だった。

正直、もっと堕ちたと思っていた。

でも、俺たちの予想を遥かに上回っていたのが、俺の弟、古賀皐月。


これが、伝説とまで言われた最強のヒーロー。

本家……仮面。


だけど、景由にはまだアレがある。

それに俺もいる……大丈夫、勝てる。


_________________



「いやー……流石というか……」


「だな……」


5年前に引退した伝説のヒーロー。

その実力は、側から見たらまるで変わってない。

しかし、1番近くで、あの人に憧れて、ヒーローになった俺らにはわかる。

明確に、堕ちていることが。


「まぁ……あれだけ衰えてても、俺たちは勝てないけどな」


「おかしいんだよな、あの人」


仮面の強いポイントは、何といってもあの頭の良さだ。


あの能力を与えられて、あれだけ使いこなせるのはきっと仮面だけ。

炎に加えて、新橋寧楽の時は氷も使っていたところを見た。

それに、能力の裏式の発見、魔力の可視化。

全部第一人者は仮面だ。


まぁ感覚的なところもあるけど……。


「裏のグッパッキーンは未だわからんよな」


「そうか?俺は結構共感したけど。まぁ俺の場合、グッグッポーンって感じだけど」


「……それ、健斗にしかわからんのよ」


仮面は、強い。

俺たち2人まとめて稽古をつけてもらったこともある。

強引にだけど……。


ま、決まってその時は瞬殺されてしまうんだけどな。

仮面の強さは底知れない。

関わった時間に比例して、そう思うようになる、そんな人間だ。


水無……といったか?

皐月は立派に戦ってるよ。

お前の仇、今までの落とし前。

全部にケリをつけるため。


よく、見ておくんだぞ、古賀皐月という、お前の父親の勇姿を。


_________________



「さて……もう殺すぞ」


「ちっ……はぁぁぁあああ!!!」


目の前に、どデカい魔力の塊のような……そんなものが突如現れた。


「これは……」


「これは……能力の源……気だ。知っているか?これは、極めて高い攻撃性能を持っているんだよ」


気……俺らの言う魔力だろう。

……なるほど、おそらく……水無にもあったように、貯蓄の能力を使って魔力を貯める。

そしてそれを一気に放出することによって大規模な魔力攻撃ができるわけね。


魔力に攻撃性能がある?

そんなもん、知らないわけがないだろう。


「……お前らの言う気ってのは、未知の分子で出来てんだよ」


「あぁ?そんなこと知ってる……研究者を舐めるな……!」


「……気ってのは、身体能力を飛躍的に向上させることもできるんだよ」


「……何だって?」


「俺はいつも、眼を強化して戦ってた」


「は?そんなことして何になるんだよ?」


「……能力を、分子レベルに干渉させるために」


「……ま、まて……まさか……!!」


瞬間、その魔力の塊は消失した。


「俺の……気の貯蓄が……」


「……お前も万策尽きたか」


そう言って、俺は裏式を解放する。


「じゃあな……もう二度と生まれてくるんじゃないぞ」


そう言い放ち、能力を発動させた。


「……かげ、よし?」


「……真田は今、何も見えず、何も感じず、動けない……そんな状態にある」


「どういう……」


「悪いな」


真田の頭を掴み、一気に引きちぎる。

脳も徹底的に潰す。

そして、燃やして灰にする。

こうすれば、能力も回せない。

もう、生き返ることもない。


「あとはお前だけだ……卯月」

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