第13話
「魔女様〜」
ある晴れた日の午前、廊下を歩いていれば後ろから自分を呼ぶ声がした。
振り返ると、例の若い兵士だった。
「おぉ、お主か。どうした」
「魔女様をお呼びにお部屋に行ったのですがいらっしゃらなかったので探しておりました」
「それは悪いことをしたな」
今日は予定を言われていなかったからてっき自由にしていいのかと思っていたのだが、そういうわけではなかったのか。
「それでどういった用件かな?」
「はい。実は国王陛下が昼食を一緒にどうかとお誘いがありまして、魔女様をご案内するよう仰せつかりました」
「なるほど。承知した」
断る理由もない。
昼頃に向かえばいいのかと問えば、すぐに首を振られる。
「今からご案内するように言われております」
「今から?まだ朝だろう?」
「僕も詳しいことは聞かされておりませんので、とりあえず向かっていただけると僕としても助かります」
「まぁ、そうだな」
「ありがとうございます。では、こちらです」
彼に着いて行き、しばらく歩くと、ある部屋の前に着いた。
そこは今まで訪れたことのない部屋で、他の部屋よりも少し大きな扉が特徴的だった。
「ここは?」
「ホールと呼ばれる場所です。昔はパーティーなどに使われていたそうです」
彼はそう言って少し強めにノックをした。
「国王陛下、ディラン様!魔女様をお連れしました!」
「入れ」
くぐもった声が中から聞こえる。
兵士は扉に手をかけてそのまま開いた。
しかし彼は中に入らないようで、扉に手をかけたまま私に目配せをして入ることを促した。
「失礼します」
とりあえず礼儀は弁えておこうと、ドレスの裾を持ち上げて礼をする。
顔を上げると、そこには国王とディランがいた。
「なんだ、お主らしかおらぬではないか。他にもいるのではないかと思ったぞ」
「……何故お前が来た」
ディランは私が来ることを知らなかったのか、驚いた顔をしてこちらを見た。
「私が誘ったのだ。構わぬだろう?」
国王は笑いながら言った。
ディランは小さくため息をついて、それ以上何も言わなかった。
「さて、まずは座ってくれ」
促されるまま席に着くと、ディランは隣に座った。
「さて、早速だが本題に入ろう」
「…私は昼食の誘いということでここにきたのだが」
「そうだが、先に話しておくべきことがある」
国王の顔は真剣そのもので、思わず背筋が伸びる。
「魔女殿には申し訳ないが、少し試験のようなものをさせてほしい」
「試験?」
何かとんでもないことを言われると思ったのだが、試験と言われて拍子抜けする。
「そんなことか。もっととんでもないことを言われるかと思ったぞ」
肩の力を抜いた私を国王とディランは心配そうに見る。
「…なんだ、そんな目をして」
「……その様子だと厳しいぞ」
ディランが眉を寄せた。
一体どんなことをさせられるというのだろうか。
よく分からないため首を傾げていれば、国王が軽く咳払いをした。
「実は今、魔女殿の助言もあり、可惜夜の魔女のために仮面パーティーを開く計画を進めている」
「ほぉ、本当に開くのか」
「あぁ、そこでだ。魔女殿にも是非そのパーティーに出席してもらいたいのだ」
その言葉に思わず固まってしまう。
私も出席するのか?
いやでも…
「あー…まぁいいか」
一瞬にして脳内に色々な考えが巡るが、一旦考えるのをやめた。
時間はあるだろうからどうとでもなるだろう。
私の反応を了承と捉えたのか、国王は続けた。
「そこで魔女殿には礼儀作法というものを身につけてもらいたい」
国王の言葉に思わず彼らを睨んでしまう。
「…それ、遠回しに私には礼儀も作法もないと言っているだろう」
「そういう意味ではない。気を悪くさせてしまったのなら申し訳ないが、魔女殿の言葉は古めかしいから現代風のものに直してもらいたいのだ」
その言葉に思わずため息をついてしまう。
「悪いが、私は使いやすいからこの言葉を使っているだけで現代に適応した礼儀作法も一通りできるぞ。なんならやってみせるか?」
私の言葉に国王は大きく頷く。
「それが試験だ。ここに入ってくる所から挨拶、食事、できればダンスまで見たい」
「随分舐められたものだな。分かった、やろうではないか」
私が挑戦的に笑えば国王は満足そうに微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます