グミ男とカニバリズム

 飛行機に乗っている。二時間くらい経過しただろうか。乗客達は雑誌を読んだり、イヤホンで音楽を聴いていたりしていて、落ち着いた様子である。


「ねえ私、実はグミなんです。」


 突然隣の男が話しかけてきた。60歳ぐらいだろうか。頬はこけて髪も少し薄くなっていた。


「そうなんですか。」


 ガブッ。


 グミだということなので、肩のあたりに噛み付いてみた。ほんとにグミだ。人間味で、美味しい。男の肩のあたりは少しかけた。


「人間の味がしますね。」


 私は言った。するとグミ男は言った。


「人間の味だとわかったということは、あなたは今までに人間を食べたことがあるということだ。つまり、あなたは食人鬼ですね。」


 あらまぁ、ばれてしまった。実際私は食人鬼だった。今までに食べた人間の数は約70億。おかげでこの飛行機に乗っている人間が人間の全てになっていた。グミ男は頭がいいなあ、私は感心した。


「みなさん、ここに食人鬼がいますよ。」


 彼は周りの人間に言いふらした。


 ああ、もうおしまいだ。飛行機の中なので逃げることはできない。私はおとなしく人間達に拘束された。飛行機、着陸。


 その後私は投獄され、グミ男は人類を救った終身名誉グミとなった。グミ男はとても嬉しそうだった。しかし、グミ男はグミなので、みんなに食べられてしまった。その結果みな人間の味を知ってしまい、病みつきになった。そして、お互いに食べ始めた。


 投獄されていた私だけ生き残った。

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