ぶおおおおん!!
ぶおおおおん!!ぶおおおおん!!
バスが走っている。暴走している。エンジンを唸らしてめちゃくちゃしている。市街地なのに。大変だ。タクシーの運転手は思ったが、俺はタクシーの運転手であってバスの運転手ではないのである、とタクシーの運転手は安心していたのだが、タクシーも暴走し始めてしまい、がっかりした。
がっかり、ががーん!!
こんなにがっかりしたのは、幼馴染の美穂ちゃんに振られちゃった時以来だよ〜ん♡
ぶおおん!!ぶおおん!!
暴走するタクシーの中で一人肩を落とす運転手。こんなのもう、どこに行くのかわからんよ。わかりません。わかりませんよ。ああ、どうせならハリウッド行ってみたいなハリウッド。ハリウッドに行ってくれるならいいけどさ。ハリウッド。ハリウッドでさ、モデルガン持ってバキュンバキュン、バキュンバキュンなんて出来たらいいな、ははははは。美穂ちゃんの心もバキュンバキュンしたいわよ〜ん♡
ぶおおん、ぶおおん、ぶおおおおん
タクシーは暴走している。街中を縦横無尽に疾走している。それはまるで荒れ狂う牛のようなのである。もうブレーキもハンドルも効かないのである。ディズニーランドの乗り物に乗せられた客のように、乗り物の思うがままなのだ。暴走ディズニーランドの乗り物なのだ。
キキーッ!!キキーッ!!ぶおおおん!!ぶおおおん!!ぶおおおおん!!
「タクシー、俺はお前の思うがままだ。」
私はタクシーに告げた。
ぶおおん、ぶおおおおん
ああ、自動販売機にぶつかるー!!た、大変だー!!
キキーッ!!ストップ!!
「こんにちは。」
タクシーは自動販売機に挨拶したが、無視された。
ぶおおおん!!ぶおおおん!!ぶおおおおん!!
さっきよりも激しくなっている〜っ!!きゃーっ!!自動販売機め〜っ!!
ぶおおおん!!ぶおおおん!!ぶおおおおん!!
あっちではバスが暴走している。バスの運転手さんはもう何もかも諦めてしまったようで、ゲラゲラ、ゲラゲラ笑っている。筋骨隆々マッチョマン。ああ、もしかしたらバスの運転手さんもハリウッドで銃を打つ妄想なんかしてるんじゃないだろうか。趣味が一緒だなあ。銃の力でブルースリーを射殺したいぜ。または火炎放射器で焼殺したいぜ。一緒に焼き鳥を食べている最中に、そうだな、砂肝を食べているあたりの時、徐に、「この焼き鳥はお前の10分後の姿なのだ。」と衝撃の告白をして火炎放射器をぶわーーーーーーーーっ!!と浴びせてしまいたいぜ。きっとブルースリーは「あちちちちちちちっ。」と言いながら焼け死んでいくことだろう。可哀想なブルースリー、うおおおおおんっ!!うおおおおんっ!!
ぶおおおおおんっ!!
ん、なんかタクシー、方向転換、バスの方を向いたぞ。なんだなんだ。おっ、バスもこっちを向いたようだ。おおおおお、嫌な予感がするぞ。嫌な予感は当たるんだよ。美穂ちゃんに振られた時も嫌な予感がしてたんだ。ああそうだ、お母さんが死ぬような気がしてたんだ。お母さんは死ななかったけど。代わりにオッカさん(その時読んでいた漫画『頑張れ!!オッカさん!!の主人公)が死んだ(主人公が死んだ。だめじゃないか。もうこの漫画終わったも同然じゃないか。と思っていたがオッカさんは巨人になって蘇り、『頑張れ!!オッカさん!!』はその後35年連載が続いた。最終的にオッカさんは岡さんになり、子供をたくさん産んだ。)。
ぶおおおおん!!
ああ、バスの頭(バスヘッド)がどんどん近づいてくる。
ぶおおおおおん!!
ああ、ぶつかるぶつかる。死ぬのか俺は。こんなところで。ハリウッド、行ってみたかったなあ.......。ハリウッド....ハリウッド.....。
ゴチーーンッ!!
意識が遠のく。ひゅるひゅるひゅるひゅる。ひゅるひゅるひゅるひゅる。ひゅるひゅるひゅるひゅる。ひゅるひゅるひゅるひゅる。ひゅるひゅるひゅるひゅる。ひゅるひゅるひゅるひゅる。
(『ひゅるひゅるひゅるひゅる』←まるでなにかの花のようであり、どことなく幾何学ぽさも感じる、美しい文字だ。)
気がつくと俺は、気がついた時にいたところにいた。
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
これは俺の声じゃない。ふと隣を見ると、バスの運転手さんがいた。ああ、バスの運転手さんも一緒だったのか。
「ああ、こんにちは。あの、バスの運転手さんですよね。」
「そうだぜ。俺はバスの運転手さんだ。よくわかったな。ところで、どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
ん?俺に対して『どこだここはっ!!』て質問してるのか?なんか普通そうならないのではないですか?個人に質問する時二回繰り返すかな?なんか違うよね。ん??取り敢えず真似してみようかな。
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
なんだか楽しくなってきちゃった♡
「どこだここはっ♡どこだここはっ♡」
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
「どこだここはっ♡どこだここはっ♡」
「どこだここはっ!!どこだここはっ!!」
「ここは私の脳によって作られた異次元空間。『どこだここは』である。」
声がした。重く、深い、腹にずしんと響くような声。『魔王だ。』直感担当大臣が言った。ひぃ怖い〜っ!!
「誰だ貴様はっ!!」
バスの運転手さんが言った。
「誰だ貴様はっ!!」
「誰だ貴様はっ♡」
「誰だ貴様はっ!!」
「誰だ貴様はっ♡」
「私は大いなる力だ。」
大いなる力さん(自称)が言いました。
「貴様たちをここに連れてきたのは私だ。そう、全ては私の仕業。何から何まで、私の仕業。」
「おっ、俺のバスを暴走させたのはおっ、お前の仕業かっ!!よっ、よくもおっ!!」
バスの運転手さんは頭に血が登っているようであった。そんなことより、直感担当大臣間違ってたんじゃないか。『魔王だ』と言っていたじゃないか。おいおいおい、『大いなる力』さんだそうだぞ。これは説明会見を開くべきなんじゃあないかい。説明によっちゃあクビだぞ。総理権限でクビだぞ。おい、出てこい直感担当大臣。
「直感担当大臣君。説明したまえ。」
「ええ、私、直感担当大臣の記者会見を始めさせて頂きたいと思います。ええと、先程の『魔王だ。』という発言が間違っていたということですが....。」
(「そうだそうだ。お前のバスを暴走させたのは私なのだ。この私なのだ。ふっふっふっ。はーっはっはっはーっ!!」「なんでだ。なんでそんなことをしたんだ。一体何の恨みがあってくそっ!!俺のバスをめちゃくちゃにしやがって!!」)
「まず第一にですね。まだ間違っていたと決まったわけではないのであります。『大いなる力』さんということですが、あくまでも自称であります。本当は魔王なのに彼が大いなる力と自称している可能性があります。そもそもですね、魔王というのは固有名詞ではありません。魔王というのは概念なんです。」
(「人間はこの美しい星、地球をめちゃくちゃにしやがった。二酸化炭素を排出しまくって空気を汚し、森林をバッサバッサ切り倒した。そうだろう。そうだろう。だからその復讐にやってきたのだ。地球をめちゃくちゃにした報いなのだ。自業自得なのだ。」)
「そして第二にですね。私は大臣は大臣でも直感担当大臣なのですよ。直感は外れることがあります。ですから間違って当然なのです。分析担当大臣が間違ったらまあそれなりに問題があるかもしれませんがね。私は直感担当大臣であるからにして間違っても責任を問われる立場にないのですよ。はい、以上で私からの説明は終わります。質問などがありましたらよろしくお願いします。」
(「くうっ、そんなわけがあったのか。じゃあどうしてここに呼んだのだ。私達を呼んだのだ。」「ふっふっふっ。人間にもチャンスをやろうと思ってね。10年後。10年後にまた私はやってくる。それまでに、それまでに君達がこの地球を元通りの美しい地球に戻していたら私は人類を滅ぼすことはないだろう。もし今のままだったら....私は容赦なしない。私の力なら貴様らなど赤子の手を捻るように滅ぼすことができてしまうのだからな。」)
「はい。質問があります。」
「はい。どうぞ。」
「ということはですね。要するに直感担当大臣というのは、適当に空言を言うことを担当しているということでよろしいでしょうか?何なのでしょう?参考してはいけないということですね。」
「いやいや、まあ、まあそうなんですけど。直感と言うものは意外と当たったりもするものでして。重要だったりするんです。」
(「貴様たち二人が選ばれたのは偶然だ。偶然目に入った二人だった。人間の運命は貴様たち二人に握られている。どれだけの人間にこの緊急事態を信じさせることができるのか。10年後までにどれだけ人間の意識を改革することができるのか。全ては貴様たち二人の肩にかかっているのだ。」「わ、わかりました。やります。俺、やってやります。頑張って地球を綺麗にします。あのタクシー運転手と協力して綺麗な地球を作り、人類を存続させてやります。」)
「何ですかその説明は。曖昧すぎますよ。もう存在意義がないと言っているようなものです。はい。そうです。総理権限でクビとかいう話ではありません。ポストごと無くします。直感担当大臣という役職ごと無くします。」
「うぅ、そんなあ。あ、あのですねえ、直感担当大臣というポストを作ったのはあなたなのですよ。このポストを消すということはですねえ、つまりあなたがこのポストを作った責任も問われることにもなりますよ。いいんですかそれで?いいんですか?」
「うぅ、そうかあ。じゃあ私もクビだあ。」
「うぅ、そんなあ。」
「うぅ、うぅ。」
「うぅ、うぅ。」
二人は三日三晩泣き続けました。二人の流した涙は地球に降り注ぎ、あらゆるものを浄化し、森林は豊かにもくもくと育っていったのでした。
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