第35話「だらだらライン!」
土曜の夕方16時。
あたしは寮の自室でベッドに寝転がりながらスマホをいじっていた。
あたしのベッドの向かい側では、七瀬が席に座ってパソコンを触っている。
なんでも文芸部で提出する作品の締め切りが近いらしい。
ちなみに今日はあたしも久しぶりに園芸部の活動があった。
テスト期間中はハナチャンが花壇に水を上げてくれていた。
種はあたしの知らぬうちに芽を出していて、テスト期間さえ重ならなけりゃ芽が出た感動を味わえていたのにな、と少し後悔した。
だから花が咲く日は絶対に見てやると決意している。
園芸部は相変わらず入部希望が現れない。
まぁ、あたし的にはそれでも良いと思っている。
ハナチャンと二人きりも楽しいしな。
突如。
パソコンで小説を書いている七瀬が、頭を抱えながら声を出し始めた。
「うぅ……どうしよぉ……くっ……ダメだ……こんなんじゃダメだ!!!!!! こんなんじゃわたしは百合の神に顔向けができない!! ただキスしてえっちするだけの百合なんて……大好きだけど!!!!! もっとわたしは心の繋がりがある百合が好きなの……!! でも気がつけばえっちシーンばかり描いている自分がいる!!!! くぅ……わたしは……百合的変態淑女だッ!!!!!!」
七瀬の動乱する声が聞こえるが、こいつが訳わからん事を言うのはいつもの事なのでもはや反応もしてやらん。
声をかけたが最後、やっかいな話に巻き込まれるだけだ。
ベッドに横になりながらYouTubeを見ているとラインが届いた。
それは個別ライン。
誰だろうと思って開くと。
サチかよ……。
どうせまた意味のないラインだな。
メッセージを送ってきたのは後輩の須藤サチだった。
こいつは一番仲がいい後輩だろうか。
いやあいつあたしの事を舐めてる節がある……。
この間の名言の件だって許してねぇんだからな!!
その状況下で普通にライン飛ばしてくるとは……まぁそういう細かい事を気にしないとこが好きなんだが。
あたしはそのメッセージを確認する。
『サチ:ミズキ姐さん! 見てください!』
『画像添付:ブルドッグの可愛い画像』
『ミズキ:わんちゃん』
『ミズキ:かわいい』
『サチ:これはどうっすか!?』
『画像添付:トイプードルの可愛い画像』
『ミズキ:ぷーどる!!』
『ミズキ:いちばんすき』
『サチ:じゃあじゃあこれはどうっすか!?』
『画像添付:明るいオレンジ色のショートカットに黒い猫耳パーカーを着た中学生の写真』
最後に送られてきたのはサチの自撮り写真だった。
手を猫のポーズにしたぶりっ子女子中学生のふざけた写真。
あたしは既読無視した。
ライン開いたついでだ。
カナに連絡しとこうか。
『ミズキ:今日いけるか?』
3分ほどして返信が来る。
『カナ:٩( ᐛ )و』
『ミズキ:9時にスーパー前でどうだ?』
『カナ:(◞‸◟)』
『ミズキ:10時にするか?』
『カナ:٩(^‿^)۶』
今日は夜10時からカナと会う事になった。
スーパー前というのは、地元にあるスーパーマーケット【サンコー】の前という意味だ。
あたしらのグループの奴は、スーパー前に集合と言えば必ずそこに集まる。
ちなみに毎週土曜日にあたしは実家に帰っている。
18時になると送迎バスが寮に来て、バスで1時間以内の場所までは送ってくれるのだ。
とりあえずカナと会う約束はOKっと。
それと……あ、琴音からもライン入ってんじゃん。
それはつい30分前に届いていたもの。
『ことね:ミズキさんの好きなアルファベットは何ですか?』
そんな質問が。
あいつ……ラインを交換した日から欠かさず、毎日絶対になんらかの質問送ってくるな。
基本的に送ってくる質問は1〜2個だ。
でも中にはそれを知ってどうすんだよ的な質問もある。
今回のも割とそれだが。
あたしはラインを返す。
『ミズキ:大文字のL』
ほんとなんだこのやり取り。
まぁ、でもなんかこいつとのラインは愛おしいんだよな。
これからも毎日質問送ってくれりゃなんか嬉しいな。
いやもうそんなに聞くこともねぇと思うけど。
とりあえず返信したいのはやり終えたな。
18時までYouTubeで『東海オンエア』でも見るか。
ラインを閉じかけた時。
後輩のサチから追加のラインが届いた。
『サチ:ウチの美少女自撮りを無視するなんてひどいっすよ!!
『サチ:これでも喰らえっす!!!』
『画像添付:道端に落ちたうんこの写真』
『画像添付:道端に落ちたうんこの写真』
『画像添付:道端に落ちたうんこの写真』
『スタンプ:オナラをこいている熊のキャラ』
『ミズキ:サチ。お前今日9時にスーパー前な』
『サチ:調子に乗ってすみませんでした』
今日の夜。
カナに会う前にサチへの制裁が決定した。
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