第3話

第??話


一高ワン子が出て行った保健室で、俺は呆然としていた。


……覚えていない?


俺が?何を?


頭にぐるぐると疑問が回る。


彼女は何を言いたかったのだろう。


身じろぎをした瞬間、またポケットから乾いた音がした。


……何の音だ?


何かの紙のような音だった。


朝もしていたから、ずっとポケットに入りっぱなしなのだろうけれど。


俺はポケットに手を突っ込む。


そこから出した手が握っていたのは、封筒だった。


中に何か固いものが入っている、白い封筒が。


「何だよ、これ……」


こんなもの入れた覚えがない。


震える手で、俺は封を開ける。


中に入っていたものを見て、俺は再び目を見開いた。


と、


鍵は何処のものだか分からないが、随分小さい。


問題は、紙切れだ。








「今、何回目?」









……紙にはそう書かれていた。


細く繊細で、ひどく整ったその字を俺は知っている。


誰のものでもない、俺の姉の字だった。


「どう、して……」


最近姉とは会っていない。


渡された覚えも無い。


それなのに、これはなんなんだ。


何回目だなんて、何のことだ?


まるで、まるで___



「……っ!」


ズキン、と頭痛が走る。


頭が痛い。


頭が割られるように痛い。

……割られる?


あぁ。


そうだ、俺は。


俺は死んだんだった。


どうして忘れていたんだろう。


さっきの会話だって、一高ワン子と一度かわしたものの再放送じゃなかったか。


金花沙夜子なんていなくて、幻想で、それは全て藤先生が作ったものだったんだ。


……先輩は、覚えていないのだね。


一高ワン子は、それを言っていたんだ。

彼女は、前回の全てを覚えているんだ。


多分彼女は死んでいないのだから。


「……一高ワン子が危ない」


放課後、彼女は部室に行く。


そして藤先生に会うんだ。


彼が前回のことを覚えているか覚えていないかわからない。


……だけど、もし覚えていたら?


一高ワン子に何をするか分からない。

今度殺されるのは、彼女かもしれない。


「止めないと……」


封筒を握りしめて、俺は駆け出した。

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