第17話 第3の盗撮

それから数日経ったある日の夜。俺はいつものようにFPSのゲームをきっかり1時間プレイし、明日の予習と宿題を始めた。また数学がわからない。数学の問題がわからない時の絶望感は異常だ。授業を聞いても何も頭に入ってこない感覚は数学でしか味わえない。良いことではないが……さてどうしたものか。


ブー。ブー。ブー。スマホが震える。通知欄を見ると、また前田だ。ちょうどいいタイミングだ、数学について教えてもらおう。俺はそう思いながら電話に出る。

「お疲れ。どうした?」

「ごめん、今大丈夫だった?」

「ああ、大丈夫だ。ちょっと数学で困ってた所だったよ」

「あはは、また同じ状況だね。後で教えてあげようか? ごめんね、それより先にちょっと掲示板見てくれる?」

 俺は学校掲示板を確認する。すると、数時間前の投稿で、前田の写真が投稿されているではないか。今度は廊下を歩いている時の写真のようだ。高さ的にはほとんど水平か? 気になるのは逆さまに投稿されていることだ。


「ああ…… 写真が掲載されているな。移動中の写真のようだが、いつの写真かわかるか?」

「いや、わからないや。夏服だから最近だとは思うけど…… 何かの移動授業の時間かなあ? でも、もっととんでもない写真かなと思ったらそうでもなかったね。ちょっと安心したよ」

 確かに掲示板にはもっと過激な写真を投稿すると予告した投稿があった。あれを書き込んだのは犯人じゃなかったのか? 掲示板にも過激な写真を期待していたという投稿が散見される。


「写真が逆さまなのも気になるな。スマホを逆向きにして撮影した可能性があるな」

「そうだけど流石にそんな変な構えでスマホ持ってたら私気づくよ? そんなスマホの持ち方普段しなくない?」

 確かにそうだな。スマホを逆向きにして持ってみてすぐに気づく。明らかに盗撮しています、という様子になってしまう。

「確かにそうだな」


「まあ、気味が悪いのは変わりないけどさ。ただ、変な写真じゃなくて安心したって感じかな。また何か気づいたことあったら教えてね」

「ああ、後で改めてしっかり確認してみるよ。何かわかることがあるかもしれない」

「ちょっと恥ずかしいから、私のことはあんまりじっくり見ないでね」

「あ、ああ……」


「とりあえず数学どこわからないの? 先生が教えてあげようではないか」

「助かります先生。教科書の111pなんですけど……」

 写真は気になるが、今は数学の方が大事だ。本人も落ち着いているし、一旦後回しにして数学を教えてもらう。


「…… という感じ。どう? わかった?」

「非常に理解できました。ありがとうございます。前田は凄いな」

「そうかな、よかった。他の人に教えるのは結構好きなんだ。教えると自分の中でも整理されてより理解が深まる気がするんだよね」

「そういうものなのか。俺にはわからない世界だ」


「そうだよ。物理とか化学とか理系の科目は全般得意だからわからなかったら言ってね!」

「おお、助かる」

 これで遂に俺も理系科目が得意になるか……!



「ねえ、今井くんって趣味とかある? 水泳以外で」

「そうだな…… ゲームだな。FPSってわかるか? そういうゲームをよくしているんだ」

「ああ、知ってるよ。銃で撃ち合うゲームだよね? お兄ちゃんがやってるのを見たことある。とりあえず暴れまくる感じが気持ちいいの?」

「そうそう。それもあるし、頭を使って隠れたり、遠くから攻撃したりと色々考えながらするのも楽しいんだ」

「へえ。私もやってみようかな」

「おう、やる時は言ってくれ。一緒に対戦できるからな」


「ちなみに前田はどんな趣味があるんだ?」

「私は韓国ドラマを観ることかなあ。ストーリーが面白くてついつい見ちゃうんだよね。有名だけどイカゲームはすごい良かったよ。男の子でも面白く観れると思う。」

「ああ、名前は聞いたことあるな。そんなに面白いのか。一回観てみようかな」

「うん、おすすめ。他にも……」


「あ、もうこんな時間だね。遅くまでごめんね」

「数学もお陰で進んだし、大丈夫だ。助かった。あ、そういえば盗撮の件だが、掲示板で過激な写真を期待している奴らがいるのが気になってな。ちょっと気をつけたほうがいいかもな。スカートとか」

「あーそうなんだ。そうだね、気をつける。買ったけど着たことがないスラックスで行ってみようかな?」

この高校には、女子でもスカートではなくスラックスを履くという選択肢がある。実際はあまり利用者はいないが…… 前田なら問題なく似合うだろう。

「いいんじゃないか? 前田はスタイルもいいし、似合いそうだ」

「そう? ありがと。じゃあおやすみなさい、また明日」

「ああ、おやすみ」

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