木刀で床を突いて砂波羅リコが凄む

 木刀で床を突いて砂波羅リコが凄む。

「てめえ、なんでウチに来ねえ、入学式のあとも誘ったぞ」

 しつこい人だ。薫はムッとして、

「――何度も言ってます。運動部は無理です」

「なんの理由があるってんだ。五〇メートル五秒三で体を使わねえとかバカかてめえ」

「……」

「黙秘だと?」

 もちろん男バレを考えれば絶対入部できない。

「いい根性だなオイ。喧嘩してえのかオイ。何か言えよオイ」

 オラオラと薫を覗き込んできて、

「――あ。おまえ、女好きだろ?」

「え?」

「人間ってのは猫とおんなじで、興味あるものを目で追っかけるし瞳孔も大きくなる。人の目を読むのはサイクルサッカーの基本テクだ。で、明らかにおまえはアタシを『そういう目』で見てたな? ごまかしても無駄だぜ?」

「……!?」

 わりと図星だった。手足が長くて大人っぽくて正直老け顔でとっくにOL十五年目っぽいリコは薫の理想に近かった。なんなら彼は熟女フェチだ。女性は三十代から甘くジューシーな味わいになってきて四、五十代にもなれば完熟甘露が小じわに染み込んだパッションフルーツが爆誕するのだと彼は信じていた。

「なぁるほど! じゃあ勧誘方法を変えなきゃな」

 砂波羅リコが敵意をやめてニヤニヤし、薫の耳にささやく。

「うちの部なら……女抱き放題だぜ?」

「……はあっ!?」

「アタシに惚れてる部員だらけだからアタシが命令すりゃ薫にも抱かれるさ。練習しながら恋愛三昧、いいだろ?」

「そんなの出来ませんっ」

「好き放題さしてやる。せっかくの女子校、楽しめよ」

「そんな悪いこと……」

「自由恋愛の何が悪いんだい?」

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