不幸を背負う者4
「カレン、大丈夫か!」
「正直結構キツかった!」
武器で防御するならともかく盾で防御に回られたら実力に差があっても倒すのはなかなか難しい。
体力や筋力が高く、スキルによっても耐久力が高いカレンが本気で防御に徹したらシタチュフリスアでも攻めきれていなかった。
苛立つように盾を切りつけるシタチュフリスアに圭が横から襲いかかった。
体力が高いカレンですら大量の汗をかいて息を切らしている。
攻撃の一つ一つが重たくてほんのわずかな隙でも狙ってくるので防御に徹していてもかなり辛かった。
圭、波瑠、フィーネで青いシタチュフリスアに攻撃を仕掛け、カレンは息を整えるために一度下がる。
赤いシタチュフリスアの方はどうなったのだとカレンが視線を向けるとアルデバロンが対等以上に戦っていた。
ちょっと目を話した隙に何があったのだとカレンは治療してくれている薫のことを見る。
「治したら手伝ってくれるようです。そもそもシタチュ……なんたらとあの鎧の人は敵対していたので回復したから戦い始めただけかもしれません」
薫の治療によって体の疲労が軽減されていく。
「ともかく今は味方なんだな」
「そうですね」
「カレン、早く戻ってやってくれ」
「……チッ、厳しい相手だな」
圭たち三人が戦い、夜滝が魔法でフォローしているのにも関わらずシタチュフリスアに押されている。
ゆっくり休む暇もないとカレンは苦々しく思う。
「シャリンはありがたいな」
見ると王たるシタチュフリスアとシャリンはいい勝負をしている。
シャリンの方がパワーはありそうだがシタチュフリスアは上手くパワーをいなしつつ応戦している。
シャリンがいなかったらアルデバロンが味方になってくれても二体を相手にしなければならずかなり厳しいところだった。
「よし! いくぜ!」
息も整った。
これ以上休むと体が冷えてきてしまうとカレンは動き出す。
「おりゃああああっ!」
盾を構えてカレンが青いシタチュフリスアに突撃する。
カレンに気づいた青いシタチュフリスアが振り返りながら拳を突き出す。
青いシタチュフリスアの拳が盾に当たって鈍い音が響く。
カレンは魔力をみなぎらせ体に力を入れる。
押し切るつもりだった。
カレンとしては盾で体当たりをかますつもりだったのだが、薫の支援も受けて全身の力を使った体当たりを拳一つで止められてしまった。
けれども青いシタチュフリスアも止まった。
「くらえ!」
「やあっ!」
カレンも押し返されずに堪えることができた。
青いシタチュフリスアの動きが止まった隙をついて圭と波瑠が切りかかった。
圭の剣は青いシタチュフリスアの鱗を砕き、波瑠のナイフは鱗ごと浅く背中を切り裂いた。
「フィーネ、パワーモード!」
フィーネは考えた。
より力を効率良く扱うためにどうしたらいいのか。
シャリンという大きなライバルも出現してもっと圭の力になりたいと思ったフィーネはもっと強くなれる方法を考えて、シャリンを見て思いついた。
いつもフィーネは人型になって戦うのだけどその体型は高校生ぐらい、普通の大人ぐらいの大きさである。
力を存分に振るうためにはもっと大きくなればいいかもしれないと考えて試してみた時もあるのだけど、デカいと可愛くないという理由でフィーネは普段の人型より大きくなることはしなかった。
しかしシャリンが現れてフィーネの考えは変わった。
小さくともパワフルなシャリンを見て小さくなればいいと考えた。
力を圧縮するようにしながらも人型の器用な戦い方を実現させればいい。
「ピピー!」
シャリンと同じような子供体型になったフィーネが大鎌を振り下ろす。
体を小さくしたフィーネは人の体の器用な戦いを実現させながらも筋力値がAを実現させていた。
その分ちょっと体力値や速度値が低いけれどA級筋力の攻撃力の高さは侮れない。
青いシタチュフリスアの防御は間に合ったがフィーネの力に押されて後ろに軽く吹き飛ぶ。
「波瑠かフィーネならやれるかもしれないな」
波瑠のナイフ、あるいはフィーネの力なら青いシタチュフリスアに対して致命傷を与えられるかもしれないと圭は感じた。
『スキル導く者が発動しました。
闇を払い、守るべきものを守るため眠っていた力が一時的に解放されます』
みんなのためにどうにか隙を作らなきゃならない。
そう思ってたら表示が現れて体に力が湧いてくる。
イケる。
そんな感情が圭の中で大きくなった。
「波瑠とフィーネの攻撃をメインに置く! 俺とカレン、夜滝ねぇで攻撃の隙を作るんだ!」
「りょーかい!」
「ピッピピー!」
圭に任されたと波瑠もフィーネもやる気を出す。
カレンを一番前にして圭と夜滝の攻撃を増やして波瑠とフィーネはほんの少し抑え気味に戦う。
圭たちの多少負担は大きくなるけれどスキルが発動して能力値が上がった圭は青いシタチュフリスアの攻撃になんとか耐える。
青いシタチュフリスアの方も流石にB級覚醒者が数名相手では圧倒しきれず怒りのこもった目をしていた。
剣術としてみればあまり上手くはないが反射神経が高くて決め手もなく膠着した戦いが続く。
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