第十章

リーダビリティギルド再始動

「ふふーん!」


「悪魔でも一応通るんだな」


 検査の結果等級が上がっていたので新しい等級での覚醒者証が発行された。

 ついでにシャリンの等級も検査してみた。


 かなり不安であったけれど伊丹や霜坂に頼めば内密に検査できるのでやってみた。

 覚醒者として活動する時にシャリンを家に置いておくのも不安だったので、覚醒者ならば一応連れて行けるだろうという考えもあったのである。


 シャリンは未成年扱いで覚醒者としての活動に制限がかかるのだけど家で一人きりだと何をするのか分かったものではない。

 検査の結果シャリンの覚醒者等級はA級と判定された。


 いくつかの測定装置を破壊するほどのパワフルさを見せてシャリンは文句なしのA級であった。

 A級ってのは強いってことだよと教えてあげるとシャリンはドヤ顔で胸を張って自慢げにしている。


 魔界じゃないので強さはいくらか落ちるはずなのにそれでもA級の力を持っている。

 だけどそんなことよりも圭に褒めてほしいという可愛らしさがあって圭も思わず頭を撫でてしまう。


 悪魔の魅了の力というやつだろうかと考える。

 伊丹の方では新たなA級覚醒者の出現に色々と大変らしい。


 最初学校に通わせてみてはどうですかと伊丹も言っていたのだけどシャリンの学力も分からない上にシャリンの力の強さに一般の学校は危ないかもしれないと断念した。


「とりあえずこれでシャリンも活動できるな」


 改めて圭の真実の目だけでなく等級検査でも夜滝たちがB級覚醒者まで強くなったことが分かった。

 しかも装備での強化を加えればB級の中でも真ん中ぐらいにはなりそうである。


 シャリンはA級だし今回リーダビリティギルドに所属という形になり、能力自在なフィーネも秘密兵器のように仲間にいる。

 覚醒者パーティーとしてみても国内でかなり上位に入る戦力になったと断言してもよかった。


 後々にはダンテも合流するつもりらしいのでそうなればさらに戦力的に強くなる。


「シャリンのこともあるし……何回かゲートを攻略しようか」


「私たちはシャリンの強さ知らないしそれがいいかもねぇ」


 みんなで今後の方針を話し合う。

 世界が終わる前にくだらない神々のゲームを終わらせてしまいたいと考えている。


 増えていくゲートに対処するだけではいつか限界が来る。

 やはりその前に塔を登って攻略してしまいたいというのが圭たちの中での共通認識であった。


 世界各国に覚醒者はいて、覚醒者のギルドやパーティーもさまざま存在している。

 当然のことながら塔を攻略しようというパーティーも存在しているのだが、本当のトップ層のギルドで塔を攻略しようとしているところは少ない。


 なぜなら利益が少ないからである。

 塔を登っても得られるのは新たな階の情報と踏破したという名誉だけ。


 モンスターが安定的に出現するという利点はあるが、圭が持っている亜空間の収納袋でもない限り上の階からモンスターを運ぶのは大変な作業となる。

 力のあるギルドなら近くに出現したゲートを攻略する方が手っ取り早くお金を稼げるのだ。


 一部のギルドはシークレットクエストの存在を知っているけれど、シークレットクエストで得られるものを考えた時に大きなギルドでは利益が薄いと言わざるを得ない。

 結果として自分たちの名声を上げようという目的以外で本気で塔を攻略するギルドはあまりいないのである。


 現在塔は十七階を攻略中となっている。

 以前にも塔で会ったりしたヴァルキリーギルドは女性でもやれるということを世間に知らしめるために他のギルドと協力して攻略しているのであった。


 塔の攻略はかなり慎重にゆっくりと進められている。

 せめて現在攻略が進められている階まで行きたいものだと圭は考えていた。


 しかしその前に改めてB級相当になったみんなの実力確認やシャリンがどのように戦うのかのチェックも必要だ。


「じゃあとりあえずD級からC級ぐらいのゲートを探してもらって……B級のゲートにも挑戦してみようか」


 まずはシャリンの戦い方を見るためにも現在の実力より低めのところで様子見する。

 そして見つけられるようならB級ゲートにも挑んで戦えるかどうか確かめたい。


「それが良さそうだな」


「シャリンちゃん……A級なんだね」


「その前に必要なものも整えなきゃな」


「必要なものですか?」


「ああ、そうだ」


 圭はシャリンを見る。

 シャリンは今覚醒者証をフィーネに見せつけて自慢していた。


「シャリンのために用意しなきゃいけないものがあるからな」

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