憤怒の悪魔5

「あまりここも安全とは言えないけど移動するのも危険ね」


 クォカドオーンが魔法でバリアを展開する。

 もっと離れたいところであるが背中を向けて無防備に移動すればそれはそれで危険を伴う。


 シャリンとルシファー、それとサタンの戦いは激しさを増していく。

 完全に悪魔の姿になったサタンは本気で戦っているようだが魔王レベルのシャリンと魔王であるルシファー二人も相手では分が悪い。


「ほれ」


 ルシファーが手を振ると無数の赤い斬撃がサタンを襲う。

 切り裂かれようともサタンの傷はすぐに治るけれど全身の傷を治すたびに魔力を消費していく。


 うっすらと笑みを浮かべているルシファーがかんに障り、サタンの苛立ちを大きくする。

 しかしルシファーの方に向かおうとするとシャリンが攻撃を仕掛けてくる。


 散々サタンにやられたのにシャリンの破壊力の高さは健在である。

 余計なことをしないのでその分ただ力を振り回しているだけでいいからそう簡単にはへこたれないのだ。


 それに圭が喜ぶと聞いてシャリンもやる気に溢れている。


「ぐぅっ!」


 サタンの拳がシャリンの頬に当たるけれどシャリンもほんのわずかに遅れてサタンの腹を殴りつけた。

 サタンの方が上手で攻撃が当たらない。


 だが相打ちならばサタンも攻撃している最中なのでかわすことができないのだとシャリンは気がついた。

 とんでもない捨て身の作戦であるけれどルシファーとの共闘になった今はかなり余裕も生まれた。


 シャリンの攻撃を食らって隙ができるとルシファーに攻撃されるものだからサタンも下手に手を出せなくなった。

 シャリンの猛攻を防ぎルシファーの魔法をかわして隙をうかがうが、猪突猛進に攻めてくるシャリンとフォローするように攻撃してくるルシファーに隙を見出せない。


「ピピ!」


「な……」


「あら、あの子は……」


 サタンの胸から先の尖った鋭い金属が飛び出してきた。


「なんだ……貴様……いつからそこに……」


 サタンを後ろから刺したのはフィーネだった。

 メイド服姿のフィーネは手に持った大鎌でサタンの胸を突き刺したのだ。


「フィ、フィーネ!?」


「フィーネ、ツヨイ」


 いきなりぽっと出てきたシャリンに圭をとられては許せない。

 自分も使えるのだとフィーネは対抗心を燃やしていた。


 フィーネは生物でなければ無生物でもない。

 そのためなのか悪魔の感覚を持ってしてもフィーネの存在を感知するのは難しい。


 いつもの四足の小さい姿になっていたフィーネはゆっくりと戦場に近づいて隙をうかがっていた。

 最初の狙いとしてはシャリンが弱らせたところでサタンにトドメを刺すつもりだった。


 そうすればシャリンを助けてサタンを倒したことによって圭を独り占めできるだろうなんて考えていたのだ。

 結局なかなかサタンが弱らなかった。


 ただシャリンとルシファーに攻められてフィーネのことは完全に見えていないようだったのでその隙をついて後ろから攻撃したのだ。

 サタンは急に現れた新手に動揺を隠せない。


 戦いによって周りには物がなくなり見晴らしが良くなっていたのに近づく姿をが見えなかったと思ったのだ。


「ふふふっ! よくやった、フィーネ!」


 悪魔は人と違う。

 心臓を貫いたぐらいでは死なない。


 だが動揺とダメージは大きい。

 サタンが怯んだ隙にルシファーは攻撃を仕掛ける。


 赤い魔力の斬撃がサタンに飛んでいく。


「邪魔だ!」


「ピッ!」


「ぐああああっ!」


 サタンがフィーネを殴り飛ばし魔法を防御しようとする。

 けれども鋭い魔法は防御しても防ぎきれずに腕が切り飛ばされツノが折れる。


「ママ……ケイの邪魔するものは許さない」


「ぐっ! やめろ!」


 深い傷はすぐに治らない。

 大きなダメージで動けなくなっているサタンをシャリンが殴りつける。


 一撃一撃が必殺の重さを秘めていてサタンは防御すらできない。


「だああっ!」


 シャリンの拳がサタンの顔面に当たって吹き飛ぶ。


「はっはっはっ! 憤怒の魔王がいいザマだな!」


「ピピピピ……」


「大丈夫か、フィーネ」


「ダイジョウブ」


 殴り飛ばされたフィーネは首が逆を向いていた。

 しかしフィーネの体はフィーネの能力によって作り出されたものでありダメージはない。


 フィーネが自分の首を持って回して戻す。


「トドメを……むっ? この気配は……」


 ルシファーが空を見上げる。


「……圭! 今のうちに門に!」


 強い力が近付いてくることをルシファーは感じ取った。


「早く!」


「分かった!」


 圭たちには何が起きているのか分からないけれどサタンが倒れている今がチャンスなことは確かである。

 クォカドオーンがバリアを解除して圭たちは門に走る。


「ケイ、私頑張った」


「フィーネモ!」


「う、うん。二人ともありがとうね」


 シャリンとフィーネが競い合うようにして圭のところに駆け寄ってくる。

 フィーネはともかくシャリンは放置すると後が怖そうなのでその場で褒めて頭でも撫でておく。


 殴られたせいで顔をところどころ赤くしたシャリンは目を細めて撫でられている。


「圭いいから早く」


「分かったよ。えっと……これはどうしたらいいんだ?」


 圭は鍵を取り出した。

 しかし鍵の使い方など圭は知らない。


ーーー

お知らせ

ただいまカクヨムコンに出すつもりの作品の先行公開を近況ノートにて行っております。


ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした


というタイトルの作品でしてジャンルはローファンタジー、可愛いドラゴンと人生やり直して頑張る物語です。

五話までは誰でも読めて、それ以降はカクヨムコンまで一日一話公開で新規公開部分はサポーター限定の先行公開となります!


さらにカクヨムコンが始まって一般公開が始まってもサポーター限定で14話ほど限定公開し続ける予定です!

よければ読んでください。


気に入ったならサポーターになっていただいた先読みも検討してくださると嬉しいです!

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